1話「推しと異世界転移!?」
俺達は気が付くと両サイドに不穏な空気を漂わせる禍々しい森がある。一本道の真ん中に居た。
「突然、魔物とか出てきそうな所だね。」
「ほんとに!いつ魔物が出ても臨機応変に対応できるようにサイリウムを構えておかないと」
「私も、使用方法は分からないけどカメラ推具・推電撮とパソコン型推具・推波懇を構えておかないと」
森に不安と闘争心を抱く、俺とイチズ。
そんな、俺達の遥か視線の先に、大きな石垣の塀で囲まれたであろう。街のようなものが見える。
「結構遠いけど、なんかあそこに街のようなものが見えるよ」
「ほんとだ、よし!何かあの街に行けば分かることがあるかもしれない。行こう」
どんな情報が知れるのか。
好奇心を胸一杯に膨らませて、歩きだす。
街に向かう道中で、お互いの事について話すことにした。
「ねぇねぇ!イチズちゃんはさ!!この異世界に転移する直前、何をしていたの?」
疑問に思い、質問してみた。
「えっと、私はね~。まず、知っているとは思うんだけど、職業が個人で活動してる翠光イチズっていうVTuberでね」
「うんうん!それはもちろん!ファンクラブである"翠イチ"(すいいち)のメンバーの一人だし、何て言ったってファン歴五年だからね!」
ファンである事をドンと胸を張って、意気揚々と主張する俺
「やっぱり!そうだよね!嬉しい。それでね。そんな、VTuberだった私にも推しがいるわけ。その推しっていうのがね。私がVtuberになるきっかけになった人でもあるの」
「あ!そうなんだ!イチズちゃんも推しがいたんだね。配信じゃ聞いたことなかったからさ初耳だったよ。俺も知ってるVTuberかな?もし、知らなかったら知りたい!」
イチズにも推しがいる事が意外だった。
しかもVtuberになるきっかけの人物とは、ファンとして重要な情報だ。
「あ~それはね!普段配信とかだとオタクな所をあまり出さないからさ。名前はね~。多分臨くんも知ってると思う!!磨壱禅 カオル(まいぜんじ かおる)っていうの!!」
「名前だけ聞いたことあるかも!!確か、男性のVtuberだったよね!!」
配信自体は見たことないものの、名前だけは聞いたことある磨壱禅 カオルがまさかイチズちゃんのきっかけになった人物なんてと驚く俺。
「そうそう!かっこよくてさ。私よりも2年先輩なんだけど。日々、一から初心に返り己を磨くという意味から名前をつけたらしくて。その誠実さや努力を欠かさない所に惹かれて、そこからグッズを沢山集めるくらい好きになったの!」
推しへの想いを早口で、尚且つ身振り手振りをいれながら思い思いに語る彼女の姿はオタクそのものだった。
「あ…そうなんだ!!そのくらい推しへの愛があるのいいね!!俺もそのくらいイチズちゃんを推してるよ!!」
配信では見れなかった、推しの新たな一面が見れた喜びと同時にカオルに嫉妬してしまう自分がいた。
「それで、いつも通りカオルくんのタペストリーを拝んでいたのね。そしたら、いきなりそのタペストリーが光だして、気が付いたら。いつの間にかあの場所にいたの!」
「え!?イチズちゃんも!?」
驚きのあまり裏声が出てしまった。
「え!?もしかして臨くんも!?」
思いもよらなかった。なんという共通点だろうか。
「実は…。俺も学校に行く前に、日課としてのイチズちゃんのタペストリーを拝んでいたのね!そしたら、同じく光だして、気が付いたらあの場所にいたんだよ。そして、気が付いたら隣にイチズちゃんが居るじゃん?目の前にした時、めちゃくちゃ驚いたし!嬉しかったんだよ!毎回、配信を見たり、応援してる推しが目の前にいるんだもん!」
オタクであるが故に、止まらない想いを長文で尚且つ早口で話してしまった。
推しとの共通点が見つかった事。そして、直接想いを伝える事ができて、共感し合えた喜びで胸が一杯だ。
「え?ほんと!?臨くんも、私をそんなに推しててくれたんだ!臨くんの気持ち分かる気がするな~!私達、似た者同士だね!」
「だね!!ということは、お互いに推しがいる事や転移直前の状況の一致とかも転移の理由に関係してる感じかな?」
「確かに!!関係してそう。ワクワクだね!」
お互いの事を知れて、より親睦を深めれた俺とイチズ。
そんな俺達はいつの間にか、一本道を抜けて。周りに草が生い茂る、原っぱにいた。
「いつの間にか、一本道を抜けたようだね。風が気持ちいや。よし、街まであともう少しだ!頑張ろう」
涼しい風が俺達の頬を優しく撫でる。
「だね!!あと、もう少し!!えいえいお~!」
「えいえいお~~!」
拳を握り、元気で明るいイチズの掛け声と共に、2回こぶしを胸の高さまで振り上げ、3回で握った拳を空に突き上げる。
「気合いを入れ直した事だし、街まで頑張ろうか!」
気合いを入れ直し、再び歩きだす。俺達の視線の先に、街からこちらに向かってくる何かがいる。
「え?街の方からこっちに来てない?しかも、めっちゃ大量じゃないか!?」
「確かに!大量の何かがこっちに来てるね」
改めて目を凝らして見てみる。
それは、大量の魔物の群れだった。




