イリューストSide 不思議な洞窟
ラーシャって不思議にも程がある。
いきなり僕の顔をマジマジ見たり・・・・・・まあ、僕もラーシャの顔をマジマジ見るときもあるけど・・・・・・口癖は「違うの!違うのよ!」とか?
一番理解できなかった台詞が、「イリューストのせいだからねっ!」かなぁ?何がどうしてどうして僕のせいになるのかな・・・・・・。
でも、ラーシャを見てると、闇商人ではないことは確実だった。
闇商人だったら僕が言うのもあれだけどちょっと抜けてる・・・・・・気がする。
それもラーシャが闇商人だったら普通に正式な店・・・・・・というか店自体を正当なものに変えてしまいそうだ。
ふっと笑った。
不思議だな。
出会ってまだ一日もたってないのに僕は彼女を受け入れてる。
もう、仲間だと思ってる。
それに、ラーシャといると、嫌な事、思い出さなくていいんだ。
「イリュースト!次の行く場所が決まったわよ!次は風の国、タラタクフ。」
「え?そんな国、聞いたことないよ。」
「うるさいわね、とにかく長居は無用よ。あたしもあなたも追われる身なんだから。」
「ああ、うん・・・・・・。」
僕達はお世話になったお礼に牧割りや薬草つみをした。
で、いざ出る時になると、お婆さんは僕達にマントと少しの飲食類を持たせてくれた。
「ここらは魔物とか出て危ないからねぇ……旅の健闘を祈ってるからねぇ。」
そうつぶやいて手を振り、送り出してくれた。
僕達は何度か振り返って頭を下げた。
お婆さんは僕達が見えなくなるまで手を振ってくれた。
ラーシャはいつ聞いたのか、道のりをぶつぶつ呟いていた。
小屋を背にまっすぐ歩くと、川に突き当たった。
その川のほんの少しだけ歩ける部分を左に曲がり、左手に崖を伝いながら洞窟に突き当たった。
洞窟の中は暗かった。
でもしばらく歩くとかすかな光が見えはじめた。
「ひぁっ!」
ラーシャがいきなり不思議な声を出したので立ち止まった。
「どうしたの?」
「首に何かあたって・・・・・・なんか・・・・・・気持ち悪いのよ。」
そう言ってからラーシャはいきなり剣を構えた。
「へ!?」
するとグルグルと獣の鳴き声が聞こえだした。
「に、逃げよう。ラーシャ。」
「大丈夫よ。これくらいの相手なら倒せるわ。」
倒せるわって・・・・・・こんな複数いる敵相手に?
剣にぼんやりと青い炎が灯る。
「イスヒビィセム(鎌イタチ)!」
何か業名らしき何かを呟くとラーシャは風のように敵を切った。
でも敵はどんどん増える。
「キリがないわね・・・・・・!イリュースト!走って!」
言われたとおりに走りだすとラーシャも走りだした。
走りながら飛び掛かってくる獣を倒していく。
「すごい・・・・・・。」
いや、すごいにも程があるだろう?
何でこんなに強いんだよー?
ある場所までくると、獣は追い掛けてこなくなった。
「はぁ、はぁ、なんだよ・・・・・・あれ。」
「・・・・・・さぁ?・・・・・・見て、イリュースト、ここ・・・・・・綺麗。」
互いに息を切らしながら洞窟を見渡した。
水晶やらなにやらが光っている。
「すごい・・・・・・水晶の下からライトあててるみたいだ・・・・・・どんどん色が変わって・・・・・・。」
どうしてこんな場所が存在するのだろう?
前々から存在していたならもっと有名になっていたはずだし、人が通った足跡が残るはずだ。
でも、そんな跡どこにもない。
それに、さっき見えてた光の招待がこの水晶だというなら、一体どこまでいけば外に出られるんだろう・・・・・・?
「さっきの獣達はこの水晶を守っていたのね。」
歩きながらラーシャは言った。
「・・・・・・ラーシャ、強いね。」
「人型じゃなければ知恵はみんな浅いもの。倒せるわよ。次の国では言葉が通じるかしら。とりあえず次の国ではゆっくりしましょう。あなたは護身術くらい習ったほうがよさそうだし、装備も・・・・・・ね。あたしは調べたい事があるし。」
「調べたい事?」
「そ、調べたいこと。」
どうやらラーシャは計画を立てるのもうまいらしい。
僕、結構ラッキーな相手に出会ったかも?
きっとラーシャがいなきゃ僕は死んでただろうし・・・・・・。
まぁ、それも情けない話だけど・・・・・・。
「あれ?行き止まりじゃ・・・・・・。」
水晶でわかりづらいけど僕にはこの数メートル先は行き止まりに見える。
「ええ?行き止まり?でも、これまでに曲がる場所なんて・・・・・・また獣のところに引き返すの?それはごめんよ。とりあえず行ってみましょ。なにかしらあるかも。なかったら数分休憩にすれば良いわ。」
そういいながらラーシャは顔の汗を拭った。
「うん。」
チキンな僕の心をラーシャはあっさりと持っていってしまう。
なんなんだろう、この説得力は。
ラーシャは自然体なのにすごい説得力がある。
それもリュラみたいに威圧するような説得力じゃなくて、本当にすんなり説得させられてしまう。
数分後・・・・・・。
「・・・・・・本当に行き止まりね。」
水晶に手をつき、キョロキョロと辺りを見渡すラーシャの横でパズルらしきものを見つけた。
そこだけ金色に縁取られている。
「待って、何かある。」
「え?」
パズルらしき何かに触れると金色の蓋?みたいなのがスライド式に開いて、中から小さな水晶が出てきた。
どうやら動かすと隣同士だけ移動や交換ができて消えていくらしい。
昔よくやったゲームに似ている。
たまにヒントと称した文字が振ってきては消える。
僕は忘れないように文字をたたき込みながらそのパズルを説いた。
画面はクリアーと出ているのに何も起こらない。
それに、クリアー以外の下に出ている言葉が読めない。
「“出てきた文字を並びかえろ”ね。文字なんて一字一句覚えてるわけないじゃない!」
どうやらラーシャは読めたらしい。
なるほど。
これは、並びかえろ、文字を・・・・・・だ。
読み方さえ理解できたら他の所も読める。
単語は少し違うけど、発音の仕方はよく似てるし、読めないことはない。
えーっと、出てきた単語は・・・・・・。
「“風が守りし世界!”だ!」
多分これであってるはずだ。
コンプリートと表示されたと思うと、ある一部分がスライド式ドアのように開いた。
ガタガタいってまるで地震みたいだけど。
「やったわね!って、まぶしっ!」
ラーシャが手のひらを顔に当てた。
確かに眩しい。
久々に見た気がする太陽はもうオレンジ色だった。
「もう夕方ね・・・・・・綺麗。」
そう言って微笑んだラーシャの髪の毛は風になびいていた。
ラーシャって、ほんとどこにいても絵になるな・・・・・・。
「何人のことじろじろ見てるのよ?いやらしい・・・・・・相手があなたじゃなきゃ殴り飛ばしてるところよ。」
「ああ、ごめん・・・・・・。」
思わずうつむいた。
「さぁ、行きましょ?わりと頭の切れるイリューストさん。」
歌うように言って僕の手をラーシャは引っ張った。
わりと・・・・・・いや、今はいいや。
それより町に急ぐとしよう。
「待ってー!ここ、下り坂!走っちゃダメだってー!」
(作者はまだ気絶中なのでごめんなさい、きっと次回には復活してます。)