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Eyes of diamond and Escape  作者: 空と色
66/75

イリューストSide 毒蜘蛛

「・・・・・・あたしが、間違ってたの・・・・・・?」

ラーシャがそう呟いた。

もはや呪文にすら聞こえてくる。

ラーシャは間違ってない。

ラーシャが間違っていたなら、ラーシャの考えにのった僕も・・・・・・いや、僕達も間違ってるんだ。

僕はラーシャの考えを聞いて、ラーシャの考えがおかしいとは思わなかった。

今も思ってはいない。

確かに僕は魔物に何故か守られるときがあるし、ラーシャも変なものに狙われてるときもある。

変なものに狙われているのは、僕だけではない。

ラーシャもなのだ。

このことを考えるのも、もう何回目だろう。

わからない。いつから僕はラーシャのあの疑問に否定も肯定も・・・・・・反応さえもしなくなったんだろう。

動かないでただひたすらに夜空を見上げながら考えていた。

いや、動けなかった。

体は痛むし、砂は冷たい。

だから、動く気もなかった。

また明日、自分は魔物と戦えるのだろうかと不安になった。

体力の問題ではなく、行き先の見えないこの旅の、活力や、気力を僕らはすでに失いかけていた。

暗闇で一人、暗中模索を長時間続けるってこんな気分なのかな。

星を見上げながら決して眩しくないその光に手を伸ばしかけてやめた。

そうして僕は目を閉じた。

翌朝、また何日かかるかもわからない旅が始まった。

肌がミシミシと痛むのを無視して歩き続けていると、魔物が現われた。

そこまで知能レベルも高くない魔物だったので、ラーシャやルキィルを庇いながら敵を倒すのは造作もないことだった。

ラーシャは「かばってもらわなくても私は、まだ戦えるわ!だから、お願い・・・・・・二人は無茶しないで。体力は温存すべきよ。」と不満げに言っているが、僕らは知っている。

ラーシャが心身共に疲労困憊している事は。

毎日の呟きから容易に判断できることだ。

それに、僕らメンバー内の笑顔が消えた。

ルキィルが軽く瀕死状態にあることも理由の一つだが、ラーシャが笑わなくなった事が一番大きい。

ラーシャはここ最近、いきなり怒りもしなければ笑いもしない。

感情の起伏が一定になって少し落ち着いた雰囲気があるが、それは同時にラーシャの感情が負の方向へ傾いている事も意味していた。ダルキリは体に走る痛みに大きな声をあげ、僕もまた、その痛みに耐えるために歯を食い縛った。

ルキィルが今にも倒れそうな足取りでヨタヨタと歩いていると、「あと・・・・・・少し・・・・・・。」と呟いて、トンッと巨大な骨らしき何かに寄り掛かるように倒れた。

「ルキィル!」

ラーシャがルキィルを支えるように走ったが、ラーシャは体に激痛が走ったらしく顔をしかめてルキィルから少し離れた。

それから自分の腕にツメをたて、ルキィルを抱き締めるように座らせると、しかめていた眉をやっと元に戻した。

「ルキィル、もういいわ。今日はここで休みましょう。あなたはがんばってくれたわ。ありがとう。」

ラーシャは、そう言い切ったがルキィルはどことなく不満げな顔をしていた。

ルキィルが寄り掛かっているその骨は、まるで大きな牙を持った動物の頭蓋骨のようだった。

所々風化していなければまんま頭蓋骨だ。

なんかの動物が白骨化したのだろう。

よくよく見渡してみると、骨らしき物体はこれだけではなかった。

周りにもたくさんある。

しかも、大きいものから小さいものまで種類は豊富だ。

僕は寒気がして顔を背けた。

「・・・・・・イリュースト?」

「え?何?」

ラーシャに呼ばれたので僕もラーシャを見た。

「・・・・・・あなたも休みなさい。」

よく分からないが、それだけ言われ、ラーシャは顔をそらしてしまった。

「・・・・・・いてぇ・・・・・・クソッいつまで続くんだよぉ!この痛みは!」

ダルキリだけが皆より元気なように思えるが、そうでもない。

最初のうちはいつまで旅が続くのかと嘆いていたが、それさえも無意味だと気付き、あきらめ、今に至るのだ。

最近ダルキリは短期がさらに短期になり、よく不満を漏らすようになった。―――もちろん、体に走る痛みについての怒りだが。

怒るだけの体力はあるらしく、不満を口にしてはため息を吐く。

また、それぞれの不満に、最近は誰も反応さえしなくなった。

そんな毎日だ。

「ルキィルを休ませてあげなくては・・・・・・どうしたら良いのかしら・・・・・・。」

ラーシャがそうつぶやいたその瞬間、ルキィルが「キャッ!」と擦れ声をあげた。

僕が振り向いたとき、ルキィルは何かの糸に縛り付けられていた。

「な・・・・・・蜘蛛の・・・・・・巣・・・・・・?」

僕が呆気に取られていると、ラーシャが剣で糸を切り、ルキィルを助けだしていた。

だが、助けられた本人はもう動く気力すらないらしく、ぐったりとしたまま動かない。

「・・・・・・粘つきのある糸にこの形状から見て・・・・・・蜘蛛の巣に、間違いないみたいね・・・・・・。」

ルキィルの体から張りついた糸を取りながらラーシャは言った。

「でも、どこから。」

そう、そこが問題なのだ。

先ほどまで存在しなかった雲の巣が張られていた。

それはどこからあらわれ、いつ精製されたのか謎であるということが問題なのだ。

「ぬわんじゃこりゃあ!!」

ダルキリが暴れているような声がし、そちらに首だけ向けると、ダルキリにも糸らしき何かが張りついていた。

「・・・・・・変だ・・・・・・一体、どこから・・・・・・。」

僕の謎に誰も答えてはくれない。

いや、答えられないのだろう。

ラーシャも黙っている。

恐らく、その沈黙こそが答えなのだ。

ラーシャは何かを感じ取ったのか、剣を鞘から抜いたままルキィルのそばを離れようとしなかった。

僕もダルキリも剣を構え、ゆっくり近寄ると、背合わせになった。

細心の注意を払っていると、周りにどんどん蜘蛛の巣がはりめぐされていることにようやく僕は気付いた。

晴天だった空はうっすらと曇りはじめた。

こうなると、もはや嫌な予感しかしなくなるのは何故だろう?

どこからともなく蜘蛛が現われだし、うじゃうじゃと僕らによじ登ってこようとする。

「うわっ!何だこれ!?気持ちわるっ!」

僕は慌てて払い落としたが、ラーシャは、顔面蒼白になって「イヤァァアアアアアアアアアア!」とやたらめたらに攻撃しまくっていた。

「うぉっ!?あぶねーな、おい。」

ダルキリはラーシャの攻撃を交わしつつ、蜘蛛を燃やしていた。

「った!」

僕はついに一匹の蜘蛛に手の甲を噛られてしまった。

ジンジンと痛み、蜘蛛を振り落とした場所は赤く腫れてきた。

「バカッ!おま、そりゃあ毒グモだっ!神経マヒさせられるぞっ!素手じゃ無理だ!攻撃しろ!」

ダルキリはそう言って慌てて僕に近づいてこようとした次の瞬間だ。

「いやぁっ!!」

ラーシャの叫び声が聞こえたと思うと、ただの崖に囲まれた砂漠は、蜘蛛の巣に覆われた、一種のフィールドのようになってしまっていた。

そしてラーシャが捕まった蜘蛛の巣の後ろで巨大な蜘蛛が赤く目を光らせていた。

「・・・・・・おいおい・・・・・・ウソだろ・・・・・・?」

ダルキリが毒グモを焼き払いながらつぶやいた。

つまりは、毒でマヒすれば蜘蛛の餌。

蜘蛛の巣に捕まっても蜘蛛の餌。

どっちみち餌になる仕組みらしい。

しかも蜘蛛の巣は僕らを食らうべくどんどん構成され、僕らは逃げ場所を失う&どんどん逃げ場を狭まれていた。

「嫌よ・・・・・・こんな所で・・・・・・負けるわけにはいかないのっ!」

ラーシャはそう叫ぶと、動かせないはずの手をめいいっぱい動かし、剣で蜘蛛の巣を引き裂いた。

片腕が自由になると、ラーシャは剣の矛先を自分にむけ、「イスヒビィセムッ!」と叫んだ。

「ラーシャッ!」

モクモクと沸き起こった砂煙の後にボロボロになったラーシャがルキィルを支えながら立っていた。

いや、僕にはラーシャが“かろうじて”立っているように見えた。

後ろにいた蜘蛛は今の業で負傷したらしく、超音波のような甲高い音を発してジタバタと荒れ狂い、あちこちに糸を吐きだし、さらにはラーシャ達を踏み潰そうとしていた。

「・・・・・・ごめん・・・・・・ダルキリ、毒グモは頼んだっ!」

「え?あ、オイッ!」

ダルキリは僕を引き止めようとしたが、湧き出てくる毒グモに邪魔され、それはかなわなかった。

ラーシャ達は何とか蜘蛛の攻撃をかわしているものの、それこそやっとという感じでかわしていたので、今すぐにでも踏み潰されてしまいそうだった。

その時だった。

ラーシャがほとんど動けないルキィルを支えて歩きだそうとしたとき、何かにつまずいて倒れこんだのだ。

「・・・・・・あっ!」

僕は走って何とかラーシャ達と蜘蛛の間に入り込むと「零空閃!方奥雷玩!」と、唱えた。

「ピギャァァァアアア!」

蜘蛛は零空閃に足をとられ超音波を発して、方奥雷玩の雷で焼け焦げになり、引っ繰り返った。

地面いっぱいにズッドォンッ!と蜘蛛がひっくり返った音と振動が響き渡ったが、蜘蛛の目には光は灯っていなかった。

「間に・・・・・・合ったっ!」

僕は息を切らしながらそれだけ言うと、ラーシャを見た。

「何やってるんだよっ!自分ごと攻撃するなんて!ボロボロじゃないかっ!」

するとラーシャは、浅い呼吸のまま「ちょっと無理しちゃったわ・・・・・・。」と微笑した。

「ちょっとじゃないよ!」

僕が怒っていると、ラーシャが少し困ったように笑って、「自分一人を救出するのに時間がかかりそうだったし・・・・・・今にもあたしたち食べられてしまいそうだったから、自分もルキィルも両方同時に救出したかったの・・・・・・でも、救出するだけではまた捕まってしまう・・・・・・だから、自分ごしに・・・・・・救出と共に相手を殺せたら・・・・・・って思ったんだけど、やっぱり失敗しちゃったわね・・・・・・。」と言った。

「無茶しないでくれよ・・・・・・。」

僕が頼み込むように言うと、ラーシャが「あら、あなたたちだって普段から無茶してるくせに、あたしには無茶するな、なんて不平等じゃないの?」と歯を見せて笑った。

「それはっ・・・・・・」そうかもしれないけど・・・・・・と続けようとしたとき、ダルキリの声に阻まれた。

「おいおいおいおい・・・・・・毒グモが引いてくぞ・・・・・・嫌な感じしかしねぇんだが・・・・・・。」

辺りを見渡すと、確かにあれほど沢山いた毒グモがどこにもいない。

「何で・・・・・・」いなくなったんだろう?そう言おうとした瞬間、ズドンッ!と底が抜けるような音がして真ん中にくぼみができたかと思うと、それはだんだん坂のように変わっていく。

「おいおいおいおい!ウソだろ!?お次はアリ地獄かよっ!?」

「う、ウソだろっ!?」

僕は慌てた。

慌てて坂を上っても逆効果、何もしなければ確実に食われる。

そうでなくとも、周りに張り巡らされた糸のせいで逃げ場はない。

糸は切りづらいだけでなく、糸に捕まれば次の蜘蛛の餌だ。

逃げ場が、ない。

「・・・・・・ここで・・・・・・終わりなの・・・・・・?」

弱々しくラーシャが呟いた言葉だけがむなしく僕に響いた。

ズルズルと引きずり込まれていく足元に気をとられながら「まだだ!まだあきらめるわけにはいかない!」と叫んだ。

砂嵐に巻き込まれぬように蜘蛛たちは外に非難したが、蜘蛛の巣の外にはでっかい蜘蛛が待機していた。

蜘蛛の巣に捕まっても、アリ地獄に捕まっても餌。

結界、僕がやったことは、蜘蛛の巣に捕まった。

「な、イリュースト!?何してるの!?」

ラーシャは驚いた表情を見せたが、僕が「蜘蛛の巣は確か、横の糸は粘つくけど縦の糸はなんともなかったはずだ!」と説明すると、うなずいて糸を握ってくれた。

ダルキリも糸を握って巻き込まれる足を腕だけで支えていた。

何も支えがない蜘蛛の死骸だけが砂嵐に巻き込まれて沈んでいく。

中心部にたどり着いた瞬間、ガブリッ!ガリ、ゴリゴリ!と妙な音がして真ん中からペッと食べられなかったらしい部分だけが吐き出された。

周りにあった白骨化していた骨は・・・・・・コレのせいだったのかっ!

なんてのんびり考えているうちにルキィルと自分の体重を支え切れなくなったらしいラーシャが「も・・・・・・む・・・・・・りっ!」と声をあげた。

僕は慌てて何とか挟み込むような形でルキィルを支え、ラーシャを抱き締めるような形で支えると、ルキィルが本当に今にも流れていってしまいそうで驚いた。

それに、人一人をたった一人で支え続けるのは難しい。

よくずっと支えてたなぁ、ラーシャ・・・・・・。

「あ・・・・・・えっと・・・・・・ありがとう・・・・・・イリュースト・・・・・・。」

ラーシャがほんの少し僕から顔をそらしながらお礼の言葉を言ったのを聞いた。

「仲間は見捨てられないしね。」

僕はそれだけ言うと、力一杯蜘蛛の巣を掴んだ。

ラーシャはぐったりとしたルキィルを抱き寄せて流されないように捕まっていたけど、巣自体に限界がきていたらしい。

「巣が・・・・・・千切れてきたわ!」

ラーシャの言う通り、僕ら三人分+アリ地獄の渦巻きの力に巣の一部分は耐えられなかったらしい。

もうダメか・・・・・・。

そう思ったとき、ふと足元が確かになった。

「え・・・・・・?」

僕が訳が分からずにいると、今まで人形のようだったルキィルが虫のような息をしながら氷を張っていることに気付いた。

「・・・・・・ふっ・・・・・・う・・・・・・くっ!」

ルキィルは熱で溶けて蒸発していく氷を強化すべく、体力の限界と戦っていた。

いや、すでに体力なら、限界を越えていた。

「ルキィルッ!」

ラーシャが心配そうにルキィルの肩を掴んだが、ルキィルは何にも反応せずにただ氷を張っていた。

「・・・・・・おまえはよくやったよ、ルキィル。あとは任された!ちょっと熱いかもしれねぇから、気を付けとけよ!」

ダルキリはそう言うと、蜘蛛の巣から手を離し、下へ落下した。

『ダルキリッ!』

僕とラーシャの声はほぼ同時だった。

それから、ダルキリは剣を一振りして「龍仟・河流撃打(りゅうせん・がるうだ)!」と叫んだ。

ダルキリの剣から出た炎は龍のように姿をかえ、真ん中へ真っ直ぐに攻撃していく。

この業はダルキリが僕に対してあまり使わなくなった業の一つだった。

何故なら、この攻撃は直撃すればかなりの威力があるものの、直線しか進めないという欠点があって、かわしてしまえば相手に傷さえ負わせることができないといったものだったからだ。


灼熱の太陽に、ダルキリの炎の熱で氷はほとんど溶けていた。

それでも僕らが乗っていられるのが不思議なほどに、だ。

ダルキリは攻撃で少し浮き上がった後、そのまま中心部の方に流れ、砂に体を飲まれていっていた。

「ダルキリ!」

僕が叫ぶと、ダルキリは歯を見せてニカッと笑うと、「わりぃな。先下行ってるわ!下は何か空間あるっぽいし。先に敵倒しておいてやるからよ、後で来いよ!」

そう言い残して砂に巻き込まれていった。

「下に・・・・・・空間?」

ラーシャがそう呟いて飛び降りようとした。

僕はそれを止めて今にも「何よ!?」と噛み付いてきそうなラーシャに言った。

「ラーシャは衰弱してるし、後から来たほうがいい。僕が先に行ってダルキリと魔物を倒してくるから、ラーシャは衰弱しきってるルキィルをつれてきてほしい。」

「・・・・・・わかったわ・・・・・・でも、あたし達は衰弱してるかもしれないけど、使い物にならなくなったわけじゃないわよ。お荷物扱いはごめん。」

ラーシャは険しい顔つきでそう言った。

「お荷物扱いしてるつもりは・・・・・・。」

「さぁ、ほら行って!リーダー!任せたわよ!」

ラーシャにトンッと背中を押され、僕は地面のくぼみに向かって飛び込んだ。

砂に体を飲まれていく感覚は今までに味わったことがなく、とても不気味で恐かった。

僕が確かな地面に足をつけたとき、苦戦しているダルキリが見えた。

「ダルキリ!・・・・・・うっ!?」

僕は走りだそうとしてよろけた。

変な音が散乱していて気持ち悪くなり、頭が割れそうになった。

「気ぃつけ・・・・・・ろ・・・・・・奴ら・・・・・・変な音出してきやがる・・・・・・ぞ・・・・・・。」

ダルキリが大粒の汗を流しながら、やっとというように立っていた。

「う・・・・・・ん。」

僕が頷くと、ルキィルとラーシャが落ちてきた。

「いたぁ・・・・・・。」

ラーシャはルキィルの下敷きになったらしく、そう呟いて起き上がった。

ルキィルはぐったりとしていてまるで死んでいるかのようだった。

「う、んっ!?」

ラーシャは頭を押さえてぐらりと姿勢を崩した。

「・・・・・・爆・弾鋼車!」

ダルキリは当てずっぽうに飛び込み、僕はそれに加わるべく走ろうとしたその時だった。

目の前によく分からない蜘蛛のような大きな何かが前に立ちはだかった。

僕は慌てて剣を構えたが、向こうが攻撃してくる様子は一切見せずに僕に背を向けた。

「な・・・・・・んで・・・・・・。」

僕は“また”魔物に守られた。

人間型の上半身に、髪の毛がヘビ、耳は鋭く尖っていて両目は赤く、肌は緑色だった。

たしか、前守られたときもこんな感じの上半身だけ人間っぽいやつだった。

ラーシャとダルキリは大粒の汗をかきながら必死に戦い、音に苦戦してフラフラしていた。

「・・・・・・それでは無能玉だとわかっていて何故攻撃するかねぇ・・・・・・。」

魔物がそうしゃべると、ダルキリはやたらめたらに剣を振り回しはじめた。

僕は、僕だけ守られているこの現実に激しく絶望し、同時に悔しく思った。

「どうして・・・・・・どうして僕だけ守られてるんだよっ!どうして仲間が戦ってるのを見てるだけなんだよ!僕とも戦えよ!」

僕はそう叫び、剣を振り下ろすと、僕に背を向けていた魔物を切った。

その魔物は抵抗するでもなく〔あなたが・・・・・・特別な存在だからですよ。〕とそれだけ言うと、倒れて消えた。

「何なんだよ・・・・・・僕が特別な存在とか、何なんだよっ!」

すると、ルキィルが魔物に捕われそうになったので走りだした時、〔動かないでください。攻撃する気はありません。ただ、あなたが攻撃する、あるいは彼女が攻撃してくるようでしたら、彼女を殺します。〕と頭の中に声が入り、僕は動けなくなった。

こちらが動かなければ攻撃されないどころか守られている僕と、動かなくても攻撃される・・・・・・いや、殺されそうになっているラーシャやダルキリ。

この差は何なんだ?

何なんだよ!

僕は愕然としながらも悔しさに顔を歪ませていた。

恨む対象(あいて)がない。

僕が無力っていう事実しかここにはない。

切り掛かっても僕を殺そうとしない魔物に怒りを感じつつ、それでも守られている自分が惨めに思えて、複雑な心境になった。


作「うん、音は唯一4人が絶対に防ぎようのない攻撃なんだ。ダルキリは攻撃の炎。たまに防御もするけど、それは鉄とか温度で液体化させたり木を焼き払ったりしてるだけだからね。ルキィルは氷や水で攻撃や防御をするけど、それじゃ音は防げない。ラーシャとイリュは……。」

イ「なんだよ……その目は……。」

ラ「あたしまでそんな目で見ないでくれない?確かに何もできないかもしれないけど。」

作「何もできないとは言ってないよ。魔法がないねってただそれだけじゃないか。何勝手に悪化させてんだよ。」

イ「だってさっきの目、とてもじゃないけどいいものを見るような目つきじゃ……。」

作「え?いや、作者は普通に見ただけだぞ?」

ラ「ええ……?」

作「ラーシャまでそんな目で見るなよ……作者の目がちょっと細めだからそんな風に見えただけだろ!?作者いじめんなよ。」

ラ「いじめるだなんて人聞きの悪い……それこそあなたの勝手な思い込みよ。」

作「うわ~ん。ラーシャとイリューストがいじめる~。」

ラ「ちょっと!なんてこと言い出すのよ!!だからあなたの思い込みじゃない!!」

イ「何で僕まで!?僕なんか言ったっけ!?」

ラ「……あら、イリューストはあたしが悪いって言うの?(イリューストを睨む)」

イ「え!?そんなことも言ってないじゃないか!!」

ラ「だって、今の言い方、まるであたしが悪くてあなたが一方的に言いがかりをつけられたみたいな言い方だったじゃない。」

イ「そんなことは思ってないよ!!」

ラ「本当に?」

イ「(必死で頷く。)」

作「さあ今のうちに今回はココまでです!ありがとうございました!!次回もよろしくお願いします!!」

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