イリューストSide セイキ
「あら、イリュースト、起きたの?」
ラーシャが肩から血を流しているのを見てからその先の記憶がない。
だけど、戦ったらしい。
だから、みんな無事で、ラーシャもいるんだよな・・・・・・?
「え、ああ・・・・・・うん。」
「イリュースト、ごめんなさいね・・・・・・大丈夫だった?」
「・・・・・・大丈夫って・・・・・・僕は別に・・・・・・。」
「それと、ありがとう・・・・・・。」
「え?僕は何も・・・・・・。」
良くわからないなぁと首を捻ると、ラーシャは立ち上がり、「じゃあ次の世界に行きましょうか・・・・・・。」と言った。
またわけのわからない洞窟を突き進み、ラーシャの片腕が丸々使えなくなってしまっていたので、魔物とは戦うよりも逃げることを中心にして突き進んだ。
次の世界は着くなり変な所だった。
「きゃぁぁぁぁあ!男の子よ!」
「やーん、かわいいー!」
「ねぇ僕ぅ?どこから来たの?」
「まだまだ元気よねー?」
「おねぇさんたちと遊ばない?」
「だめぇ!おにーさんはあたしとー!ね?若いほうがいいよね?」
「おにーた、おにーた。」
いきなり大量の女性に囲まれ、僕は錯乱し、理解に苦しんだ。
周りはお婆さんから幼女まで年代は様々だがとにかく女性しかいないし、このままだと押し倒されて服を剥がれそうな雰囲気で、何かと恐かった。
「やーらしい。鼻の下デレデレと延ばしちゃって。イリューストってそーゆー人だったのね!」
「え!?」
この状態で何を言うかと声のする方向を見たら、何故か取り残されたラーシャやルキィル、ダルキリが三人ポツンと僕から離れて立っていた。
「ちょ、ダルキリ!ダルキリも男だろ!?助けてよ!ラーシャ!僕、今にも押し倒されそうなんだ!」
「・・・・・・ハーレムじゃない!よかったわね!そのまま皆頂いちゃえば!?あたしはあなたを軽蔑するけど!」
「僕が頂かれるんだよ!怖すぎるっ!大体、何をそんなに怒ってるの!?」
「怒ってないわよ!別に!」
「あからさまに起こってるじゃないか!」
「怒ってないわ!しつこいわね!」
「それのどこが怒ってないんだよ!?」と言い返そうとしたとき、僕は誰かにキスをされ、口を塞がれてしまった。
ちょ、ちょ!?待ってー!
この状況は怖い!いや、嬉しいけど、怖すぎる!
大体何で僕だけなんだよ!?
ダルキリだっているじゃないかっ!
僕は服を剥がれそうになりながら必死で逃げた。
一人や二人ならまだしも、こんな大量に来られたら、怖いだろ!?だれだって!100や1000なんて目じゃないような数だぞ!?
「ラーシャァァア!助けてくれー!」
「知らないわっ!」
ラーシャは何を怒ってるのか知らないけど、僕を見殺しにする気だ!
「本当に誰か助けてくれよー!?」
「おう、お前モテモテだったんだな。」
いつの間にか僕が走ってる横でダルキリが走っていた。
「ん!男が二人!?」
「やーん、あっちもかわいいじゃない?」
「若いのが二人も・・・・・・フフフフ!」
後ろの女性たちは口々に言い出し、僕らを追い回してくる。
これ、追われたら逃げたくなるし、逃げられると追いたくなる無限ループの心理じゃないの!?
大体、後ろの人たちのセリフは一言一言怖い!
まるで若い奴の肉を引き裂いて調理するみたいだ!
「か、かわいいって・・・・・・俺ら男だぜ?」
ダルキリが走りながら呟くと後ろから反応が帰ってきた。
「どうでも良いわよ!そんなの!」
「二人とも中々レベル高いじゃない?」
「あたしはオレンジの髪のほうかなー。」
「えー!うちは断然青いほうー!」
あ、青いほうってまるで全身青色みたいじゃないか!
僕がチラリと後ろを振り替えると、様々な気色を発してまだまだ追い掛けてくる。
「こ、怖いぃい!」
「・・・・・・そうだなぁ、相手してやらないこともないんだろうけど、この人数じゃちょっときついよなぁ。」
ダルキリはそんなことをのんびりと言っていた。
「キツいどころの話じゃないよ!まるで僕らが調理されるみたいだ!早く別の場所に移動したいよ!」
「まぁ、こんな美味しい話はなかなか無いけどな、逃げ回るのもちとキツい。二手に分かれて隠れたら合流するか?」
「だから、美味しい話じゃないよ!僕らが頂かれるんだ!え!?ああ、それはいいアイディアだけど、これだけ追われてて逃げ切って巻くことができるかな?」
「やってみなきゃわかんねえ!じゃ、後でな!イリュースト!お互いに元気な姿で会おうぜ!すっかり“セイキ”吸われてんなよ!?」
「セイキってどのセイキだよ!?」
「どれも吸われてるな!」
僕らは二手に分かれて走りだした。
セイキって、妙なこと言うなよ。
この状態だったら生気もあるし、性器もある。
それだけじゃない精気もだ。
もしこの思考がラーシャにばれてたら、きっと凄く嫌な顔されただろうけど、僕だって考えたくて考えてるわけじゃない!
本当だよ!
ここからすぐにでも逃げ出したいんだ!
そりゃ、そーゆー事に興味がないわけじゃないけど、後ろの人たちは・・・・・・イノシシみたいにしか見えないよっ!
僕は慌てて建物に滑り込み、何とか部屋に閉じこもって扉を開けないように物で押さえ付けることができた。
それでもドアや壁が叩かれるので、部屋自体がバンバン鳴っているようでまるでホラーだ!
こんな体験身を持って知ることになるなんて!
僕は逃げ道を探した。
あるのは・・・・・・窓。
でも、ココは二階だ・・・・・・僕にはラーシャみたいに格好よく飛び降りる自身なんてない!
そう思ったときに窓際の木が目に入った。
木なら・・・・・・飛び移れるかもしれない!
僕は何とか木に移ると、静かに木を降り、走って物陰に隠れた。
ココは三面隠れているが、真っ正面から誰か来たら終わりだ・・・・・・そう考えながらキョロキョロと辺りを見渡していたとき、「みーつけた。」という声と共に僕の肩に手を置かれた。
僕は振り向きたくなかったが、重い首を何とか動かして正面を見ると、そこにはラーシャがいた。
「・・・・・・ラーシャァァアアア!」
僕にはその助け船がまるで女神降臨のように見えた。
「シッ!ココならあたしがここに立っていれば、ばれる事は無いわね。」
「・・・・・・ラーシャが女神に見えるー・・・・・・!」
すると、ラーシャは苦笑した。
「現金なんだから。」
現金じゃないよ、僕は本当に困ってたんだ。
そう思ったが言わなかった。
「・・・・・・ラーシャ、何でさっきは怒ってたの?」
「・・・・・・怒ってないわ・・・・・・少しモヤモヤしただけよ。」
「何が?」
「・・・・・・わからないわ。何でだか・・・・・・凄く・・・・・・モヤモヤして・・・・・・あたし、嫌な子にでもなったのかしら・・・・・・。」
ラーシャはそう言いながら首を傾げた。
「嫌な子?」
「ほら、いるじゃない。えーっと、自分勝手で我儘な子・・・・・・かしら?」
いや、僕に聞かれても・・・・・・と思ったが相づちをうっておいた。
「そうよ!自分の思い通りにならないとイライラする子!そんな感じかしらね・・・・・・。」
「へ、へぇ・・・・・・ラーシャはそういう人だったの?」
「違うわ!違うわよ!・・・・・・違う・・・・・・はずなんだけど・・・・・・どうしたのかしら、あたし・・・・・・自分で自分がわからなくなるなんて、困ったものね。」
ラーシャはそう言って僕に背中を向けた。
「・・・・・・あら、あなたの取り巻きがいなくなったわよ。残念ね。」
「残念じゃないよ!」
僕が声を荒げると、ラーシャが僕の口に手を当てた。
「あなたは、性的な意味でも追われる身なのよ?大声出さないの。」
「・・・・・・ごめん。」
ラーシャは、キョロキョロとあたりを見渡してから話を変えてきた。
「質問したいのはあなただけじゃないわ・・・・・・ねぇイリュースト・・・・・・あたしが戦っていた時だけど、あなたは倒れこんだあたしを抱えて、ふざけるなって言ったわよね?あれは・・・・・・誰に対する怒り?」
「え?言ったっけ?」
「言ったわよ。」
「・・・・・・僕、記憶があんまりなくてさ・・・・・・覚えてないんだ。結構、敵はどうなったのかな?」
「・・・・・・本当に・・・・・・覚えてないの?」
ラーシャが不思議そうな顔をした。
「ああ、うん・・・・・・僕、変なことでもした?」
「いいえ、してないわ・・・・・・むしろ凄かったのよ。」
「へ、へぇ・・・・・・。」
「長話は無用ね、早くダルキリを見つけましょう。ルキィルも。」
僕らがこっそり抜け出した先に険悪ムードのダルキリとルキィルがいた。
とにかく次の国へ向かうべく、僕らは山道を上り始めた。
しかし、変なことも起こるものだ・・・・・・男に飢えた女しかいない国なんて、聞いたこと無いけど?
何であんなに女だらけだったんだろ。
「よ、イリュースト!セイキは吸われ無かったらしいな。」
「一応逃げ切れたし、何より途中でラーシャに会えたしね、何とか生きてるよ。」
僕が苦笑するとダルキリはチラリとルキィルを見た。
「俺はあいつだった・・・・・・嫌いなら探しに来なきゃいいのに・・・・・・今だに口を開こうともしねぇよ。」
「ダルキリ!ルキィルの前でルキィルの悪口言うのは止めてくれないかしら!それに、何度も言ってるじゃない。ルキィルはあなたを嫌いなんじゃないわ。」
ラーシャのセリフに小さくルキィルが頷いた。
「・・・・・・眩しすぎる人・・・・・・私・・・・・・わからない・・・・・・言葉も・・・・・・よく、足りないって言われるし・・・・・・闇側にいた人間には・・・・・・眩しすぎる・・・・・・の・・・・・・。」
「闇側ぁ?眩しすぎる?なんの話だよ?もっと簡単に言えよ。」
ダルキリがルキィルを見て、ルキィルは黙りこんでしまった。
「簡単な事よ。ダルキリ、あなたには悩みがないでしょ?」
「失礼な!俺にだって悩みの一つや二つくらいあるぜ!?」
「例えば?」
「・・・・・・えーっと、ラーシャがなかなか振り向かないこと?」
僕は思わず吹き出してしまったが、ラーシャは呆れた顔をしていた。
「茶化さないで。もっとまともな悩みはないの?」
「俺には重大な悩みだ!えーっと、そうだな、あとは・・・・・・肉が食いたい・・・・・・。」
「ようは、悩みが出てこないのよね?だからこそ本能ありのままのようにダルキリは動ける。だけど、世の中・・・・・・当然だけど、ダルキリのような人ばかりじゃないのよ。慎重に物事を選んで、悩んで、些細なことでもどうしたらいいのかわからなくなる人だっている。多分ルキィルはあなたのようなタイプの、自分とは全く異なる存在にどうしたらいいのかわからなくなっているのよ。・・・・・・とりあえずあたしは、イリューストと少し話があるから席を外すわね。」
「え?」
いきなり僕はラーシャに手を取られ、驚いた。
「あ、おい!」
ダルキリも呆気にとられている。
僕らは木陰に隠れると、少しだけラーシャのマントが翻り、痛々しく赤い包帯がチラリと除いた。
作「うん、今回はギャグ系ですな。」
イ「題名!題名やめてよ!大体どうしてカタカナなんだっ!!」
作「セイキ?別にいいじゃないか。下手したら性器にけるけど、精気も生気もあるじゃないか。」
イ「下手したら、じゃなくて下手したほうを狙ってるんだろ!?」
作「よくわかってるじゃないか。」
イ「よくわかってる、じゃないよ!!こんな題名イヤだ!」
作「題名ごときでぶつぶつ言うなんて器がちぃせえなぁ。」
イ「ど、どうせ小さい男だよ!あ、でも……ラーシャには器が大きいって言ってもらったよ。」
作「それ、“ラーシャの前では”の間違いじゃないか?」
イ「え?どーゆーこと?」
作「おまえはさ、普段仲間に優しい。だけど、ラーシャの前だとまた器がでっかくなるんじゃねーの?」
イ「普通だよ!!」
作「さぁ、どうかね。じゃ、今回はここまでです。次回もよろしくお願いします!」