イリューストSide 温もり
ラーシャがこの部屋を出てから早数時間。
お婆さんは暖房を前にうたた寝していた。
カクンと頭が落ちるたびにどこかに頭をぶつけるのでは、とヒヤヒヤする。
でも、気になることはそれだけじゃない。
あの時お婆さんが言ってた緑の髪の毛に緑の瞳の話、お婆さんはすっかり忘れてるみたいだけど、僕は見た。
ラーシャがあからかまに固まるのを。
そして、その会話を避けるように寝ると言いだしたこと。
有名なところの出なのはわかった。
強いし、才色兼備・・・・・・ってこういう使い方であってたよね?
旅に出るくらい、両親が許してくれないのか?
腕が良ければ旅をしたいと思うのも無理ないんじゃ・・・・・・。
あるいは今まで悪人に捕まってたか、ラーシャ自身が闇商人か。
闇商人ではないと信じたいけど、わからない。
脱走犯とかじゃないよなぁ?
最近は顔だけじゃ判断できなくなってる。
ラーシャも顔に似合わずすごく強いし・・・・・・。
はぁ、助けたのが僕で、助けられたのがラーシャなら格好よかったのに・・・・・・僕は武器類が一切使えないんだよな。
ブーメランも、剣も、弓矢も。
僕が装備できるとしたらきっと・・・・・・果物ナイフだ。
・・・・・・ハハ・・・・・・それってもはや装備でもないよな。
一人で寂しく苦笑している僕の首筋に冷たい風があたった。
「つめたっ!」
見れば暖房の火もずいぶん弱くなっている。
「リベアさん!リベアさん!ここで寝ちゃダメですよ。風邪引いちゃいますよ?リベアさん!」
お婆さんをゆすってみてもむにゃむにゃ言うだけで起きようとしない。
仕方がないからお婆さんをソファーの上に横にして自分の貸してもらった毛布をかけて僕はタオルケット一枚になったベッドに横たわった・・・・・・が、寝れるはずもなく「くぁぁああっ・・・・・・さむぃぃいい!」と奇声を発しながら震えていた。
翌朝・・・・・・「ブェックシッ!」と、とても汚らしいくしゃみと寒さで赤くなった鼻から鼻水を垂らし、グシャグシャになった顔で僕は相変わらず震えていた。
「おはよー・・・・・・ってうわっ!?」
ラーシャが起きてきて僕をまじまじと見た。
僕も何となく髪の毛をおろしているラーシャを見た。
日差しが髪の毛から透けて、ラーシャが光ってるみたいだった。
「巨大なてるてる坊主!?じゃなくて・・・・・・どうしたのよ!?」
最初の言葉にガックリする。
うん、ラーシャは期待を裏切らないよね。
そーですよ、どーせ僕は巨大なてるてる坊主になって震えてますよ。
「リベア・・・・・・さんに貸した・・・・・・。」
「え?」
ラーシャがリベアさんの様子を見に行って納得したようだ。
「貸したの?やぁさしぃ・・・・・・でもそのせいで自分が風邪引いてるなんてバカよね。」
どーせバカですよー!
むくれながら震えていたら顔に何かがかぶった。
暗いし、でかいし、何だかよくわからないけど、布だって事はわかった。
「プハッ!何するんだよ!」
するとラーシャは髪の毛を束ねていて、束ねおわると僕に近づいてきた。
「それじゃ意味ないでしょ?こうするのよ。」
体に巻かれた布は毛布だった。
軽くて柔らかい。
何よりタオルケットより確実にあったかい。
「あ・・・・・・ありがとう・・・・・・。」
ラーシャってまつ毛まで緑がかってるんだなぁ・・・・・・と思って見ていたら、ふいに目が合ってびっくりした。
「どういたしまして。」
ラーシャは微笑んでいた。
ああ、なんだ、お礼か・・・・・・僕のバカ。
今、何を思ったんだろう。
「ほら、手、貸しなさいよ。」
「へ?」
差し伸べられた手におずおずと自分の手を差し出した。
するとラーシャは僕の冷たくなった手をつかんで自分の手で挟み込んだ。
「なっ!ラーシャまで冷たくなっちゃうよ!」
「うるさいわね、少し黙れないの?」
ひ、酷い・・・・・・。
僕は黙り込むと、ラーシャは自分の息を吹き掛け始めた。
「・・・・・・知ってる?手先が冷えちゃうと体温ってどんどん冷えちゃうんだって。だから手足は冷やしちゃダメだってよく言われたわ・・・・・・昔、あたしも母に同じ事をしてもらった。」
すごく懐かしそうに言うのでもしかしたら彼女のお母さんも・・・・・・いないのかもしれない。
「そぅ・・・・・・なんだ。」
するとラーシャがハッとしたように言った。
「ごめんなさい、いやな記憶思い出させちゃったわよね?」
「い、いや、僕よりラーシャの方が・・・・・・。」
するとラーシャは笑った。
「アハハ!母が亡くなったのはずっと昔よ。そうね、もう思い出せないくらい昔。だからイリューストが気にすることじゃないわ。」
ああ、ラーシャは強い。
そう思った。
最初は自由を求めた孤独な猫かと思ったけど、どうやら少し違うみたいだ。
「強いね。」
「あまりうれしくないわ。可愛げないって言われた事あるもの。」
そういってラーシャはまた笑った。
「ああ、ごめん。」
思わずうつむいた。
作「あ、イリュ、ラーシャがイリュのことすきだってさ。」
イ「え!?」
ラ「ちょっと!何勝手なこと言ってるのよ!?」
作「うわ!乱入してくるなぁ~!!」
ラ「勝手なこと言わなきゃいいのよ!」
作「だって更新日がエイプリルフールなんだもん。」
ラ「そういうのは他人を巻き込まないで自分でやることよ!」
作「ええ~!!大体作者は小説(本文)の中にでてきませーん!」
ラ「出せばいいじゃない。」
作「やだよ~世界観変わっちゃうじゃん。大体何の特徴もないのにどうやって町の人とかに出すわけ?漫画ならまだしも!」
ラ「宿屋の人で十分じゃない。」
作「ぬぬ?でてきたら相当いじるぞ?大体今の嘘をつくんだったら作者が女として出て行かなくちゃいけなくなるじゃないか!(私、あなたに一目ぼれしちゃったの!見たいな感じか……?)」
ラ「知らないわよそんなこと。」
イ「あの~。」
作&ラ『何!?』
イ「う……あの、帰っていい?(怖い……。)」
作「ダメに決まってるでしょ。」
ラ「ダメなの?」
作「ラーシャも帰りたいの?」
ラ「別にそんなんじゃないけど……でもそろそろ終わりでいいんじゃないかと思うわよ。あたし個人としては。」
作「うむ……ならいいか。じゃ、とりあえずお二人ともお幸せに!」
ラ「だから余計なこと言わないの!」
とりあえず作者の脳内では最終的に二人は結婚しますので。
では!