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Eyes of diamond and Escape  作者: 空と色
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ラーシャSide わからないからこそ…

ルキィルと仲良くなってから、ルキィルは、ずいぶんと喋るようになっていた。

「・・・・・・それでね、お母様が言ったの。“私もあなたのように待っているだけではなく、行動を起こすべきでした。でもきっかけもなかったし、怖かったのです。あなたを変えたのはあの旅人の女の子なのかしら?”って・・・・・・だから、国が・・・・・・姫巫女制度が・・・・・・見直されるかもしれない・・・・・・あなたのおかげ・・・・・・ありがとう。」

ルキィルがそう言ってちょっと笑った。

「・・・・・・・あたしは何もしてないわよ。でも、そうね。国が変わって姫巫女制度がなくなったら、あなたはどうするの?もう嫌なことはないわ。この国に残るの?」

「・・・・・・この国が好きだから・・・・・・。」

そう言ってルキィルは黙ってうつむいてしまった。

「・・・・・・だから?」

「・・・・・・ラーシャは、行っちゃうの・・・・・・?」

ルキィルは、あたしの質問に答えずに、逆に質問を返してきた。

「そうね。あたしは、旅人だもの。ずっとここにはいられないでしょうね。何より、あたしもイリューストも追われる身なの。」

「・・・・・・でもっ、ここに外部からの訪問者は・・・・・・。」

ルキィルが焦ったように言った。

「来ないわね。でもね、あたし、まだまだ知りたいことが沢山あるのよ。一つの居場所に留まってたらわからないことが沢山あるわ!最初の頃に聞いた質問と同じ質問をするわよ?あなたは、あたし達と共に旅をするの?しないの?」

「・・・・・・考えさせて・・・・・・。」

「あたし達もいつまでいるかわからないわ。決めるなら早めにね。」

そう言ってあたしはニコリと笑った。

ルキィルは黙って俯いているだけだった。

もう、ルキィルに“あなたは意地悪だね”と言われることはなかったが、きっとあの時と同じ心境なのだろう。

今のルキィルは。

窓の外はキラキラと星が瞬いていた。

―――いつまでこんな平和な日々が送れるのか謎だけれど・・・・・・。

翌朝、やはりあたしは“ユアル”と呼ばれるモノをパスして朝食や朝の一連の動作を終えるとフラフラと散歩をしていた。

どこに行くわけでもなく歩いていても、見張り役の人が必ず一人、どこに行ってもいて、散歩をゆっくり・・・・・・なんてしていられなかった。

「え?あれ?なんでだろう?」

いきなりどこからともなくイリューストの声がしたので声の方向へとあたしの足は向かっていた。

茂みから見えたイリューストは、石をひょいひょいと避けていた。

その先にはかなり驚いた顔のダルキリがいた。

完璧にダルキリの石を見切っている・・・・・・イリュースト、三日でマスターするなんて恐ろしい人ね。

でも、剣・・・・・・刀って言うんだったかしら?

刀片手に攻撃を避けてるだけじゃ相手にダメージ与えられないわよ?

だいたい、武器を手に取っている意味が無いじゃない?

それじゃあ・・・・・・。

「反撃するのよ。見切ってるだけじゃダメ。」

「ラーシャッ!?」

ダルキリとイリューストの声が重なった。

「イリュースト!いきなり違う方向なんか見たらっ・・・・・・!」

言い掛けたが、時すでに遅し。

ダルキリが少し前に投げていた石がイリューストのこめかみ辺りにおもいっきり当たった。

「っ~~…‥!!」

「だ、大丈夫!?イリュースト!?」

「ちゃんと避けろよ・・・・・・。」

ダルキリの呆れた声とあたしの焦った声はほぼ同時に発せられて、あたしはダルキリを見ると怒った。

「ダルキリ、そんな言い方ってないんじゃないかしら?相手は初心者なのよ?」

するとダルキリは、むくれて言い返してきた。

「初心者でもなんでも、最後まで気を抜かないのが基本だろ?俺の攻撃を全部見切ってたんだから最後だって避けるのは簡単なはずだ。」

「あのね!ダルキリ、あなたは、()わばプロなのよ!?初心者に最後まで・・・・・・なんて精神力が続くと・・・・・・で・・・・・・も?」

あたしがダルキリを怒っている最中にイリューストがあたしの服を軽く引っ張った。

「・・・・・・いいんだ。ラーシャ。ダルキリの言うとおりだから。僕がダルキリに教わるって決めたんだ。ダルキリの言うことは正しいよ。それに自分でも驚いてるんだ。僕、結局成長したよね。」

そういいながら立ち上がるイリューストは、パズルを解いている時並みに格好よかったので、思わずドキリとした事は、本人には内緒にしておくわね。

「・・・・・・ラーシャ?僕なんか変な事言ったかな?」

はっ!?あたしったら、イリューストを見つめてたのかしら!?

いやいや、誰でも格好良い一面はあるわよね?

イリューストに限ったことじゃないわ。

「でも!それでもよ!?いきなり精神力鍛えろって言われても無理があるじゃない!あたしは、無理だったわ・・・・・・。」

そう、小さい頃に何度も集中力が切れて何度も怒られた。

戦術の稽古は嫌いだった。

護身術とは名ばかりの立派な戦闘技ばかりを教え込まれた。

逃げ出したかった。

でもそのうち、お父様が憎くなってきて、脱走するために強くなると決めた。

―――あたしが強さを求めたのは、すぐに連れ戻されないようにだけど。

「ラーシャ。」

ダルキリの声が聞こえて、そちらを見るとすぐ隣にダルキリがいて驚いた。

右にイリュースト、左にダルキリがいる。

・・・・・・あたし、二人とも少し上を向かなくちゃいけないんだわ。

そう(たい)して変わらないけど・・・・・・二人が、少しだけ壁のように見えた。

「・・・・・・何よ?」

「稽古の邪魔なんだけど・・・・・・。」

「・・・そうね邪魔してごめんなさい。続けて。イリューストは、攻撃しなきゃダメよ?」

そう言って下がると、木によりかかりながら二人を見ていた。

イリューストは避けることがやっぱり大半だったけど、それでも地道に石を弾き返していた。

三日でこれほど成長するなら、イリューストはこの先、化け物並みに強くなりそうね。

まぁ、仲間だし強くなるのは、心強いと言ったら心強いけれど・・・・・・なにかしら?この嫌な胸騒ぎ。

イリューストが敵になるなんてあるはずないじゃない。

でも、怖いのよ。

どうして・・・・・・?

そんなことを考えていると風が頬を掠めていった。

ルキィルも、あの様子では、一緒に旅をしないかもしれない。

イリューストについても、ダイヤモンド・アイについても、彼がそうなのかについても、わからない。

違う国にいるはずなのになぜ言葉が通じるのかも、あの気持ち悪い洞窟はなんなのかについても、わからないことだらけで、何からどう手を付けたらいいのかわからない。

・・・・・・この国の人は昔ダイヤモンド・アイと交流があったと聞くけれど、ルキィルのお母様もダイヤモンド・アイについてはあまり知らなさそう。

だいたい、国自体が見えなくなっていて、訪問者などこないと言っていたのに、どうやって交流を・・・?

いいえ、確か言っていたわね。

迷い込んできた人がいたと。

それがダイヤモンド・アイなら交流があったというのも嘘ではないし、頷けるわ。

それよりも、いつまであたし達はここにいるつもりなのかしら。

ダルキリの考えだとイリューストがこの石を完璧に弾き返せるようになるまでかしらね。

イリューストは、精霊とのゴタゴタもあるし、そっちが一段落してからかしら?

そんな悠長な事言っていられるの?

こうしている間にも手配書は世界中に知れ渡っていくのよ?

大体・・・・・・イリューストを追っていたあの男・・・・・・どこから現われたのかわからなかった。

あたしには唐突に目の前に現われたみたいだった。

ないとは思うけど、万が一この国が見つかってイリューストがいると相手に知れたら・・・・・・また血の海になるのはここで、それを見てまた傷つくのはイリューストなのよ?

いくら外部からの接触や、交流がないとはいえ、やっぱり一つの国や場所に留まり続けるのは危険よ。

危険すぎるわ。

そろそろ居場所を移す話を、イリューストにも、ダルキリにもするべきね。

そんな事を考えていたら、そよ風があたしの頬を掠めていった。

ふっと視線をあげた先にミノムシらしき虫がいて、あたしは思わず何も言わずに剣を抜き取ると、それを切った。

そして剣を収めると、いつから見ていたのか、イリューストとダルキリが拍手をしてダルキリがこう言った。

「あれ?そこで“つまらぬモノを切ってしまった。”とか言わねーの?」

「いわないわよっ!言うわけないでしょっ!そんなに言いたいならあなたが物を切ったとき言えば良いでしょっ!」

「まぁまぁ、ラーシャ・・・・・・落ち着いて。見事な剣さばきだったよ。」

イリューストがにこやかに言うので、なんだかあたしまで気が抜けてしまった。

「あなたまでそんなこと言うの・・・・・・?」

「あれ?誉めたんだけど。」

「どこが誉めてるのよ、それのどこが。」

「・・・・・・ごめん。」

「それよりも修行は?」

「やる。」

そう言ってイリューストはダルキリに向き直り、剣を構えて数分後だった。

「零空閃ッ!」

イリューストが力強く何かを言うと、剣先から青い光が出て、すべて弾き返した。

そのいくつかはダルキリに跳ね返り、ダルキリは慌てて石を避けたり、キャッチしていたりしたけど、たぶん・・・・・・予期できていなかったのだと思うわ。

「イリュースト・・・・・・今の・・・・・・。」

あたしが口を開いたとき、ダルキリが叫ぶようにしてあたしの言葉をそのまま塞いだ。

「なんだ!?いきなり!お前、いつ技なんか!」

ちょっと!ダルキリ、邪魔よ!

まぁ、結果的にはあたしも聞きたかったことだし、黙っててあげるけど。

「え、あ・・・・・・ちょっと前に。今ならできる気がして。」

「・・・・・・すげぇな!」

「要はまだ完璧には操れないのね?」

ダルキリの声とあたしの声が重なって、一瞬イリューストは聞き取りづらそうな顔をしたけど、頷いた。

「・・・・・・まだ、完璧には操れない。たぶんこれから操れるように、出したいとき出るようにするんだと思う。」

「・・・・・・ねぇ、話が変わってしまうけど、あたしたちはいつまでこの国にいるの?ここに来てもう4日が経とうとしてるわ。いくら訪問者が来ないからって油断できないのよ?もし見つかったら?この国は見えないことを前提に成り立ってるわ。だから外部とは争わないで平和でいられる。それはいいことよね?だけど、それは同時に何を差しているのかわかる?」

「・・・・・・まどろっこしい説明はわからん。」

ダルキリがそう言うとドカッと座った。

「・・・・・・座りましょうか。それで、話に戻るけど、敵がいない状態にあるこの国は、責め滅ぼそうと思えばすぐにでもできる状態にあるってことでもあるの。わかるわよね?イリュースト。あなたなら。」

イリューストは、意味を理解したらしく、苦しそうに眉をひそめてから頷いた。

「・・・・・・みんな、消える・・・・・・のか?」

「そうはさせないわ。でも、ここにはすでに追われる首が2つもあるのよ。首、一つは賞金首。もう一つは・・・・・・文字通り命の危機がかかっている首。どちらの首を狙っている奴がくるかわからないけど、あたしは・・・・・・ルキィルが今変えようとしているこの国は、平和であってほしいと思っているわ。」

「そりゃ誰だってそうだろ。」

ダルキリは、状態があまりよくわかっていないらしい。

それも仕方のないことなのかもしれないわよね。

イリューストの故郷の様子を知らないんだもの。

まさか、あたし達がここに留まるだけで国が丸々無くなってしまうかもしれないなんて考えないわよね。

あたしもイリューストに会う前まで自分一人の存在のせいで国が滅びるなんて考えたこともなかったわ。

イリューストは、その重荷を背負っている。

大金目当てのあたしと違って、イリューストには、それだけの価値があるってことよね・・・・・・?

「ダルキリ、あたし達がここにいることで、ここの平和が乱れるかもしれないの。一つの場所に留まるのは危険なのよ。わかるかしら?」

「イマイチ・・・・・・。」

そう言いながら首をひねるダルキリを見て、ああ、これはもうダメだ、とそう思った。

きっと、イリューストの故郷の話をすればあたし達がここに留まるのがどれだけ危険かすぐにわかるのだろうけど。

でも、本人が話したくない過去をあたしが勝手にダルキリに教えていいのかわからない。

そもそも、どうしてイリューストは、ダルキリに自分の身に何が起こったのかを教えようとしないのかがわからないわ。

これは、話し合ったほうが良さそうね。

「イリュースト、ちょっと良いかしら?」

「え?あ、うん・・・・・・。」

曖昧に頷いたイリューストを半ば強引に物陰に連れ込むと、早速その話を持ち出した。

「イリュースト、ダルキリにあなたの故郷の話はしないつもりなの?黙っていてもいつかはばれるものよ?秘密にしている必要もないんじゃないの?ダルキリは、仲間なのよ?」

「・・・・・・わかってるよ。わかってるんだ。わかってるけど、言いたくないんだ。それがどうしてなのかは、よくわからない。」

イリューストはそう言ってから目を伏せた。

あたしはため息を吐いた。

「じゃあ、あたしがダルキリに説明してもいいのかしら?このままじゃ、わかるものも、わからないわよ。」

イリューストは、答えなかった。

ただ、じっと座っていた。

コレはもうダメだと判断したあたしは、ダルキリのところへ行こうとイリューストに背を向けると、イリューストに腕を捕まれた。

「何よ?」

呆れ気味にイリューストを振り替えると、イリューストは本当に苦しそうな、切なそうな・・・・・・そんな顔をしていた。

「・・・・・・リュラの事は言わないでほしい。」

その言葉は、鉛のようにあたしの心の底へと沈んでいった。

イリューストとリュラの関係は、他者が入ることもできなければ、変えることもできない。

本人だけのモノに、とやかく言う義理は、あたしには確かにないけれど、まだイリューストは、過去に縛られるの?

リュラが大切で永遠の、絶対的な存在だから?

他の人にとやかく言われたくないの?

心の奥底の質問とは裏腹に、あたしは力強く頷いていた。

「わかったわ。」

すると、スルリとあたしの手はイリューストから離れ、普段あるべき位置に戻った。

―――時々、イリューストが本当は何を考えているのか分からなくなるときがある。あたしはイリューストではないのだから、当然なのかもしれないし、イリューストも何も考えてないときだってあるだろうけど、それでもあたしは、わからないことが、苦しくなるの。

そんなに知りたいなら本人に聞いてしまえば良いのに、それができなくて、考えだすとキリがないから・・・・・・あたしは、どんどんドツボにはまっていってしまうのよ。

ねぇ、どうしてあなたはそんな寂しそうで、苦しそうな顔をするの?

どうしてダルキリにリュラの存在は教えるなと言うの?

あたしには、わからないわ。

わからないから、きっと、知りたくなるんでしょうけど・・・・・・。



作「ぎゃー!時間がない!」

ラ「あら、お星様になった作者様じゃない。」

作「えっと、説明すべきこともないね!?なら今回はすみませんが、作者の都合上カットさせていただきます!次回もよろしくお願いします!!」

ラ「え?ちょ、ちょっと……!?」

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