イリューストSide 零空閃
うわぁぁぁぁぁぁ!?
僕はただ走っていた。
たぶん、廊下をずっと。
人の目なんか気にしてられなかった。
とりあえず先程のラーシャを頭からかき消そうと必死だったのだ。
というか・・・・・・室内を走り回ってるのに誰も何も言わないし、誰にもぶつからないって、ここ、どれだけ広いんだろう?
僕、迷っちゃったのかな?
その時だった、真っ正面に誰かがいて、僕は止まり切れずにその人のところへ突っ込んだ。
「うわぁ!」
「おわっ!?」
その人にぶつかって、思いっきり押し倒し、僕はすっころんで少し鼻を打った。
「いててて・・・・・・。」
「あ、ごめんなさい!ごめんなさい!本当にすみません!」
僕が必死に謝った先にいたのは、ダルキリだった。
「え・・・・・・?ダルキリ?ここで何して・・・・・・。」
「いってぇな!イリューストこの野郎!」
・・・・・・静かに“いってぇな!イリューストこの野郎!”は長いと思ったことは言わないでおこう・・・・・・。
「ごめん。」
「てめぇが帰ってこねぇからいい加減探しに行くかと思ってたら、室内で走ってきて・・・・・・おまえ、本気で何やってんだよ!?」
「ごめ・・・・・・。」
僕は視界が歪んだ。
あ、やばい・・・・・・本気で走りすぎた。
僕は何時間走ってたんだろう?いや、もしかしたら何十時間かも・・・・・・足もカタカタいってるし、疲れても走ってたし、手足が痺れてきた・・・・・・。
カッコ悪いけど・・・・・・酸欠だ・・・・・・。
グラリと姿勢を崩した僕に、ダルキリはさらに怒りが増したらしく何か怒鳴っていた。
耳が暑いし、ドクドクいう・・・・・・耳から血とか・・・・・・出てないよな?
そのまましばらくすると、僕の体は浮き、どこか別の場所へと移された。
意識がはっきりしてくると、僕の痺れて冷たくなった手を誰かが握り締めてくれている事に気が付いた。
あれ・・・・・・僕の手を握ってくれてるのって・・・・・・ラーシャ・・・・・・?
そんなわけないかぁ・・・・・・。
「イリュースト!イリュースト!落ち着いて!聞こえる!?大きく息を吸うのよ、いい!?」
え?本当にラーシャ?
あれ?でも外はまだ暗いんじゃ?
「ラ・・・・・・ーシャ?」
「そうよ!あたしよ!わかるわね?ならあとは落ち着いて息をして、この痺れを治すだけね!」
数分後、僕はラーシャ、ルキィルさん、ダルキリ、姫巫女さんが居ることを知ることとなった。
「あれ・・・・・・僕・・・・・・その・・・・・・ごめん・・・・・・。」
窓から見える景色が薄明かりを灯す中、僕は起き上がると少しフラッとした。
「イリュースト!」
格好悪くもラーシャに抱き止められ、そのまま元の体勢へ。
「いきなり起き上がっちゃダメよ!」
「・・・・・・ごめん・・・・・・。」
ラーシャはいつもの勇ましいラーシャで、昨日か今日かわからないけど、夜見たような姿はどこにもないから僕も無理やり頭を振り回して姿を消すこともなく、少しだけ、いつものラーシャにホッとした。
「・・・・・・ありがとう。」
「どうしたのよ?いきなり?」
ラーシャが不思議そうな顔をする中、姫巫女さんやルキィルさんは「これでもう大丈夫ですね?少しばかり片付けをしてきましょうか。」と言って部屋を出ていった。
残ったのはラーシャとダルキリだけ。
すると、僕はいきなりダルキリに怒鳴られた。
「無茶してんじゃねぇよ!バカかっ!慣れない修行したあとはちゃんと休め!良いな!?」
「え・・・・・・あ、うん。」
ダルキリはそのまま、フンッと言うとベッドに横たわった。
「・・・・・・えっと・・・・・・その、ラーシャもありがとう。」
するとラーシャに抱き締められて僕は驚いた。
「ら、ラーシャ!?」
「心配したのよ・・・・・・イリュースト、お願い。変な無茶だけはしないで。今回ばかりはダルキリの言うとおりよ。無理はしちゃいけないわ。いくらイリューストが強くなりたくても、そのままじゃ体を壊してしまうわよ・・・・・・。」
僕から離れたラーシャの目が、とても真剣だったのを見て、思わず逃げ出してしまいたかったけど、僕は強くうなずいた。
「わかった、これからはできる限り無茶はしないよ。」
・・・・・・とは言ってもラーシャのあの姿をかき消すために走ってたと知ったらみんな相当呆れた顔するんだろうけど・・・・・・。
「絶対よ?いい?あたし達、仲間なんだからね?」
「・・・・・・うん。」
それからラーシャが部屋へ帰り、僕は眠りに就いた。
気が付いたときには日はずいぶん高くに上っていて、時刻はもう昼頃をさしていた。
「おわぁっ!?」
飛び起きると横には食事が用意されていて、それを食べおわると僕はすぐに水の精霊の所へ向かった。
「ごめんなさい!遅れました!」
僕が頭を勢い良く川に向かって下げると、水の精霊はラーシャの姿になりクスリと笑った。
〔昨夜は少々無理をしたらしい・・・・・・別にいくらおぬしが遅れたって"こちら"かまわぬのだよ?その分おぬしが強くならないだけでな。〕
僕は、精霊の突き放したような言い方にゾッとした。
コレだったら怒鳴られた方が数倍マシだった。
しかもラーシャ姿の水の精霊は笑っている。
感情が全く読み取れない状態にあった。
「僕は・・・・・・強くなりたいです。」
やっとそれだけ勇気を振り絞って言うと、精霊は再びクスリと笑った。
〔案ずるでない。怒ってはおらぬよ。おぬしは別の訓練も試しておるようだしな。今日はそちらは良いのか?〕
「ダルキリの方は、今日は休みだと思います・・・・・・昨日ゆっくり休めと怒られたので・・・・・・。」
〔そうか。ならば始めるぞ。〕
僕は水を必死で切った。
でもそれでは弾きかえせなかった。
神経を集中させた。
その時に、何かできる気がした。
今まで飛んでくる水は自分にあたるばかりなのに、その時だけはあたらなかった。
青い炎のような光が水をすべて弾き返していたのだ。
「え・・・・・・?」
〔ほぅ、技を覚えたか。名を付けてやるとよい。必殺技に出やすくなるぞ。〕
「え!でも、なんで付けたら良いか・・・・・・!」
〔おぬしの中に眠る言葉をそのまま口に出してみるがよい。〕
僕は目を閉じた。
「・・・・・・零空閃・・・・・・。」
本当に勝手に口から言葉が漏れた。
精霊は少し笑うと言った。
〔零空閃か、確かに、零からいきなり始まったおぬしにはぴったりだし、何より・・・・・・空中で、きらりと光る・・・・・・か。よい名をもらったな。零空閃は。〕
「え?きらりと光る?」
〔なんだ、閃とは、閃きという意味があるではないか。そんなこともわからずにその名を付けたのか?〕
「え?あ、僕、あんまり字とかこだわってなくて、ただ・・・・・・。」
〔字も見たことがないのに、浮かんだ・・・・・・か?〕
うなずくと、精霊は〔真の業や名など、そんなものだ。〕と言って笑った。
僕の特訓はココまでだった。
精霊が言うには〔初めて技を使ったのだから疲れただろう、休むとよい。〕との事だったんだけど、そんなに疲れてないんだけどなぁ?
夕飯を食べて部屋に戻ると僕はすぐに寝てしまった。
作「パンパカパーン!イリューストはレベル2にあがった!イリューストは剣技、零空閃を覚えた!」
イ「……祝ってくれてるのか、皮肉ってるのか、おちょくってるのか分からない……。」
作「おいおい、いくらお気に入り登録者が減ったからってイリューストに八つ当たりするほど心は狭くないぞ?」
イ「でもやっぱり気にしてるんじゃないか!」
作「ギクッ……ハッハッハッ!ばれてしまってはしょうがない!そうさ、気にしているさ!当然だろ!?これって、小説自体がぐだぐだで最悪だと言われてるも同然だからな!ま、それが残念ながら事実なんだろうけど……。」
イ「(いきなりハイテンションになったと思えばいきなり落ち込んだよ……この人、面倒くさいなぁ……。)へ~……。」
作「つーわけで多分一人読者様減ったからさ、イリュの成長やヒーローっぷりも見てもらえなくて残念だったな!」
イ「ヒーロー……って言ってもなぁ。」
作「だよなぁ、イリューストを基準に考えると、イリュ、レベル2、ダルキリ、レベル20、ラーシャ、レベル15だし……中でもラーシャは深く強くじゃなくて、浅く広い武器種を使いこなせるし、ダルキリは火属性の魔法が使える。何も出来ないのはイリュだけだな!」
イ「やっぱり祝ってもらってる感じしないんだけど……というか、どうしてそんなに差をつけたんだよ!」
作「……ラーシャはとある有名なところから出てきた設定だし、知識も腕もある。おかげでイリューストは最初死ななかったわけだしな。ダルキリは、深く物事を考えようとしない一直線なヤツだから強くなることだけに集中して強くなってったんだよ。そんで、ラーシャが後ろからやられたときも、イリュやラーシャを庇いながら&戦いながら逃げ切れた。二人も庇いながら戦うって難しいと思うぜ?んで、イリューストは知恵がかなり優れてる。用は頭が良くて知識が豊富なんだな。イリュもわりとやりたいと思ったことには一本筋だからな、ダルキリみたいに周りが見えなくなったり、暴走したりってことはないが、まぁダルキリは戦闘方向に突っ走っていって、イリュは学問に富んだってわけさ。」
イ「僕だって、なれるなら強くなりたかったよ。」
作「だからこれからなる。だけど、今までの差があるのはそれは、イリューストも、ラーシャも、ダルキリも、"住んでいた世界が違う"ってことさ。イリューストの国は平和だった。作者の国みたいな。だから武器の流通なんてなかったし、強さを求められることも少なかった。ダルキリの世界は魔物が出る世界に住んでいた。だから武器も流通していたし、一般人も女性も戦っていた。だからダルキリの両親は魔物討伐で家にいなかっただろ?そして、ラーシャの世界では、権力争いを巡ってわりと頻発に戦争が起きていた。ラーシャの周りはわりと平和だったけど、それでも女も自分の身くらい自分で守らなきゃならなかったわけさ。」
イ「ラーシャって、なんで身元隠してるのかな。」
作「……今回はココまでです!読んでくださった読者様、ありがとうございます!」
イ「それくらい教えてくれたっていいじゃないか!」