ラーシャSide 友達
髪の毛を結び直しに特訓の場から離れてしばらくすると、イリューストがかなり上達していた。
ものの数分で身につけてしまう恐ろしい力。
元々イリューストには洞察力があったし、距離感覚を掴むのも早いのかもしれない。
「え?じゃねぇよ。せっかく短時間で上達したんだからもっと喜べよ。」
「あ、うん・・・・・・。」
「凄いじゃない。イリュースト。」
イリューストが驚いた顔でこちらを振り返った。
「ラーシャ!?いつの間に・・・・・・というか、いつから!?」
わかってるわよ、いつからここにいたのかって言いたいのよね?
そんなにアタフタしなくても良いじゃない。
「・・・・・・ずっと。」
そう言ってあたしは微笑んだ。
ここに来て、訪問者もいないし、外部には見えないと聞いて大分余裕ができた。
ここならしばらくはあたしの追っ手も、イリューストの追っ手もしばらくは来ないでしょう。
いや、イリューストの追っ手はわからないわね。
あたしがイリューストをかばったあの日の敵の目・・・・・・騙せただけ人間だろうけど、目に光が宿っていなかった。
まるで感情がないようで、―――シェラとはまた違う意味で―――気持ち悪かった。
「ラーシャ!」
あたしはまた抱きつかれたが、もうめんどくさいのでダルキリを無視する事に決めた。
「あー、落ち着くー。」
ダルキリ、ちょっと汗臭いわね・・・・・・まぁ仕方ないか・・・・・・あたしも人のこと言えないだろうし・・・・・・。
「ラ・・・・・・ラーシャ?」
イリューストはあたしを見てオロオロしている。
ダルキリも固まってるし、たぶんなんであたしがダルキリを殴らないんだろうとか思ってるんでしょうね。
「何よ?」
「その・・・・・・ダルキリ・・・・・・。」
「・・・・・・抱きついてるわね、めんどくさい・・・・・・。」
ため息を吐いたらダルキリの手かお腹あたりまで落ちてきた。
これじゃ本当に恋人みたいな抱き方じゃない!
「ちょっと!そこまで許してないわよ!」
おもいっきり拳で殴ったら向こうも離れた。
イリューストも心なしかホッとしてるみたい。
「いつものラーシャだぁ・・・・・・!」
イリュースト?本心が口から漏れてるわよ?
「あたしはいつもあたしよ!いつものあたしとか居ないわよ!」
「だって、ラーシャ・・・・・・いつもならすぐにダルキリを・・・・・・。」
うう・・・・・・違うのよ、本当はあたし、こんな暴力をふるうような人間じゃないのよ。
ただ、ダルキリは、言ってもわからないからそうなってしまっただけなのよ!
「違うのよ・・・・・・いつも簡単に暴力をふるってるわけじゃないの!」
必死に誤解を説こうとしているところに突風が吹いた。
「きゃあっ!?」
突風はあたしが予期全くしなかったことで―――当たり前なんだけど―――、あたしは慌てて借り物のスカートを押さえ、髪の毛を押さえ付けた。
いつもの鎧と違って借りた服は軽くて動きやすいからいいけど、風に簡単になびいてしまうから大変。
多分下着は見えなかったはずだけど・・・・・・と、ダルキリとイリューストを見た。
そんなあたしを見てダルキリは「ちぇー、つまんねーのー。」と呟き、イリューストは固まっていた。
「イリュースト・・・・・・あなたまさか・・・・・・。」
あたしの下着を見たとか言わないわよね?と威圧的に微笑むと、イリューストはハッと我に返り、あたふたしはじめた。
「え、うん!見てない!というか、見えなかった・・・・・・けど、ただ・・・・・・その、驚いて・・・・・・。」
「何にそんな驚くのよ?」
あたしが方眉を釣り上げると、イリューストは赤面した。
「その・・・・・・ラーシャが・・・・・・セクシーだなーって・・・・・・ごめん!セクハラ発言だよね!忘れてくれていいよ!」
イリューストはそう言うとあたしに背をむけ、右手と右足を同時に出しながらどこかへ歩いていった。
まるでロボットみたいよ?イリュースト・・・・・・。
“ラーシャが・・・・・・セクシーだなーって”
「っ・・・・・・。」
あたしはあたしの顔が熱くなるのを感じた。
社交辞令で夫人に挨拶するときに言ったことはあっても言われたことはないことだった。
可愛らしいとか、綺麗とかは言われたことがあっても決してセクシーだと言われたことはなかった。
すべては・・・・・・この棒みたいな体付きのせいだと今でも思ってるわ。
まさか、その言葉がこんなに心に残るなんて・・・・・・。
「ラーシャ?熱でもあんのか?」
ダルキリがあたしの顔を覗き込んでいたのを見て、あたしは我に返った。
「な、ないわよ!ちょっとびっくりしたというか・・・・・・その、そう!ちょっとびっくりしただけよ!」
「顔、真っ赤だぞ?」
「だ、だって、言われた事無かったのよ・・・・・・セクシーなんて・・・・・・。」
するとダルキリは腕組みをして笑いだした。
「そりゃスレンダーが売りのラーシャじゃあんま言われねーだろ!」
「うるさいわねっ!!」
あたしはダルキリの頭を平手打ちした。
「いってー!俺はただ誉めただけなのに!」
「そんなの誉めてないわよ馬鹿!」
全く・・・・・・失礼しちゃうわ!
悪かったわね!
スレンダーで!
悪かったわね!
ルキィルみたいなスタイルじゃなくてっ!
あたしはむすりとしながら歩き始めた。
すると、どこからか歌が聞こえてくる。
どこだろうと耳を澄ますと、すぐ近くから聞こえることに気付いた。
そっと前にあった葉っぱを退けて、ちょっとだけ除くと、そこには寂しそうな表情で歌うルキィルがいた。
目の前には川があり、彼女のこえにあわせるように魚が飛び回り、木がそよいでいる。
そこだけはまるであたしがいる世界とは違う、別世界のように見えた。
♪~
あたしもついつい歌を口ずさんでしまった。
不思議なことにルキィルの歌もあたしの歌も全く違うメロディーなのに一つのように聞こえる。
どこの世界でもメロディーのリズムは同じなのかしら?
そんなことないわよね。
時折ダルキリが歌っている歌は、とてもじゃないけどあたしの歌のリズムとはあわない。
突然ピタリとルキィルの声が止んだ。
つられてあたしも止まる。
「誰?」
ルキィルがこっちをむいているのを感じた。
ええい!隠れる必要もないわよね!出てしまえ!
「あたしよ、邪魔してしまったみたいでごめんなさい。」
「ラーシャ!」
ルキィルは軽く口を押さえ、目を丸くした。
「邪魔だなんて・・・・・・そんな・・・・・・私、てっきり木々の精霊かと思った・・・・・・。」
「木々の精霊?」
「うん・・・・・・ねぇ、ラーシャは森の妖精なの?だからそんなにきれいな緑の髪や目の色をしてるの?」
最初に会った頃より少し明るい口調でルキィルはあたしに尋ねてくる。
明るくなったこと自体はよかった。
でも、木々の妖精って・・・。
「あたしはただの人間よ?」
「・・・・・・もう一度歌ってほしい・・・・・・。」
ルキィルはそう言うとうつむいた。
「良いわよ。」
あたしは微笑んでからさっきと同じ歌を歌った。
そして間もなくルキィルも歌いはじめた。
そこはやっぱり別空間にいるみたいだった。
風が木の葉を揺らしていく。
こーゆーの、嫌いじゃないわよ。
だけどやっぱり異国の歌ね、ルキィルの方があたしよりも早く歌いおわってしまっていた。
「不思議な歌・・・・・・ルキィルの世界でも妖精と会話をしたりするの・・・・・・?」
歌い終わってからルキィルはかすかに顔を傾けながら質問を投げ掛けてきた。
「いいえ、あたしの国には妖精は存在しないとされているの。そういうのは童話やお話の中だけだと。」
「ならどうして歌が?」
「人はね、意味がなくても歌うのよ。理由なんてきっとないわ・・・・・・そう、いらないはずなのよ・・・・・・。」
あたしはふっと遠くを見た。
歌に価値を求められてもあたしは何もできない。
評価するのはいつも他者で、歌は単なる教養で・・・・・・歌に意味なんてなくてもあたしは歌った。
歌うことは嫌いじゃなかった。―――評価さえされなければね。
でも人は人を数値化するのが好きで、それが当たり前だから、そうやって人の“魅力を計ろう”とするのよね。
魅力なんて計れるものじゃないはずなのに・・・・・・。
「ラーシャ?」
ルキィルに自分の名を呼ばれてハッとした。
「何かしら?」
「その・・・・・・私たち・・・・・・友達・・・・・・なんだよね?」
「嫌、だったかしら?」
ルキィルは頭を横に振ったのであたしは内心ホッとした。
「違うの、嬉しいなって・・・・・・思って。」
あたしが勝手に言ってしまった“友達”という言葉。
でもあたしは友達が具体的になんなのかはわからない。
あんなに友達、友達連呼したけど・・・・・・本当は何もわかってなくて、もし、ルキィルがあたしの事なんとも思ってなかったら、怪訝な顔されるところだったのかもしれない。
そうかもしれなかったのに・・・・・・と思いながらもあたしは笑ってルキィルに、「当然じゃない。これからも、友達よ?」と言っていた。
作「初友達だな、ラーシャ。」
ラ「そうね、ルキィルはちょっと変わった子だけど、いい子だとあたしは思うわ。」
作「良かったよかった。ルキィルも友達の存在とかよくわかんないしな。」
ル「初めて……ラーシャが私のこと、友達って言ってくれたとき……私、とても嬉しかった……。」
ラ「あたしも、友達って言ってもいいのかと内心ヒヤヒヤしてたわ。」
作「お前ら馬鹿だな~。友達なんて、友達だよね?って確認しあうもんじゃないし、そんなのやってるのは小学生くらいだろ。いや、小学生を馬鹿にしてるわけじゃないけども。とにかく、仲良くなってたらそこで友達なんだよ。」
ラ「言葉遣いが汚いわ。それに、お前らなんて呼ばないで。あたしたちにはちゃんと名前があるのよ。」
作「お~怖い怖い。」
ラ「……ちょっと、あたしのこと馬鹿にしてるの?」
作「滅相もございませんよ。」
ル「ラーシャ、怖い……あの人、あんまり相手にしなければいいんじゃないの?」
作「ちょ、作者のこと、"あの人"扱いですか!?」
ラ「それもそうね!それで、まだ聞いてなかったけど、ルキィルの好きなこととか、何かあるの?」
作「え?作者無視!?放置プレイ?放置プレイなの!?」
ル「好きなこと……わからない。やることは全て儀式や、精霊に関することだったから、何がすきとか、あんまり……。」
作「え!?ちょ、まじ放置プレイ!?ねーねー!!」
ラ「そうなの……じゃあ好きなことも、嫌いなこともあんまりないのね。」
作「ギャ――――――――――――――」
ラ「うるさいわ!静かにして頂戴!!」
作「――――――――――――ァァァアアアアア」
ル「……ガムテープと、縄を持ってきた……。」
ラ「ナイスよ!ルキィル!早速それで……。」
作「イギャァァアァァアアアアア――――――――――(さっきとは別の意味で、全力疾走しながら叫んでいます)――――――――――イヤだぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
キラーン★
ラ「あら、星になっちゃったわ。」
ル「じゃあ、ここでさよならってことで……。」
ラ「そうね!えっと、毎回誰に言ってるのかわからないけど、確か、読んでくれた読者のみなさん、ありがとう!次回もよろしくね!!……ねぇ、ルキィル、こんなもんでいいのかしら?」
ル「……知らない……それに、誰に言ってるの?」
ラ「誰にかは、知らないけど毎回あの星になった作者が言ってたのよ。」
ル「……ふーん……。」
作者は星になりましたが、次回にはきっと戻ってきてます。
……多分。




