イリューストSide 水の精霊?
ラーシャはずっと怒ってて、相当ダルキリに腹を立ててるみたいだ。
「ら、ラーシャ・・・・・・僕向こう行ってくるね!」
なんとなくとばっちりをくらいそうで怖くて逃げ出してきたわけだけど・・・・・・川が見つかった。
「わわ・・・・・・魚が泳いでる・・・・・・。」
どうやって捕まえたら良いんだろう・・・・・・。
「水の精霊よ、どうか僕に魚をお恵みください。何より、あなたの中に入り、水を汚すことをお許しください。」
とりあえず川に向かって膝を着き、手を合わせると、僕は靴を脱ぎ始めた。
〔おぬしは、水の民か?〕
どこからともなく声が聞こえ、僕はあたりを見渡したが、何もいない。
それにこの声、あれだ・・・・・・洞窟にいた魔物達と似たような声だ。
たしか僕の脳内に直接語り掛けているとか・・・・・・。
〔目の前だ。おぬしの目の前にわたしはいる。〕
「・・・・・・え?もしかして・・・・・・川?」
僕は目を丸くした。
でもさっき僕が祈りをあげたのは川しかない。
本当は摘み取るものすべてに祈りをあげなくてはならないのだけど、何かに力を貸してほしいとき、祈りをあげると効果が得られると亡き両親から教わった。
そして最後も必ずお礼をするようにと教え込まれて生きてきた。
〔今一度問う、おぬしは水の民か?〕
身の回りすべてに感謝をし、大切に扱えとは教わったけど、僕が水の民かとか、両親が水の民かとか、町や村じたいが水の民とかは全く聞いたことがない。
「違う・・・・・・と思います・・・・・・。」
〔ならば何故おぬしはわたしの声が聞こえるのだ?こちらに寄れ、青年よ。おぬしの顔をわたしによく見せておくれ。〕
ある一部の川の流れがゆっくりになるのを僕は見た。
そこに行けって事なのかな?
よくわからないけど僕はジャボジャボと川を横切った。
そして流れが穏やかな場所にたどり着くと、いきなり水が僕の背の高さまで沸き上がってきた。
「うわっ!?」
水はしばらく形をかえ、僕の姿になったり、ダルキリの姿になったり、いろいろな人に形を変えていたが、最終的にはラーシャの姿に落ち着いた。
〔どうやらおぬしはこの姿が一番落ち着くらしいな。〕
ググッとラーシャの姿になった水が僕に近寄ってくる。
すごい・・・・・・ラーシャが透明だし、髪の毛が水だからちゃんと水が流れてる。
ラーシャそっくりの黒目がないバージョンの全身が水で透き通っている目が僕を覗き込んでいる。
なんか、雪像みたいだ。
ラーシャの雪像・・・・・・ねぇ・・・・・・。
そんなくだらないことを考えていたら、いきなり水が声を上げた。
〔おお!なんたること!まだおぬしのような民族が生き残っていたとは・・・・・・!青年よ、良いことを教えてやろう。この川の流れに沿って下流に向かって歩いていくとよい。この先、途中で道が二つに別れる。それを左に、その先ではさらに三つに別れるから真ん中を歩くとよい。その先におぬしの民族よりもわたしと仲が良い水の民と出会うことができるであろう。〕
「え!?あの、ちょっと待ってください!どうして僕にそんなこと!」
〔ただの人間どもではないからだ。おぬしはわたしに祈りを捧げてくれた。近ごろは誰もわたしに感謝も断りもなくわたしを汚す。おかげで目が霞んでよくものが見えなくなったよ。わたしが汚れたら困るのは人間どもも同じであろうというに、おっと・・・・・・おぬしは魚が欲しいのであったな。ここの主はやれぬが、主に近いかそれに相当するサイズではあると思うぞ。旅の共に持っていくとよい。む、また人間どもが何の断りもなくわたしで獣の血を洗っておるな。ではな。気を付けてゆくがいい。〕
僕の手にはでっかい魚がビチビチと元気よく暴れ回る魚が数匹いたが、僕には何が起きたのか今一つわからずにいた。
何なんだろう・・・・・・魔物が僕に話し掛けてきたと思ったら今度は水だ・・・・・・しかもどうしてラーシャとかダルキリを知ってたんだろう。
僕は魚を抱き締めるようにして川から上がった。
そして川に一礼をした。
「こんなに沢山の魚とお力を貸していただいたこと、感謝いたします。」
魚の大きさは約20㎝サイズ。
川魚にしてはかなり大きいサイズだろう。
それが六匹程僕の腕の中にいるのだ。
持ってかえればさぞかし驚くだろう。
僕自身今回のことをうまく二人に話せるかどうかもわからない。
とにかく全身びしょ濡れだ。
寒いから早く火の所に行きたい。
早足で歩いているとラーシャに会った。
「イリューストォォオ!あなたまで一人行動して!あら?それ、魚?びしょ濡れね。お手柄じゃない。だけど、単体行動はやめてちょうだい!」
僕はラーシャに火の近くへ押されて魚をおろした。
うぅ・・・・・・寒い・・・・・・。
僕は身震いすると服を脱ぎ始めた。
もちろん火で乾かすためにだ。
マントも魚を抱えてきたせいで濡れてるし・・・・・・。
でも僕は考えなしだったみたいだ。
両手で自分の顔を隠すラーシャを見てハッとした。
「キャァァァァァア!バカバカバカッ!変態!最低!レディーの前だってわかってないの!?せめてマントでもかぶってこっそりとやってほしいわ!堂々と脱ぎださないでよ!」
石ころが投げ付けられて本島に痛い。
「痛い痛い痛い痛い痛い!ラーシャ!痛いよ!」
最後にラーシャのマントが飛んできた。
身体中傷だらけになるかと思ったよ・・・・・・。
真っ赤になって怒りに震えながら後ろを向いてるラーシャを見た。
・・・・・・そんな怒んなくても・・・・・・リュラなら“脱ぐのは上半身までにしとけよ?”とか、“やっぱイリュは筋肉ないなぁー。”とか言って笑って流してくれそうなのになぁ。
そういえば今日の水さんにも聞きたいことがあったのになぁ。
僕みたいな民族がまだ生き残っていたとは・・・・・・みたいなこと言ってたよな?
あれってどういう事なんだろう?
考えれば考えるほどよくわかんないよ・・・・・・。
「ラーシャ、ごめんって・・・・・・これから気を付けるから、期限なおしてくれない?」
「もぅ・・・・・・もぅ、嫌!どうしてこんな事ばっかり!早く女の子の旅仲間が増えないかしら!?」
ラーシャはぶつぶつと1人で何か呟いていた。
「ごめんってば、ラーシャ。」
そこへ獣を片手に担ぎ上げているダルキリが帰ってきた。
「ラーシャー!イリュースト、とってきたぞー!」
心なしか僕の名前呼ぶとき、声小さくなかった!?
僕はダルキリの方を振り向いた。
その瞬間だ。
ゾクリと背中に悪寒が走った。
ダルキリ、その獣・・・・・・何か憑いてる・・・・・・。
そう思った瞬間、水の精霊?との会話がよみがえった。
“む、また人間どもが何の断りもなくわたしで獣の血を洗っておるな。”
もしかして・・・・・・その人間どもって・・・・・・ダルキリのこと!?
「ダルキリ、それ・・・・・・どこで洗ってきたの?」
「あ?どこって・・・・・・ああ、そうそう、近くに川があったんだよ!」
「それって、向こうの?」
僕は左を指差した。
「ちょっとイリューストもダルキリもいい加減にしなさいよね!単体行動はダメってあれ程・・・・・・」
怒り始めたラーシャの前に僕は手をあげた。
「ごめん、ラーシャ少しだけ黙ってて。」
「なっ・・・・・・」
ラーシャが何か言い掛けてとまってくれた。
どうやら冗談話じゃないって事だけはわかってもらえたみたいだ。
「そうだけど、どうかしたのか?」
僕は獣に触れようとしたとたん、まわりについてる何かがいきなり水の精霊?みたいに顔形になり僕をにらみつけたので思わず手を引っ込めてしまった。
ダメだ。
今のままじゃダメなんだよ、僕!
変われ。
少なくとも今くらい怯えないくらいになれ!
そっと獣に触れるとその変なのが僕の腕をぬるぬると絡み付いてはい上がっていくようで気持ち悪かった。
「水の精霊よ、先程のご無礼をお許しください。そして自然界に息するものすべてに、このものの命を奪ったことをお許しください。この命はありがたくいただきます。」
すると気持ち悪い何かは消えた。
「何してんだよ?さっきっから1人で。」
「一人でって・・・・・・。」
ダルキリは獣を担ぎなおした。
「あれ?なんかちょっと軽くなっちまったかな?くそっ、結構大物だと思ったのに。」
悔しそうにダルキリは呟いた。
え?もしかして僕以外にさっきの見えてる人いないの?
「ラーシャ、さっきの・・・・・・。」
ラーシャは首を横に振った。
「わからないわ、イリュースト・・・・・・あなた、さっき何をしたの?」
僕は頭を少し掻いてからラーシャにあったことを話し始めた。
今回ダルキリに話さなかったのは単に嫌だったとかではなく、こんな話は絶対信じないだろうと思ったから――…‥。
作「は~いちょっと目が死んでる作者ですよ~。」
イ「そんなことより、あの小人の村ってどうなってたの!?」
作「そんなことって、お前なぁ……。ラーシャにも言ったけどそれは後々解明される謎の一つなんだよ。」
イ「じらしてる……。」
作「じらして何が悪い!小説なんてそんなもんだろう!ワッハッハ!」
イ「笑い方、へんだよ。」
作「うるさい!だまっとけ!」
イ「うわぁあ!いきなり怒った!」
作「そうだ!作者は不機嫌なんだ!だから今回のおまけはココまでなんだ!」
イ「(人に八つ当たりしないでほしいよ……。)」