イリューストSide 寝れない…
ラーシャはお腹を抱えて笑い続けているし、ダルキリはなんか赤面しながら怒ってるし・・・・・・なんか、いいなぁ、こういうの。
僕はリュラがいたけど、こんな感じにはならなかった。
とくにリュラが成長してからは・・・・・・。
なんというか、向こうが大人になるのが早かったんだと今になって思う。
微妙に埋まらない距離ができはじめて、向こうはやたらしっかりしだすし・・・・・・それにリュラが言った“奴ら”って何のことなんだろう・・・・・・本当に。
まさか、僕がいなければ街はあんな事にならなかった・・・・・・とか、ないよね・・・・・・?
「イリュースト!」
ビックリした。
気付いたらラーシャが僕の手を握っていて、僕は包帯をぐしゃぐしゃにしていた。
「ああ、ごめん。」
僕は笑った。
笑うしかなかった。
「辛いわよね・・・・・・何一つ情報つかめてないし、焦る気持ちもわかるけど・・・・・・今は自分を大切にして・・・・・・。」
え?ラーシャ、僕の心でも読んだの?
「あなたの考えてることなんて大体わかるわよ・・・・・・顔にすごく出てるんだもの。」
ラーシャは肩眉を下げながらクスリと笑った。
また、読まれた!?
「ちょ、超能力者?」
「そんなわけないじゃない。だから言ってるでしょ?顔に出てるし、こうやって手にも出てる。我慢するのもいいわ、あなたが辛くないなら。でも、これ以上自分を痛め付けることはやめて。」
僕の手のひらにそっとラーシャの手の平が乗った。
どうやら僕は思っていることがすぐ顔に出るらしい。
困ったな・・・・・・これじゃ秘密なんて何一つできやしないじゃないか。
「んなことより、肉!肉覚めるぞ!」
ダルキリの声でわたわたとお皿がテーブルの上に並べられ、食事が始まった。
ダルキリはがつがつ食べてるし、ラーシャはきれいに食べてる。
うまく言えないけど、ラーシャはたぶんマナーとかそーゆーのを学んできてるんだと思う。
サラダに飾り付けてあるような城はやっぱり食べれない。
仕方ないから肉を食べてサラダはあまり崩さないようにしよう。
あ、こーゆーお肉・・・・・・すごい久しぶりだ。
もう少し調味料がほしいところだけど、まあおいしいからいいや。
「・・・・・・なんで皆サラダは食べないのよ・・・・・・サラダ食べてるのあたしだけじゃない。そんなにひどい味だと思われてるの?」
ちょっと拗ねたように言うラーシャが何故だか可愛かった。
「い、いや!そんなことはないよ!ねぇ、ダルキリ!?」
「俺は野菜より肉のが好きだ。」
肉に噛り付きながらダルキリは言う。
「僕は・・・・・・ただ、その、お城を崩してしまいそうでもったいないなぁ・・・・・・と。」
「ならあたしがよそうわよ、お皿かして。」
ラーシャはきれいに野菜を持ってくれた。
向こうの形はたいして変わらないのに僕のお皿に少しだけ移ってきたみないな彩りだ。
食べてみたらおいしかった。
サラダにクラムルグイルはどうなのかと思ったけど、へぇ、そうか・・・・・・野菜に果物ってありなんだ。
「イリュースト?もしかしてあまり美味しくないとか言わないわよね?」
僕はあわてて首を横に振った。
「まさか!おいしいよ。ただ、サラダに果物ってあうんだなぁって。」
「何、あなた・・・・・・そんなことも知らなかったの?クラムルグイルの酸味とほのかな甘さは生野菜によくあうのよ?何より、フルーツの香っていい匂いじゃない?だから見て、食べて、香りでも楽しむのよ。」
ラーシャにとって生野菜サラダに果物というのは常識だったらしい・・・・・・本当にラーシャの常識って、どこの常識なんだろう。
一般人の常識じゃないよなぁ・・・・・・。
もしかして結構貴族とかいうそういう類?
そしたらなんでラーシャが王様に手配を出されているのかが分かるかもしれない。
王族関係者なら王様の近くにいるからお怒りも買いやすいかも。
「ラーシャ、ラーシャってさ、もしかして王族関係者?」
ピクリとラーシャが反応して僕を睨んだ。
あれ?もしかして王って出るだけで嫌なのかな?
「何で?」
「いや、貴族とかだったら納得出来ることが多いから。」
「ふーん?あたしが貴族じゃないかって?」
ラーシャはまたサラダを食べ始めた。
「う・・・・・・うん。」
「違うわよ。」
あっさりと否定された。
じゃあラーシャはいったい何者なんだろう?
闇商人との取引にも慣れてて、いや、取引自体がうまくて、脅しが妙に怖くて、そのくせ自然体で人を説得できてしまうそんな人格をもつ人間・・・・・・。
というか、闇商人自体僕はビビッてたのにラーシャはなんでびびりもしなかったんだろう。
やっぱり謎が多すぎるよ、ラーシャ・・・・・・。
それから夕飯がすんでも僕は考え込んでいた。
「何人のことじろじろ見てるのよ?」
「な、なんでもない!」
「何でもないならあんまり見ないでよ。追われてるみたいで気が気じゃないわ。」
「追われてる?」
「そうよ、常に視線が張りついてる感じ。」
「ああ・・・・・そっか・・・・・・ごめん。」
僕は目を伏せた。
「別に良いわ。それよりダルキリ、この家にはそれぞれの個室とベッドはあるんでしょうね?」
「ああ、一応、ラーシャが寝てた場所に一つと、向こうの一部屋に2つのベッドが。」
「決まりね、あなた達二人は向こうよ。」
『ええ!?』
ダルキリと僕は声をあげた。
嫌な訳じゃない、自然な成り行きなのもわかってる。
でもダルキリと一緒だったらうるさくて寝れなさそうだ。
それよりもダルキリだ。何で声をあげる必要があるんだろう?
僕はそこまでうるさくないし、寝相も悪くない。
はずなのだ。
「ええ!?って・・・・・・当然でしょ?」
「わかってるよ。でも、ダルキリはうるさそうじゃないか。」
「何でだよ?寧ろ、一つのベッドで俺と一緒に寝よーぜラーシャ。男二人なんてむさ苦しいじゃないか。」
僕とダルキリはこれまた同時に言って、何を言ってるんだかわからなくなった。
「あんまり聞き取れなかったけど・・・・・・ダルキリ、あなたの言ったことはなんとなくわかったわ・・・・・・。」
ダルキリは変なポーズを決めている。
「お?じゃあ・・・・・・。」
「お休みなさい!永遠に!」
ゴンッと鈍い音がして、ラーシャのこぶしでダルキリはしゃがみこんだ。
「いってぇえええ!!」
「いてえ、じゃないわよ・・・・・・この石頭・・・・・・あたしまで痛いじゃない・・・・・・。」
ラーシャはそうつぶややきながら手を振っていた。
「イリューストはまあ、災難だけど我慢して。あたしは寝るわ。お休み。いい?出発は明日のお昼だからね?」
そう言うとラーシャは髪の毛を束ねていた紐を振りほどいて部屋へと向かっていった。
んで、僕は結局・・・・・・。
「ンゴォ・・・・・・グゥウウウ・・・・・・。」
うるさいよ!ダルキリ!
眠れやしないじゃないか!
しかもさっきっから何回毛布を掛けなおしてもこっちに蹴り飛ばしてくるし!
バサッと布が飛んできた。
あ!また!これて17回目だ!もういい!
僕は枕で自分の顔を挟むとダルキリに背を向けた。
それから僕はいつ寝たのか、覚えていない――…‥。
作「ラーシャ!ラーシャ!!」
ラ「何よ、今回はイリューストのばんでしょ?」
作「それより、クラムルグイルの説明をして!」
ラ「説明も何も……果物よ。」
作「イリュもいい加減いじけてないで出て来い!!」
イ「僕のばんのはずなのに……。」
作「うるさい、ウザイ、泣くな!」
イ「酷い!!」
ラ「まぁまぁ、落ち着きなさいよ二人とも。」
作「で?クラムルルグイルは?」
ラ「あなたの世界にないの?」
作「ありません。」
イ「あれって、果物だけど熟してないと成分が違うのか酷い味だよね……。」
ラ「そうそう、渋いし、舌に火がついたみたいにまずいわ。一口知っておくべきだろうって食べさせられた時があって、あたしが小さかったこともあったから大泣きしたわ。」
イ「そうなんだ。僕は食べる勇気すらなかったよ。だってリュラが大泣きしてるものなんて恐ろしすぎて口にすらできないよ。」
ラ「あら、また出たわね。リュラ。本当に好きだったのね。」
イ「だから違うってば!!リュラは僕の幼馴染で、家族みたいな人なんだよ!!」
ラ「そんなにあせらなくてもいいじゃない……。」
作「はいはいは~い、ここで今回はストップ!!では、読者の皆様、ありがとうございました。」