ラーシャSide 実感
あたしの切った野菜を見てダルキリが笑いだし、「うん・・・・・・本当にひどいかも。」と、イリューストまでそんなことを言い出した。
「ちょっと!ふたりして笑いすぎよ!あたし・・・・・・獣は切り刻む訓練を受けてたけど、野菜を切り刻む訓練は受けてないのよ!」
そうよ、あたしは、はじめから料理担当じゃないんだから!
するとダルキリもイリューストも笑いだした。
「は!ハーハッハッハッ!野菜を切り刻む訓練を受けてない!?そりゃ誰も訓練なんか受けてねーよ!やべぇ、腹痛い!ちょっとラーシャ!あんま笑わせんなよ!苦しくなってきた!ゲホゲホ!」
え?訓練を受けるんじゃないの?
だってコックになる人達とかは訓練を受けて立派な料理人になるんでしょ?
もしかしてあたし・・・・・・間違ってる!?
「訓練はきっと受けてないよ?でもラーシャって案外基本的なところ、抜けてるんだね!」
イリューストはクスクスと笑いながらあたしを見る。
「だから笑いすぎよ!ふたりして人のことバカにして!もー!!」
あれ?あたし、結構無知!?
井の中の蛙状態!?
「わー!?ラーシャ!腕振り上げないで!危ない!危ないからー!」
包丁を持ちながらイリューストはあたしに注意した。
そんなあたしたちを見て相変わらずゲラゲラとお腹を抱えて笑っているのが・・・・・・ダルキリ!
「ダァ・ルゥ・キィ・リィ~?」
あたしが目を光らせるようにして睨むとダルキリは後ろを向いてから声をあげた。
「うぉっ!?肉が!肉の一部が!焦げた!なんたること!これで食えない部分ができちまった!」
部屋のなかの匂いを嗅ぐとたしかになんか焦げ臭い。
「お肉の担当はあなたでしょ!あたしのことさんざん笑ったんだからちゃんと上手に焼きなさいよね!」
「それって、無茶苦茶じゃねーか!?」
男二人がちょっと狭い台所で料理をしているっていう光景も、もっと男臭いというか、暑苦しいというか、そういったものだと思ってたけど案外悪くないわね。
特にイリューストがダルキリみたいなタイプじゃないからよけい良いのかしら?
こんなこと言ったらイリューストに怒られちゃうわね。
「ラーシャ?野菜、切ったよ?」
「え!本当?早いわね!じゃあついでにここにある果物むきとかもお願いできる?」
「クラムルグイル(外見はオレンジで、味はさっぱりとしたリンゴ風の甘味とサイパンレモンのような刺激の少ない酸っぱさが特徴的)?」
「そうそう!それ、皮は渋いし苦いし、食べれたもんじゃないけど、サラダに少しかけるとすごくおいしくなるのよ?たぶんお肉にもあうわね。」
「へぇー。」
「イリューストが皮剥いてる間にあたしは盛り付けしてるから!」
「盛り付けはちゃんとできるんだよなぁ?ラーシャさん?」
思いっきりバカにしたような目でダルキリに見られ、お皿をぶんどると野菜を掴んだ。
「バカにしないでよ!?」
全く、こんなにバカにされたのは初めてよ!
彩りは・・・・・・こうでいいかしら・・・・・・いや、こうね・・・・・・やっているうちに火が点いて思わずすごく凝ったものにしてしまった。
うん、でも大丈夫。
ただのサラダよ。
すごく美味しそうに見えるだけ。
あと、スティック風に切った野菜が城の形を立体型にかたどられているだけよ。
えぇ、それだけ!
「ラーシャ・・・・・・これ・・・・・・どうやって作ったの?」
イリューストが驚いてるわね。
「ちょっとね。本当にちょっとやっただけよ。」
嘘よ、火が点いてとまらなくなっただけ。
「ラーシャって、手先は案外器用なんだね・・・・・・。」
「案外って何よ!案外って!」
「だって・・・・・・。」
そういいかけてイリューストはあたしが巻いた包帯とダルキリを見た。
「なぁ?」
ダルキリもうなずいている。
何よ!あたしが不器用だとでも言いたいの!?
「言っておきますけどね!あたしはお花も、美術とかも、ちゃんとやってたんだから手の繊細さとか器用さには結構自信があるのよ!?」
「ええー。」
ダルキリはブーイングをしたが、イリューストは何かを考え込んでしまった。
「イリュースト?イリュースト!?」
「え、あ、何?」
「何?じゃないわよ!あなたまであたしを不器用扱いする気!?」
するとイリューストはあわてふためき始めた。
「ちが!ただ、確かにナイフは綺麗に手入れされてたなって思って!」
あ・・・・・・ナイフの事・・・・・・ちゃんと見てたんだ・・・・・・あれ、ちゃんと手入れしてないと水かびとかすぐについちゃうのよね・・・・・・。
「・・・・・・そうよ、包帯とかその他もろもろは、慣れてないだけよ!」
あたしは思わず顔を剃らしてからハッとした。
「ダルキリ!お肉!また焦げるわよ!?」
「うぉっ!?」
ダルキリはあわてて火からお肉を外した。
もうずいぶんと焦げていた。
「うわぁ・・・・・・ガンになりそうね・・・・・・。」
真っ黒になった部分を指差しながら言ったらイリューストが驚いた顔であたしを見てから頷いた。
どうやらイリューストも同じ事を思っていたらしい。
「うるせぇ・・・・・・こーゆーのは削れば良いんだよ!ほら!」
ダルキリは自慢気に焦げた部分を切り離した。
「それ・・・・・・あなたが食べるのよね?」
「それ・・・・・・ダルキリが食べるの?」
イリューストとあたしの声が重なって思わずあたしはイリューストを見た。
イリューストもあたしを見ている。
思わず笑ってしまった。
だって、なんだか楽しくて。
それに嬉しかったのよ・・・・・・仲間っていいなぁって再実感できたわ。
「た、食べるわけねーだろ!?二人して笑うなよな!」
「冗談よ、ダルキリ!そんなにムキにならないでったら!」
「え!?冗談だったの!?僕、かなり本気だったんだけど!」
「あはは!やだ、イリューストったら!二人ともおかしすぎよ!」
いつぶりかしら、こんなにお腹を抱えて笑ったのは――…‥。
もう覚えてないわ。
いつ“心から”笑ったかなんて。
作「仲良いね~ラーシャ?」
ラ「そう仕向けてるのはどちら様なのかしら?」
作「さぁ?どちら様でしょう?」
ラ「約束は守ってくれてるみたいね。」
作「ああ、女?」
ラ「そういえば、イリューストが泣いてたわ。前回自分はつまらないっていわれた~って。」
作「そお?んじゃ呼ぶ?作者はこれから中性モードに入るよ?」
ラ「中性って……。」
作「イリュースト?」
イ「いいんだ、いいんだ、どうせボクなんか……。」
ダ「なんで俺はよばねーんだよ!?」
作「うわ!乱入者!イリューストは……うっぜぇ~!!」
ラ「ちょっと!言葉遣い荒いわよ!」
作「ま、気にすんな!」
ダ「な!?な!?俺Sideは!?」
作「書くってば、いつか……だけどな!」
ダ「いつだよ!?」
作「さぁ~?じゃあ今回はココまでです!」
ダ「あ、おい!こら!はぐらかすなよ~!!」