イリューストSide 脅し?
ラーシャとダルキリは二人で出ていってしまった。
これじゃまるで僕だけがのけ者みたいだ・・・・・・。
いったい僕が何をしたと言うんだろう・・・・・・。
ため息をついてラーシャが寝ていたベッドに腰掛けた。
そう言えばよくラーシャも僕の目を覗き込んでたなぁ・・・・・・それにダルキリも・・・・・・目がキラキラしてるって・・・・・・。
窓に移っている自分を見てみても、別に何もない。
僕の目がおかしいのかな?
いや、僕の目の中?
どっちにしろラーシャが隠し事してる事が増えたって事だよな。
偽名ではないって言ってたラーシャは決して僕をまっすぐ見ようとしなかった。
それどころか寂しそうにうつむくなんて・・・・・・。
僕に何ができるんだろう。
弱くて何もできない今の僕に・・・・・・・。
ガチャリと音がして驚いて振り向くと疲れ切った顔をしているラーシャと何故かニコニコしているダルキリが入ってきた。
・・・・・・じゃなくて!ラーシャ、傷は!?
「ラーシャ!立ってて大丈夫!?」
「え?ああ、問題ないわよ。これくらい。」
「これくらい、でさっきも倒れたんだろ!?」
思わず肩を掴んで、ラーシャの顔が歪んでから自分が傷に触れていることを知った。
「あ、ごめん・・・・・・。」
パッと手を離すとラーシャが笑った。
「心配性ね!問題ないってば!あたしまで参っちゃうじゃない、そんな辛気臭い顔しないでよ!」
辛気臭い・・・・・・僕、そんな顔してたのかな?
自分の顔に触ってみるけど、わからない。
わかるはずない。
何してるんだ・・・・・・僕・・・・・・これじゃ単なるバカじゃないか・・・・・・。
「イリュースト?」
呼ばれてラーシャを見た。
「・・・・・・やっぱり・・・・・・。」
その先に何か言い掛けてラーシャは口を閉じてしまった。
「やっぱり、何?」
「あ、ううん。やっぱりあんまり元気ないなーって。もしかして・・・・・・嫌なことでも思い出してた?」
「いや、別に・・・・・・少しだけ、考え込んでただけだよ。」
ラーシャは人の感情を察知するのが早い。
ダルキリとは大違いだ・・・・・・。
僕・・・・・・今でもダルキリにたくさん突っ込みたいよ?
まず、ラーシャの後ろで僕をニヤニヤしながら見るのはやめろ!
それと、やることがなくてつっ立ってるなら部屋散らかしっぱなしにしてないで片付けたほうが良いと思う!
それに大剣も荷物もまだ出発しないんだから持つ必要も背負う必要もないよね!?
なにより何故ドアを開けっ放しにする!?
だけど、全部突っ込んだら僕は相当細かくてめんどくさい奴に思われそうだし、やめておこう。
部屋は僕だって汚かったしね・・・・・・・本とか辞書とか紙とかで埋もれてた。
何かを推理することが大好きで、そんな引きこもりがちな僕をよくリュラが怒って外に連れ出してたな・・・・・・ねぇ、リュラやっぱりわかんないよ。
どうして僕は狙われてるの?
どうしてリュラは僕の身代わりになんかなったの?
どうして町は滅んだの?
どうして僕は今ここにいるの?
どうしてみんな居なくなったのに僕は生きてるの?
「・・・・・・リュースト・・・・・・イリュースト・・・・・・イリューストってば!ねえ!?」
ハッとした。
そこにはいつもより大きく目を見開いてるラーシャと呆れたように僕を見ているダルキリがいた。
「え?何?」
「何って・・・・・・あなた・・・・・・自分の手のひら見てみなさいよ・・・・・・。」
言われて見てみたら驚いた。
「ギャ―――――!?血が!血が!?」
手に爪が食い込んでいたのか、血が滴るほどではないものの、軽く出血を起こしていた。
ダルキリが僕を見てちょっと笑うとすぐに包帯と消毒液を持ってきてくれた。
「なんで笑うんだよぉ・・・・・・。」
「なんでって、自分でやっといてギャ―――――とか叫ぶ奴珍しいと俺は思うぜ?」
そうかもしれないけど・・・・・・地味に痛いんだよ!傷痕ー!
「イテッ!」
「少し我慢してろ。」
ダルキリはそういうと素早く僕の手のひらに包帯を巻いた。
ダルキリもたくさん怪我をしたのだろうか?じゃなきゃこんなに早々と巻けないよなぁ・・・・・・。
「あ、あの、ありがとう。」
ダルキリにお礼を言うのはこれで二度目だろうか?
何故かあまりダルキリにお礼を言いたくなかった。
それが“敗北”を表すようで。
ああ、僕はどこまで女々しいんだろう。
わかってる。
きっと僕は僕のないものを持ってるダルキリが羨ましいんだ。
強さも明るさも、顔立ちも。
ダルキリはいいやつだと本当はわかってるんだ。
でもそれをどこかで認めたくない僕がお礼を言うことさえ拒んで、ダルキリを受け入れることは“敗北”だと思っている。
本当は全部、わかってるんだ。
でも、何もわからなくなる・・・・・・。
何もかもがたまにすごくわからなくなるんだ。
どうして僕は旅をしているのかとか、どうして僕だけ生き残ったのかとか・・・・・・全部全部、考えだしたらキリがなくなって何もわからなくなる。
ダルキリを拒む理由は特にないはずなんだ・・・・・・。
「イリュースト!」
ラーシャに呼ばれて横を見た。
「え?」
「え?じゃないわよ!あなた、また・・・・・・今度は反対の手だけど・・・・・・握り締めてたわよ?」
ラーシャがそっと僕の左手に触れた。
僕が手を開くとそこには爪の後がぎっしり。
うわぁ・・・・・・・自分でやっといてあれだけど、引くわ・・・・・・なんでここまで痛々しいのに僕は気付かないんだろう。
「イリューストの事・・・・・・また一つ知ったわ・・・・・・。」
ラーシャが僕の手のひらを見ながら呟いた。
「え?」
「あなた、嫌なことがあると手のひらを握り締めちゃうのよ。もしかしたらって思ってたけど、確信したわ・・・・・・ダルキリ、包帯あたしに貸してくれない?」
「え?あ、別にかまわねーけど、何する気だ?」
ダルキリから渡された包帯を受け取るとラーシャは僕の左手にも包帯を巻き付け始めた。
「え?そっちは怪我は・・・・・・してないよ?」
「クセで手を痛めてほしくないのよ。とくにあなたは傷が多すぎるもの・・・・・・。」
ラーシャをガン見していたらいつの間にかそれが終わったらしく、ダルキリがラーシャと僕を見てから笑った。
「ちょ、おまえ・・・・・・そりゃないだろ!」
「う、うるさいわね!包帯なんて自分で巻かないじゃない!」
「え?自分で巻くもんだろ?包帯は。」
「巻かないわよ!」
え?何のことだろう?
僕は左手を見た。
ぐちゃぐちゃだった。
今にもほどけそうだ。
右手の方が明らかに綺麗だ。
やっぱり経験・・・・・・というより、傷ができた分の差なのだろうか。
ダルキリの方がラーシャよりも包帯の巻き方が綺麗なんて・・・・・・。
「ぷ・・・・・・ははっ。」
思わず笑ったら赤面しているラーシャに睨まれた。
「なんでイリューストまで笑うのよ!言っておくけど!あなたのためにしたことよ!?これは“厚意”なのよ!?思いやりとか、そういう意味での“厚意”を笑うとか失礼にも程があるわよ!?ちょっと、イリュースト聞いてるの!?」
「はは・・・・・・聞いてるよ、ごめんごめん・・・・・・ありがとう。うれしいよ。ラーシャがそこまで僕を心配してくれてるって知れて。」
「な、ばっかじゃないの!?な、仲間なんだから心配するのは当然じゃない!」
そう言って赤面したままラーシャは腕を組むとそっぽを向いてしまった。
まるですねた子供みたいだ・・・・・・と、クスリと笑った。
さっきまでの寂しい感じはウソみたいだ。
「ラブラブなんだなぁ・・・・・・。」
いきなりダルキリが出てきてそう言ったので僕は吹き出してから赤面した。
「ち、ちが!何言ってるんだよ!」
「そうよ!どうしてあたしがイリューストとそ、その・・・・・・ラブラブというか、カップルって言うの?とにかく!そーゆーのにならなくちゃいけないのよ!」
ラーシャ・・・・・・そんなに強く否定しなくたって・・・・・・ハァ。
「ふーん?じゃ、俺とラブラブする?」
ダルキリはそういってラーシャの肩をいきなり抱いた。
「ちょっと、やめなさいよ、変態。」
ラーシャが呆れた顔をしてダルキリを手で押したがダルキリは何ともなさそうに笑っている。
ラーシャは目を見開いてから本当に強く押したらしくやっと、みたいな顔でダルキリから離れた。
そしてやっぱりナイフをダルキリの首に突き付けながら言った。
「変な気起こしてみなさい?いくら力では男の方が勝とはいえ、このナイフがあなたの大事な場所か、首を切り裂くことになるわよ?折り畳みとはいえ、切れ味だけは抜群なの・・・・・・なにより、毎日手入れをしているしね・・・・・・。」
不適にニヤリとラーシャが笑う。
うん、ダルキリの気持ち、今ならすごくよくわかるよ。
すっごい怖いよね!?
ダルキリの顔から少しだけ血の気がなくなる。
でもニコリと笑ってダルキリは言った。
「いいのかな?そんな事言って・・・・・・後ろがら空きだぜ?」
すると一瞬でラーシャはダルキリに抱き締められる形で動けなくされていた。
後ろに回されているラーシャとダルキリの手、ナイフを持っているほうはちゃんと上にあがっているし、足もラーシャの方足が完璧にダルキリの足の間に挟まっていてラーシャはジタバダとダルキリの足を踏もうと頑張っていた。
顔も顎が肩に引っ掛かっているような状態でラーシャは本当に攻撃のすべを全て失っていた。
噛むことも、叩くことも、蹴ることも、唯一望みはナイフの長さだけ。
もしかしたら相手を傷つけられるかもしれないけど今のラーシャじゃ無理だ。
でも、これには欠点がある。
それは、掴んだ相手も押さえ込まれた相手も、それ以上動けないって事だ。
「おーい、イリュースト、ナイフ取って。俺たぶんこのままだとマジで首にナイフ刺されちゃうから!」
「え?あ、うん。」
「ちょ、卑怯よ!」
ラーシャがわめき始めた。
ナイフは案外簡単にラーシャの手を離れた。
たぶん上にあげられてるから血の巡りが悪くなって痺れてきてるんだろうと思う。
するとダルキリはパッとラーシャを離した。
「な?男一人ならその脅しも通じるけど、男二人だったらどーするんだよ?」
笑いながら言うダルキリのみぞおちに正確にラーシャのパンチが決まる。
「最低!変態ね!だいたいイリューストにあたしを襲う勇気なんかありはしないわよ!」
僕はそう言うラーシャの後ろでコクコクと何度か頷いていた。
「イリューストも、あたしのナイフ、返して。」
僕に向かって手のひらを突き出したラーシャを見ると・・・・・・怖いっ!?
何!?この殺気に満ちた目は!?
僕はナイフを折り畳んで返した。
どうやら毎日手入れをしているというのはデマではないらしい。
刃も持ち手の部分のシルバーも新品同様に輝いている。
ラーシャはナイフを受け取るとそのまま部屋を出ていった。
作「うっす。」
イ「ラーシャがこわいぃ~。それもこれも、ダルキリのせいだからな!」
ダ「俺?何でだよ?あぶね~よって教えただけじゃん。」
イ「そんなんしなくていいよ!ラーシャが不機嫌になると怖いんだぞ!ダルキリはまだ知らないかもしれないけど……。」
作「おい、作者を無視するたぁ、ずいぶんと良い根性してるじゃねーか。」
(ゲンコツ二発。)
ダ&イ『っぅ~~!?』
作「今、ラーシャにもやられた……とか思っただろ?」
ラ「呼んだ?」
作「ううん、別に呼んでないよ。」
ラ「キャラ、変えたの?あたしはそのほうがいいわ。女仲間ができたみたいで。」
作「ああ、そう?別に変えたつもりはないんだけどちょっと声のトーン上げめに言ったからかな?」
ラ「そんなのココじゃわからないでしょ?」
作「まったくもってその通り。今回はここまで。」
ラ「あたし出てきたばっかりよ!?」
作「だって、話すこともうないし。では!ありがとうございました。」