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Eyes of diamond and Escape  作者: 空と色
11/75

イリューストSide  無茶

ラーシャが後ろを向いた瞬間に魔物に食い付かれていた。

「ラーシャッ!!」

最初の獣より強い。

僕にもわかる。

ラーシャは食い付かれて、ブンブン振り回されると壁に叩きつけられた。

「っ・・・・・・ぅ・・・・・・。」

息はしてる。

でも意識がないみたいだ。

立とうとはしない。

「やめろ・・・・・・。」

それでも魔物はラーシャに食い付こうとしている。

僕じゃ何もできない。

武器の使い方もよくわからない。

でも体が動いていた。

「やめろぉぉおおお!!」

パチンと小さな音がしたと思うと、僕は“僕”じゃなくなった。

武器をやたらめたらに振り回し、敵を切っていた。

自分で自分が制御できない。

これじゃまるで僕のほうが獣だ。

ラーシャを片腕に抱き寄せて、荒れ狂っていた。

「大丈夫か!?って、うぉっ!?なんだここ!?」

誰かオレンジ色の髪の毛をした人が走ってきて、敵をどんどん倒していってくれた。

そして、ラーシャを手当てしてくれた。

その間、僕は何もできなかった。

自分が自分じゃないみたいで。

だから助けてもらった人にまだお礼も言っていない。

「大丈夫。鎧のおかげで傷は深くないよ。おまえも大丈夫か?」

「あ、ああ。ありがとう・・・・・・僕は・・・・・・僕は何をしてた?」

頭を抱え込む僕をオレンジの髪の毛に紫色の目の男の人が見ていた。

「本当に大丈夫か?」

あれ?僕と同い年くらいかな?

「大丈夫・・・・・・たぶん、大丈夫。」

「いきなり声が聞こえたと思ったらあんな道があるなんて、ここ生まれだけど俺、今まで全然知らなかったよ。俺、ダルキリ・サンダー。お前は?」

にこやかに差し伸べられた手と彼を交互に見ながら僕も同じように挨拶した。

「僕はアルバン・イリュースト。イリューストとかイリュって呼ばれて・・・・・・たよ。」

「へぇ、異国名か。俺はダルキリって名前なんだ。サンダーはここにはいっぱいいるしな。」

人見知りのしない男前の性格。

しかもイケメン・・・・・・どれも僕にはないな・・・・・・。

するとダルキリは顔をしかめた。

「人の顔見てため息つくなよー。」

「え?あぁ、ごめん。」

「まあいいや。な、あの子、お前のなんなの?」

やたら目を輝かせて僕を見るダルキリに、あの子とは何か理解できずに少し考え込んだ。

「・・・・・・ああ、ラーシャ?ラーシャは・・・・・・仲間だよ。」

「ラーシャ?ラーシャって言うのか。ふーん。で?仲間だけ?んなわけねーだろあんなにむちゃくちゃになってたんだから。」

するとダルキリは僕の真似をした。

「え。ああ、ごめん。僕、武器類全然使えないんだ。むちゃくちゃだったよね、怪我しなかった?」

「俺は全然・・・・・・おまえ、ずいぶん女みたいなこと言うなぁ。」

グサッと僕の胸に矢印が刺さった。

女みたいなこと・・・・・・女みたいなこと・・・・・・女みたいなこと・・・・・・。

「ぼ、僕は男だ・・・・・・!」

「あ、ああ、わりいわりい!」

ゲラゲラ笑うダルキリは絶対“悪い”なんて思ってないだろう。

「ん・・・・・・んん・・・・・・。」

「ラーシャッ!?」

僕は思わずラーシャに駆け寄った。

ラーシャは半目を開けてから飛び起きて構えようとした。

「魔物ッ!魔物は!?あれ?剣に・・・・・・あたしの鎧は?ッ!?」

辺りをキョロキョロした後、ラーシャは肩を押さえ、蹲った。

「ハイハイ、元気なのはいいけど、まだ寝てような。鎧と剣はここ。」

ダルキリはそっとラーシャを横にして、上ぶとんをかけた。

なんか、慣れてるって感じだ。

「ここは・・・・・・どこなの?」

「俺んちだよ。」

ダルキリが微笑んだ。

僕はハッとして成り行きを話した。

するとラーシャはすこし安心したように微笑んで「そう、イリューストは怪我しなかったみたいね。よかった。」と言った。

よくないよ・・・・・・よくないだろっ!

僕よりラーシャの方が汚しちゃダメだろっ・・・・・・!

静かに奥歯を強く噛み締めた。

「で・・・・・・ダルキリ・・・・・・さん?だったかしら。あたしはラーシャ、助けてくれてありがとう。早速で悪いんだけど、この国のことについて教えてくれない?」

「ダルキリでいいよ、ラーシャ。ここは火を司る国、ビィバルハ。まぁ、司るって言っても簡単に言っちゃえば魔法・・・・・・みたいなもんだよな。俺は大剣使いなんだけど、ラーシャも見たところ剣使いだよな?」

「いいえ、あたしは基本的にいろんな武器が使えるの。だから剣使いとか決められたような強くなれる武器はあたしにはない。」

「ふーん。色々か・・・・・・俺の親友もそうなんだ。男ならやっぱ大剣だろ!?おっと・・・・・・これは言いすぎかな。」

話し合う二人を見ていて、なんだか悔しいくらいお似合いだと思った。

美形同士で、僕・・・・・・お邪魔かな。

ズズズッと後ろに下がるとラーシャに腕を捕まれた。

「ごめんなさい、少しだけイリューストと話がしたいんだけど・・・・・・外してもらえるかしら?」

「ああ、うん、いいぜ!」

ダルキリはあっさりと出ていった。

「ラーシャ・・・・・・傷、大丈夫?」

「大丈夫よ、それよりこの国には長くいられないかもしれない。あのダルキリとか言う男子、あたしの素性を知ってるかもしれないもの。そしたらあたしは・・・・・・。」

「また逃げなくちゃならない?タラタクフみたいに。」

「ああ、そんな名前だったかしらね、あの国・・・・・・。」

そんな名前だったかしらね・・・・・・って。

その国にすんでる人に失礼じゃないのかな。

ラーシャは起き上がると鎧を着始めた。

「ッ・・・・・・。」

肩があげるたびに痛むのか顔が歪んでいる。

「ちょ、ラーシャ!まだ寝てなくちゃダメだ!」

「コレくらいなんてことないわよ!それよりもあたしには時間がないの!一般論からすると風と炎は仲がいいのよ!手配がタラタクフに届いてるなら追っ手もすぐココへくるわ!だからココから離れなきゃ・・・・・・ここで行方を眩ませば、足止め出来るはずよ!」

鎧についている宝石がキラリと光った。

イヤリングもゆれている。

慣れた手つきで左についている止め具を付けながら腕にも足にも鎧を纏っていく。

でも、肝心の頭を守る兜がないのは何故だろう・・・・・・。

「ラーシャ、兜はどうしてないの?」

「持ってきたかったけど時間がなかったの!宝石を持ってくるのでいっぱいいっぱいだったのよ!」

同じような事聞かないでよ、みたいな口調で言われて僕は黙り込んだ。

ラーシャはあっという間にマントを纏い、部屋の扉を開いた。

「おっと・・・・・・どこ行くんだ?」

ダルキリが驚いた顔をしていた。

「手当てありがとう。でもあたし達急いでるの。だからさよなら。」

「おい、ちょっと!」

ラーシャが扉をあけたとたん、息を呑んだ。

でもすぐに早足で歩きだす。

「ラーシャ!ラーシャ!?」

「シッ!やっぱり追っ手が来てるわ・・・・・・きっと先回りしたのね。ここはタラタクフみたいに山があるわけでも谷があるわけでもない。こっちの方が早くこれるもの・・・・・・。」

黙々と歩いているといきなり知らない人に話し掛けられた。

「君たち、緑の瞳に緑の髪の毛の女の子、知らない?」

緑の瞳に緑の髪の毛?それって・・・・・・まんまラーシャじゃないか。

僕がラーシャを見るとラーシャは僕をにらんだ。

「知らない・・・・・・。」

「君は?」

ラーシャの顔を見ようとしてその人はラーシャの肩をつかんだ。

その時、ラーシャの顔が凄く歪んでいたのを見て僕は咄嗟にラーシャを抱き締めていた。

「やめてください!妹は・・・・・・日光にあたってはいけない皮膚病におかされてるんです!」

僕は相手を睨み、その人は「ちょっと顔を見せてくれるだけでいいんだけどなー」と言ってなかなか引かない。

仕方ない・・・・・・僕は今咄嗟に何て言った?

皮膚病で、日光にあたってはいけない?

それに妹って言ったっけ?

じゃあ貧しい平民って事にしよう!

「妹の顔見てどうする気ですか?日光に当たってこれ以上皮膚病が酷くなったら?そしたら僕の家はもうこれ以上お金はないんだ!それとも、妹の治療費をあなたは払ってくれるんですか!?」

リュラとの変な物語ごっこを昔やったせいでこういう唐突な発想転換も僕はできるようになっていた。

だから大きくなってからは僕がいつもリュラが嘘を吐くとき出すボロを口裏あわせて平然とまるで本当にあったかのように話していた。

「チッ・・・・・・わかったよ、悪かったな!」

その人が去っていった後、ラーシャを見るとラーシャはすこし顔を赤くして僕を睨んでいた。

「誰が妹ですって?皮膚病?ああ、それはあたしがよく赤くなるからそのイヤミなのかしら?」

「う、うわぁ!ご、ごめんなさい!違うんだ!その・・・・・・。」

僕はあわててラーシャを離した。

「・・・・・・冗談よ、あんな設定よく思いついたわね。でも太陽光の皮膚病なんて、珍しいにも程があるんじゃな・・・・・・。」

カクンと膝をついて肩を押さえ込んでしまったラーシャ。

「ラーシャ?ラーシャ!?」

「大丈夫・・・・・・大丈夫よ・・・・・・ちょっと目眩がしただけ。」

ダルキリ・・・・・・ダルキリに伝えなきゃ!

やっぱりまだ出歩いちゃいけなかったんだ!

「おいっ!」

そこに格好よくダルキリが登場した。

走り回っていたのか、息があれている。

「全く、人が止めるのも聞かずに行くからそうなるんだろ!しかも歩くのはぇえよ!この町は知り尽くしてるけど探すのに案外時間かかった!」

言われて振り返って見ると、確かにダルキリの家はない。

僕だってラーシャの早歩きに小走りになりながらついていっていた。

ダルキリはラーシャを抱き抱えると歩きだした。

僕が女ならダルキリに惚れてただろうけど、残念ながら僕は男。

正直、おいしいところを持っていくダルキリに軽く嫉妬していた。

「全く・・・・・・多分毒が回ったんだよ。一応手当ての時に毒抜きはしたけど、完璧にはできてなかったらしい。しかも最近はわけのわからない奴らがウロウロしてるんだ。」

ベッドにラーシャを横にしながらダルキリは言った。

「あたし・・・・・・行かなくちゃ・・・・・・平気よ!歩けるんだから!」

起き上がろうとしてそこをダルキリが押さえた。

「寝てなきゃダメだ!」

相当弱っているんだと僕はやっと理解した。

さっきまでの勢いはどこにもない。

ラーシャが無理していた事に気付かなかった自分が少しだけ悔しかった。

「ラーシャ・・・・・・ダルキリの言うとおりだよ。少し寝たほうがいい。ダルキリも誰が訪ねてきても僕らの事は言わないでいてくれるだろ?」

「ああ。」

ダルキリは力強く頷いた。

そのうち寝息が聞こえたと思うとラーシャがすやすやと寝ていた。

「緑の瞳に・・・・・・緑の髪の毛・・・・・・ただの可愛いけど気の強い女の子なのに、奴らなんであんなに必死に捜し回ってるんだ?この子も必死に逃げてるみたいだし・・・・・・。」

ダルキリが僕を見てたずねてきた。

「知らない。」

僕は肩をすくめた。

だってそれしかできなかった。

本人が聞いても教えてくれないんだし、第一僕らは出会ってまだ数日しか経ってない。

「知らないって、お前は彼女を守るために一緒にいるんじゃないのか?」

「そうだけど・・・・・・。」

「けど?」

ダルキリは僕を覗き込んだ。

やっぱりダルキリの瞳の色は吸い込まれそうな紫色だ。たしか、アメジストとかいう水晶と同じ色じゃないかな?なんて考えていたら顔をしかめられたので、ダルキリに事情を話した。

僕自身の話は全くしなかった。

ラーシャと出会ってからの起こったこと、ありのままの事実をさらけだした。

「・・・・・・ふぅん、そんで彼女はお前を守って、お前は彼女を庇ってるわけか。」

「まぁ、そうだけど・・・・・・あのさ、僕にはイリューストっていう名前があるんだけど・・・・・・。」

「ああ、そうだっけ?人の名前を覚えるのは苦手でさ。で?旅をしてるんだろ?」

僕は頷いた。

「じゃあ俺も仲間に入れてくれよ!」

少年のように僕よりも少し細い目を輝かせてダルキリは言った。

仲間が増えることは良いことなのだろうけど、今の僕には正直複雑だ。

一人で決めるんじゃなくてラーシャにも意見を求めなくちゃ。

「・・・・・・しばらく考えさせてくれないかな。」

するとダルキリは困ったように笑うと頭をかきむしった。

「ああ、そうだよな。そう簡単には仲間になれないか。」

ダルキリは良い奴だ。

だけど僕は何かモヤモヤするものがある。

正体はなんとなくわかっている。

彼は雑なところがあるが、二枚目だし強いということだ。

僕はどちらも生憎持ち合わせていない。一応顔はひどくはないはずだけど。

ダルキリのカリスマ性が羨ましく、妬ましいのかもしれない。

でもこれじゃまるで自分が凄く小さい人間みたいじゃないか。

いや、そうなのかもしれないけど・・・・・・。

ため息をついてラーシャのベッドのわきに腰掛けた。

どうして僕にはこう・・・・・・カリスマ性もリーダーシップ性もないのだろう。

ラーシャもダルキリもリュラも、僕のまわりの人達はそういったものを持ち合わせていた。

いや、リュラは少し違うかもしれないけど。

でも抜群のリーダーシップ性はあった。

まるでガキ大将みたいだったもんなぁ・・・・・・。

『あたしがイリュに化けて、やつらはイリュが死んだって・・・・・・思い込んでるよ。だから大丈夫、イリュは強くなれ。』

ビクリと体が動いた。

重たくなっていく体、冷えていく体温、浅くなっていく吐息、光を失っていく瞳。

意味深な言葉・・・・・・。

どうして今更・・・・・・でも、リュラ。

僕、約束するよ。

強くなる。

とりあえず・・・・・・少しでもこんなふうにラーシャを無茶させない程度には・・・・・・。



作「イ~リュ!!」

イ「うわっ!?」

作「新しい仲間じゃん、もっと嬉しそうにしなよ。」

イ「ダルキリにこと?」

作「そう!ああ、でも仲間が欲しいって言ってたのはラーシャか……。」

ラ「でも女って言ったわ!」

作「なんだよぉ、ダルキリ良い奴じゃんか。」

ラ「知らないわよ!」

作「それより!作者の世界のアメジストは紫水晶、英: amethyst)は紫色の水晶である。主に装飾用に使われる。2月の誕生石。石言葉は「誠実・心の平和・高貴」。


英語名 "amethyst" はギリシア語の amethustos(酔わせない)から派生した。アメシストを持つと酔いを防ぐはたらきがあると信じられていたことによる

ByWikipedia

っていう宝石なんだよ~。」

ラ「へぇ、ずいぶんこっちの世界とは違うのね。」

イ「たしか、意味は同じく心の平和、あと、少し違うのが不安からの開放、秘められた力って意味だったよね?」

ラ「そんなん、いちいち覚えてないわよ……じゃあ、他にも同じ名前で同じ外見なのにこの世界とは違う意味を持つ宝石があるの?」

作「ある!けど、あんまり小説(本文)にはでてこない。」

ラ「なんで?」

作「出す必要がないから。」

イ「じゃあどうして僕は豆知識がこんなに豊富なの?」

作「物知りである必要があるから。……性格上。いつかそれが武器になると作者は信じてるよ!では、ここで今回はおしまいです!」

ラ「え?ちょ、待ちなさいよ!」

イ「えぇ~?」

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