19話 組織編3 トゥースとナーナ
ディーゼルの作戦拠点では現在戦闘が生じている。作戦拠点は2階建ての構造になっていて、1階は広々とした空間で、兵士たちの休憩する場所やご飯を食べるところなど色々ある。
2階は司令室やボスの部屋などがある。
現在、兵は全員「ネリスの警戒をしろ」というトゥースの指示があったため、全員出払っている。
「待て、話を...」
そうレオナが言ってもすでに遅かった。ドーヤは剣を構え、トリーは部屋を自由に駆け回り、ハーラーはドーヤの前に立ち盾で防御し、セーナは弓で援護、ナーナは隠れている。
部屋の中であってもトリーは上手に部屋を駆け回っている。ハーラーの圧はとても凄かった。その後ろからドーヤの突きや振りがくる。
とても避けにくくさっきからよく服に当っている。
彼ら隊長の連携力が凄まじく、日頃からしっかりと鍛錬をしているのがよく分かる。
仕方ないか、とレオナは思い、反撃に出た。
殺しはしたくないから鞘を入れておこう。
両者沈黙の波が続く、この先の読めない戦況に一筋の道が現れる。
先に攻撃を仕掛けるのはドーヤであった。
「ドーヤ!!前に出過ぎるなよ?セーナの援護範囲にいろ!」
そうハーラーが大きな声でドーヤに言った。
「ああ、分かっているとも」
ドーヤが剣を振り、周囲の壁に傷がつく。
「トリー!!お前、いつまで飛んでるんだ?」
ハーラーが言った。
「は、はい!ぴ、ハーラーさまいつ攻撃すれば良いですっかぴ?とりあえずこの辺に.....」
「ちょっと!!チキンっ!ナーナに当たるってば!」
セーナが怒った。先ほど言った事を少し訂正させてほしい。連携力が凄まじいと言ったが、それはトリーを除いてである。
セーナの弓術はとても正確であった。
「ナーナ大丈夫?この戦いが終わるまであんまり、出ないでね。私たちが終わらせるから」
「うん、わかった!ナーナはセーナねえのやくそくまもる!!」
ナーナが言った。
「ナーナたそとセーナたそは可愛いっぴね」
トリーが言った。
「おいクソチキン。私の可愛い妹に何見惚れてんだ。丸焼きにするぞ!」
「怖いっぴね〜何度も言うけど僕はロr.....」
「ちょっと!チキンどこ見てるのよ!ちゃんと前見ないと.....」
「へ?ぴいっっっっ!!!!!!!」
トリーは前を見ておらず前方不注意で壁にぶつかった。
「え〜と、大丈夫?」
レオナも心配していた。
「あのクソチキン何してんのよ。あれが私たちより順位が高いのがよく分からないわ。ハーラー姉大丈夫?」
「ああ、大丈夫。少し疲労が溜まってるだけ。」
「そうだといいけど..」
「昨日、カレー食べすぎたからかもね」
「ハーラー、無理だったら言えよ。俺が交代するから」
ドーヤが言った。
この世界では、大まかに能力者と非能力者に分かれる。
能力者または、人類の場合では超越者ともいう。能力者をわかりやすくいうと、天から好かれるか否かである。能力は、生物のうちに秘められている力という立ち位置だ。
能力が開花するものもいれば、人生の最後まで能力が開花しないものもいる。能力が開花するのは100人中、1、2人いれば十分といったところであろう。
先ほど、能力は天から好かれるか否か、と言ったが、能力を与えるのは、天界ではない。他のナニカである。
そう、能力者と非能力者では越えられない壁が存在する。
立ちはだかる煙が、秋に散る葉のように視界を奪う。ディゼールの拠点が崩れ、さらに多くの煙が舞い、建物はほとんど倒壊している状態であった。
岩で作られているが頑丈かと言われるとそうでもないことだけは確かだ。煙が消え去った。
そこには倒れている4人と立ち尽くすトゥースの姿があった。
トゥースは混乱していた。しかし、そんなことは関係ない。目の前で仲間が倒れている。ドーヤやトリー、4人の隊長はほぼ無傷で倒れていた。
トゥースは正気を失っていた。銀色の輝く鞘を風の如く抜き、咄嗟に戦闘の構えに入った。それに気付いたレオナが素早く動いた。トゥースはどんな動きをしてくるか分からない。
先の4人の隊長は、時間を掛けて戦っていたから動きや習性を見抜き、すぐに気絶させることができたが、まず、先に動かれる前に武器を狙う。
トゥースの武器を破壊しようと剣をめがけてレオナは動き出した。
しかし、レオナの攻撃が当たらなかった。レオナの刀が、銀の輝きを保つ剣によって防がれていた。その剣はただの剣ではないとレオナは思った。
「能力解放 増誇鋭」
トゥースがそう言った。レオナの先ほどの違和感はトゥースの能力。増誇鋭であった。増誇鋭は能力者が持っている対象物または所有物を鋭さの増大といった能力である。また、切れ味を良くするといった単純な能力でもある。
トゥースが一歩また一歩とレオナに歩いて近づく。レオナがトゥースに話しかけてもまるで聞こえていないかのようなシカトっぷりであった。
トゥースは無意識のような状態で動いていた。
トゥースが剣を振る。その剣は冷たく、そして重い剣でもあった。崩壊している建物から太陽の光がなくなっていく。陽は落ちていき、夜を迎えようとしていた。先ほど騒いでいたネリスは静かになっていた。夕方の冷たい風がレオナに当たる。
トゥースは一旦止まった、レオナが先ほどからトゥースに声をかけているが何一つ反応がない。
突如、トゥースが叫び、レオナに襲い掛かる。今までの戦闘スタイルより、どこか雰囲気が変わっていた。レオナに向かって剣を投げ、その剣は空気を斬り壁に突き刺さり、壁に穴が開いた。無意識だとしても、戦闘スタイルに変化が大きい。
普通、無意識では通常時よりも戦闘が変化することはあるが、無意識での戦闘スタイルの変更は不可能に近い。それは、この世界の無意識は脳と体が意識があるときに、記憶している行動パターンしか引き出しが無いのだ。
レオナは少し違和感を覚えた。
トゥースの剣速が上がる。剣を縦に大きく振る。その剣はレオナには当たらなかったが、レオナの横の壁を綺麗に真っ二つにしていた。2人の戦闘によりディゼールの拠点は、跡形もなく崩れていた。レオナがトゥースの隙を見抜き、トゥースの首元に大きな蹴りを入れるが、まるで効果なし。
トゥースを倒すのは甘くないとレオナは悟った。レオナは思考する。
無意識だから痛覚とかないのか?いや、どうだろ、肉体的にはダメージを与えているのか。だとしたら限界はあるはずだ。肉体ダメージが入るならいずれ動けなくなるはず。
レオナは、気付いた。トゥースの肉体はすでに疲れ、壊れているのだと。トゥースの骨が次々に折れる音がした。明らかに限界なはずだ。しかし、トゥースは動きを止めない。
おかしい、肉体の限界はとうにきているはず。骨が折れるのは人間でなくてもかなり痛いはずだ。だがそれでも、動きを止めず俺を殺しにくる理由はなんだ。
このまま、無意識が戻れらなければどうなるのだろうか。これは、本能にトゥースが望んでいることなのか?
そうしていると、隠れていた陸番隊隊長のナーナが出てきた。ナーナは、この戦いが始まる前から姿を隠していた。
ナーナは少し驚いている様子で、周囲を見渡していた。
レオナのことを見ると、先程の戦闘のを思い出し、ナーナは怖がっていたが勇気を持って、レオナに尋ねた。
「あの...そこのお兄ちゃん.....セーナねえはどこにいるの?..」
レオナが指を指し、セーナの場所を教えた。
「大丈夫、セーナさんは寝ているだけだよ。」
「ほんと...?よかった!!!ナーナはね、セーナねえがだいすきなんだ!!!!」
ナーナとセーナがとても仲が良いんだなとレオナは思った。
ハーラーとドーヤの仲もとてもよく連携力が凄まじかった。
トーリーは仲間たちの雰囲気を良くするムードメーカー的存在。
この組織。ディゼールが1人ひとりの隊長がいなければ成り立たないものなんだとレオナは感じていた。
「お兄ちゃん、トゥースにいはどこにいるの」
「危ない!!!」
ナーナが話している途中に急にトゥースが動き出した。
「トゥースにいいた!!!!みんな寝てるから起こして遊ぼうよトゥースにい」
トゥースの動きが止まった。無意識でも仲間を認識できているのか?だとしたら、トゥースの精神はまだ生きている。この無意識をやっと踏破できるのか。
攻撃しても痛覚がないから意味は成さないし、かと言って致命傷は与えたくはない。
「どうしたのトゥースにい、いつもみたいに抱っこして!」
レオナは、また引っ掛かっていた。
「トゥースにい?どうしたの?」
その違和感の正体を。
トゥースは無意識でもナーナだと、仲間だと認識しているのなら、ナーナの言葉を理解してナーナを抱っこすることは、ナーナの言葉の意味を考えるのなら肉体に刻み込まれている行動パターンにあるはずだ。なのに、なぜ.....
「まさか........」
トゥースが大きく剣を振った。
大量の返り血がレオナの服に付着する。ナーナの右腕が数十メートル先に飛んでいった。
ナーナが悲鳴を上げる。激痛と絶望がナーナを襲う。セーナの次に慕っていたトゥースに腕が斬られた。
知能と体が子どものナーナには思考が追いつかずただただ目の前の絶望を感じることしか出来なかった。
「ナーナ!!!!」
遅かった。間に合わなかった。今、自分を責めている場合か!動け考えろ。まずは、トゥースを止め......
「禁呪 斬痕迩」
トゥースがそう言った。トゥースが先程、斬ったナーナの左腕とナーナの身体にある傷跡が内部から爆発し、ナーナの左腕とナーナ自身は破裂した。
飛び散ったナーナの骨がレオナの体に突き刺さる。




