表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/71

6. 男装準備

 ひいばあさんの葬式も終わった。

 元の時代ではセレモニーホールなどを使う事がほとんどだが、今回は昔ながらにうちの座敷でおこなわれた。

 そういえば家での葬式ってやつはすっかり見なくなった。

 本来は中学にやるはずだった、このひいばあさんの葬式で最後だった。


 2日間休んだ俺となつきは、オレンジの夕方から3日目にして学校に向かう。

 なつきとはこの世界に戻って以来、どうにも上手く噛み合わない。

 まあ彼女は婆さんの事で頭が一杯ってのもあるだろうが。

 

『そうよ!

 体は男、でも心は温かな女の人。

 彼女は、私の愛したともかは、あなたじゃないともか!』

 

 前に悲痛な表情で、拒絶したように叫んでいた彼女を思い出す。

 だからだろうか、俺の方からもつい距離を取ってしまう。

 それはそれで、この世界にとっていい事なのかもしれないけれど……

 とまれ、俺となつきの仲云々より、これからどうするかの方が大事だろう。


 今のところ俺の体の秘密を知っているのは、なつき、とん吉、うちの母。

 父ちゃんには隠せても、母親には即バレるだろうと話す事にした。

 痩せた時に少し小さくなったとはいえ、依然デカイ俺の胸。

 毎朝ごまかす手伝いと、怪しんだ時の父ちゃんへのフォローを母ちゃんに頼みたかったのだ。


 流石に俺の一存では危険なので、ちゃんとあの方の残滓ざんしに確認はとってある。

 だから今朝早い時間、母ちゃんにサラシを巻いてもらい、何とか男に見える格好で登校が出来る。

 その為に俺と母ちゃんは火葬場から帰って直ぐ、イイヅカへ買い物に行ったのだ。





「今度は中身じゃなくって、外見そとみが女の子?」


 婆さんの救助活動が悲しい結末に終わった後、バタバタ慌ただしくて誰からも女だとは気付かれなかったようだ。 

 だから次の日、ふたりだけの時、母だけに打ち明けた。

 母は驚くというより呆れているようだった。


「詳しくは言えんけど、あとひと月で元の体に戻るから。

 それまで誰にもバレちゃいけないんだよ」


「バレたら?」


「地球が割れるらしい」


「………!」


 母と話し合った結果、オーソドックスにサラシを巻くって事になった。

 急ぎ通夜、葬式ってあるから、その後にサラシ買いに行きましょ。って予定にもなった。

 それで諸々済ませて帰った後、父にイイヅカまで送らせて、ふたりで買い物となった訳だ。




「いや~ん、ともさん、こっちも着てみてぇ」


 可愛らしいフリルのついたワンピースを渡される。

 先程からもう何着袖を通したか。

 何故か俺のファッションショーになっている。


 サラシ買いに呉服屋行くんじゃなかったのかよ!

 さっきまで、葬式やってた家の奥さんだろ!

 そんな事を腹の中でブツブツ言っていたが……


「ああ、お母さん、娘とお洋服選びするのが夢だったのよ」


 目をキラキラ輝かせてそう言いながら、また別の服を見せてくる。

 そんな母を見ていたら、文句も言えなくなってしまったよ。

 そうだよな。

 昔から娘がほしかった。そう言ってたな。


 向こうの世界で、なつきママとはしゃぐ母の姿を思い出す。

 結局あっちじゃ、ろくに孝行も出来なかった。

 これくらいのサービス、お安い御用だな。


「お母さーん、どうかなあ?」


「いや~ん、ともちゃん、可愛すぎるうっ」


 ったくう、親バカだよ。

読んで頂きまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ