1. 最近どうよってオッサン臭い?
全てがオレンジ一色の濃淡のみで表現されたモノクロの世界。
秋の夕陽が、ありふれた田舎の風景を幻想的に染めていた。
これは夢だと分かりながらも、八重洲ともかはこの場所から動けない。
止まった時間に未来は無いと知りながらも、江藤なつきの微笑み、それさえ見ることが出来れば、心が少し充たされるのだ。
「ごめん、私なんだけど」
えーーっ! なんでだよう。
何で葉月なんだよう。
「何でじゃないでしょ!
あんた、私に会いたくて一杯やって寝たんでしょ」
いや、そうなんだけどさ、夢の冒頭くらいは浸りたいんだよう。
「冒頭もなにも、辺りは靄で真っ白じゃない」
乙女じゃねえなあ。
俺には見えるんだよ、思い募る彼の地が……
「いいおっさんが何言ってんのよ。
そもそも何でいつも冒頭で気取ってんのよ、気持ち悪いのよ」
気持ち悪いなんて言うな!
ほんっと、口悪いな……
もともと心の声はあんななの!
気取ってなんかないの!
大人なの!
「はい、はい。んで、何なの?」
ったく……
まあいいや。
あのさ、なつきの事なんだけどな。
修学旅行から一週間経つけど、なつきはクラスではどうだった?
学校以外は変わった様子は無いが、その、2組には俺、顔出しづらいし。
「何よそれ。ヘタレね。
クラスではいい感じよ。仲良くやってる。」
あの、帽子盗んだ4人組はどうした?
あとヘタレじゃない。
「ああ、あの4人はね、次の日のHRで、すぐに前に出てきて謝罪したわ。
何でも主犯格の子、前からともかちゃんの事、好きだったんだって。
あははは、どこがいいんだろ、こんなヘタレパイ」
おい!
何だよヘタレパイって!
まったく……
それじゃあ、俺が元凶みたいじゃないか。
「みたいじゃなくって……」
うるさい。
じゃあ、風呂で服を隠したのも、あいつらだったって?
「ん~ん、それは違うって。誰だか分からずじまい。
なつきくんは、気にしないって」
あいつはそう言うだろうね。
「過去をあれこれ詮索しないで、これから仲良くしようって」
くそ~。
挨拶の最後にあの4人組、みんなの前に土下座させて、なつきにやった事を謝らせたかったんだが。
みんな混乱しちゃってて、出来なかったんだよな~。
「あんたって本っっ当に、小者よね!
なつきくんの方がずっと大人じゃない!」
うぐっ……
「でもまあ今回の件は、あの方も何か上機嫌だったし。
私も、まあ、ちょっとはスッとした。
まあ、その……ありがとね」
おおっっデレか!
ここに来てデレかあ~。
なつきの顔でツンデレは反則だよう……
「だからツンデレ言うな! エロ爺ィー!」
お前にデレがあるという事実を知ってしまった以上、
俺はもはや、どんな悪口雑言にも耐えられる。
「バカじゃないの……」
それはそうと、これからもなつきの周囲を注意して見ててくれ。
特にあの4人組。
俺はまだあいつらを信じてはいない。
「そうね、注意しとく。
でも私は、なつきくんの見ている範囲でしか気付けないから、やっぱりあんたにも、こっそり影からでも様子を見に来てもらわないと」
そうだよな……
よし、明日にでも、2組のみんなに頭下げるよ。
堂々と顔出せるようにしておこう。
「ん、そっか。あんがとね」
てへっ。
大人だしぃ~。
「バカじゃないの」
でも、ほら、あいつ、帽子盗む時に絡んできた奴。
なんか見覚えあんだよな……
「ああ、あいつがさっき言ってた主犯格よ。
たしか珍しい名前の……何かお寺みたいな、神社みたいな」
やすみだ……燐光寺休。
「ああ、そうそう。
燐光寺も珍しいし、男の子でヤスミって珍しいじゃない?
トモカとかナツキなんてのもありますけど」
そっか。
男でもやすみなんだ……
「どうしたの? 知り合い?」
ん? んまあね。
「何よ、その奥歯になにか挟まったような言い方」
ああ、その、高校生の時のね…………
彼女だった。
「こ、この、浮気者ーーーーーっ!」
読んで頂きまして、ありがとうございます。
次話もどうか、よろしくお願いします。




