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ガルシア戦記  作者: 千山一
第3巻 親友との誓い
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第3章 他国の事務次官 No.1

「あーーー行ってよし」


事務次官はぶっきらぼうな口調で手帳を投げた。それを見たガルシアは“あっ、これ舐めてんなぁ”と思い一瞬、殴りかかろうと“ピクっ”と動いたが、船の中での誓いを思い出し踏ん張った。

“いやぁ〜俺って我慢の天才だなぁ”と、つくづく感じてしまった。


「どうも、ありがとうございました」


俺は“我慢!我慢!”と思い、顔の笑顔で引きっつるような感じだった。

“ピキッピキッ”


「ふん!無理せずに殴りゃいいのに」


俺はその声を聞いた瞬間、この世とは思えないような顔をしていたと思う。なぜなら、この事務次官は顔をこばらせていたからだ。


「な、何だよ!その顔は!」


事務次官はビビっているのか“キャンキャン”吠える。


“………”俺は無言のまま、ゆっくりと事務次官の方へ向かって歩いていた。

その瞬間!!


「グエッ!」


タックルの如く、側近の騎士達はガルシアの横腹をヒットしたのだ。それを見た、騎士たちは慌てて入口の方に走り去っていた。


「いや〜恥ずかしい所をおみせしました」


ガストンは恥ずかしそうに“ニコニコ”しながら事務次官の方へ歩み寄った。


「ったく、この件に関しては上司に報告するからな!だから、騎士は嫌なんだよ。オマエは脳筋か!?」


ガストンは誰も周囲にいない事を確認してから、そっと小さい声で呟く。


「申し訳ございません。それと上司にはちょっと言わない方向でお願いします。これは、ほんの気持ち程度ですが…」


そう言って事務次官に手渡した。その中身は分厚い札束が握り締めていた。


「…おほん、仕方ないなぁ。まぁ、この件に関しては俺も言いすぎた事もあるし、穏便に済ませてようかなぁ」


と事務次官は一人ごとのようなことを呟いてみせた。ガストンは営業スマイルで「ありがとうございます!」と笑顔をみせた。


「何をしている?さっさと行け」


事務次官はぶっきらぼうな様子で“帰れ、帰れ”のジェスチャーをした。


「ありがとうございます!」


これも又、ガストンは営業スマイルでお辞儀をした。

“営業スマイルって…いつから、こんなに上手くなったのだろうか?”

そんな自分が嫌になった。


「おい、ガルシアは今どこにいる?」


ガストンは一人呟いて歩いていると“サッ”と隣に歩み寄り返答した。


「近くの宿です。ここは騎士団長の息がかかっている所です。どんなに怒鳴り散らしても外部には決して洩らしません」


「そうか」と言ってガストンは目的地の所まで移動する。側近の男は会釈をしながら元の定位置に移動する。



ーーー数分後


「おい!起きろ!」


ガストンは寝ている(?)ところを叩き起こした。


「なんじゃ!!」


俺は鬼の形相でガストンの胸ぐらを掴んだ。それに引き換えガストンは澄ました顔でこちらを見ていた。


「あっゴメン…そういえば、事務次官はどこにいる?アイツは、懲らしめないと…」


俺は“どこにいるのか?”という気持ちで周囲を見渡す。

“ん?ここは?”


「近く宿だよ。オマエが気絶したから運んだんだよ」


ガストンは“は〜”とため息をつきながら、こちらを向いた。


「まぁ、しかしあの事務次官は最悪だったな。まぁ、よく我慢したと思うよ。何回も何回も我慢の限界を抑えたと思うし」


俺は犬のように思いっきり笑顔になった。

“俺、この人に付いていく”


「だが、最後の無言で歩み寄るのは頂けない。チクッたら、速攻クビだぞ?クビになったら、何か因縁をつけてサシル共和国と戦争になる。だから、無理難題を言ってサシル共和国へ派遣したのもそういう訳だ」


俺は人の怖さを知った。

“結局は魔物だけでなく、人なんだなぁ”


「ん?まてよ……」


俺はある事に気がついた。俺は“ダラダラ”と汗が吹き出していた。


「じゃぁ、さぁクラーケン倒した件も、皮肉を言われてブチ切れた件も、結局はチャンドラが予想した通りなんじゃ……」

「恐らくは……」


「ノーーーッ!!!」と叫びながら、俺は頭を抱えてしまった。

“結局、チャンドラに仕組まれた罠じゃねーか!クソ!ここまで来たら、何が何でも生き残ってやる!そして、明日は笑顔で観光カレーづくしだ!!!”


「おい、この国の王が言っていた皮肉ぽいヤツ、すべて言ってくれ!事前に知っていれば対処するし、我慢をするから……よし!燃えてきた!」


俺は燃えすぎるぐらい、やる気に満ちてきた。

“いまに見ていろよ!チャンドラ!我慢して、この国から帰還した時これでもか、ぐらいに踏んだくってやる!”


ガストンは感動した。たとえ、方向性が間違っても成功する道は変わらない。人の男性ガルシアが燃えていたのだ!


着いてから半日。あまりにも遅すぎる遅刻であった。

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