表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルシア戦記  作者: 千山一
第1巻 バスティアの魔族
7/186

第3章 北へ No.3

「ドカッ!」

思いっきり抱きつく。ガルシアはビックリしたのか、バランスを崩し思いっきり転倒する。


「久しぶりだな!元気してたか!」


その男はニコニコしながらこう喋りかけた。


「重いっす…ローレンス王」


何を隠そう、ローレンス王なのだ。ローレンス王は他のメンバーと違い、優しく接してくれる。けれど、前の喧嘩のことや色々の情勢のことでピリピリムードだから、どうなるか分からないと思ったが、あいも変わらずで安心した。


「あっごめん!ごめん!久しぶりだから、思わず飛びついたよ」

「本当、そうですよ。ローレンス王はこの地域のトップですから、ドーンと構えてらっしゃらないと」


「この声はまさか…」凄く嫌な声がする。そして、ガルシアは薄暗い声を凝視すると「やっぱり…」と心中で叫んだ。「マクロス・ペトロフ」だ。「マクロス・ペトロフ」とは、参謀長。実質No.2の地位がある。以前はローレン王とマクロスで対立したのだが、友情が芽生え、ローレン王の下に着くことに同意した。

ただ、ローレン王が安泰になるには手段を選ばないため、例えローレン王でも叱りつけるという困ったところがある。


「ごめん!ごめん!マクロスちゃん❤︎」


マクロスは「ギロリッ」とローレン王に向ける。ローレン王は「シュン」となった。いらんことなければ、いい頭領なのに…。


「ローレン王、何かやりたいことがあるんじゃないですか?」

「あぁ、忘れてた!ガルシア、どうしたいんだ?」


ガルシアは意を決して応えた。


「ローレン王、ローマノ王国から脱出できるよう許可書が欲しい!」

「ダメです」


「えええー!」と一同、アングリの顔でマクロスを見た。ローレン王が口に出す前にマクロスが言い放ったのだ。マジかよ!ホンマ、ムカつくわ!だいたい、ちょっとした発言でも口に出したりするもんな!


「何がダメなんだよ!」


ガルシアは声を荒げた。


「だいだい、逃亡しておいてよくそんな顔ができますね。本来なら、打首、死刑ですよ?まぁ、ローレン王は寛大なお方だ。まずは監視役を付けて平の一兵卒から始めてもらいましょうか?」


ぐっの音も出てこない。考えてみりゃ、そりゃそうだよな。喧嘩で感情的になり、逃亡…そして、困ったといって峠のキバに再び逃げ込んで泣き寝入り…第三者から見れば情けないよな…。


「分かったよ。では、何をすれば良い?」

「ちょっと待ってよ!ガルシアだぜ?そりゃ、あんまりだ!」


ローレン王はマクロスに食ってかかってきた。うーん、立場が逆転しているような…。


「ガルシアだからです!ローレン王!だから、甘いんです!…けれど、ローレン王の頼みだから、2週間、2週間様子を見ましょう!」


ガルシアは「コクリッ」と頷く。だいたい、初めてから許す気ないくせに。まぁ、1か月ぐらいの辛抱だ。1か月もすりゃ、ほとぼり冷めてドラコもビビリも緩和するだろう。そうすれば、峠のキバから脱出するしかない…ドラコが鍵になるのだが…


それから言うもののマクロスの傘下に入った。マクロスの傘下に入ったからには、すぐに暗殺することが出来ない(処刑が目に見えているため)けれど、それは安心だが、マクロスの傘下に入ったからには、馬車馬のように働いた。正にブラックである。

最初は冷たい目線が多かったが、あまりにもブラックすぎて、冷たい目線は少なくなっていった、むしろ、同情の方が多くなっていったのだ。

しかし、運命のイタズラなのか、ちょうど脱出の日と決めた一週間前。突然、首都のバスティア軍から急に訪問した。その軍は少人数で60名。ただし、友好的でなく敵対関係があるように見えた。

そんなことはつゆ知らず、俺は来賓の掃除やら、運搬、整備な怒涛の如く動いていた。


「ガシャンガシャン」

「?」


俺は「うん?」と思い手を止める。「バタン!」と激しくドアを開けると、焦って顔を見て「こいつは、ただもんじゃないなぁ…」と瞬時に察した。


「とりあえず、裏の部屋へ俺が言うまで動くんじゃないぞ!」


一人の兵士が焦った顔で奥に引っ張られた。そして、すぐに奥のドアを閉める。そして、何分間かたった頃だろうか。ゾロゾロと大人数で来賓の間に入ってきた。


「ここには、ガルシア、ベルの両方の容疑者が入ったという情報があるのだが?それを渡してもらおうか?」


俺は隙間から様子を伺う。

その隊長みたいなのが、髪が金髪すらっとした顔立ちだ。


「えっ?入った形跡がないのですが?けれど、もしかしたら密入国で入ったのなら、全力で探しましょう」


ローレン王はとぼける。流石、ローレン王!嘘が上手い…じゃなかった。嘘がバレているのだ…何故なら、完全に目が泳いでいるのだ!


「分かました。もし、ガルシア、ベル容疑者が居たら、すぐに捕まえて下さい。くれぐれもバスティアに戻らないように…もとい、捕まえて下さい。では、この辺で」


隊長はこちらの目線をガン見ながら言って帰っていった。ドンドン離れて行く。やがて、何も聞こえなくなった。そして、ドアを開けるとローレン王、マクロスなどが険しい顔になっていた。


「何だよ。暗い顔して」


マクロスは「はぁ…」と一息をついて紙を取り出して言った。


「仕方がないですね。半年ぐらいは馬車馬のように使おうと思ったのですが…これを差し上げます」


ガルシアは一枚の紙が渡された。よく見ると「通行許可証」だ。


「いいの?」

「いいですよ。どうせ、こっそりアナタに渡すように仕向けていたんですから、是非受け取って下さい」


ローレン王は冷や汗をダラダラしてニコニコ笑顔になっていた。本当に嘘がバレやすいんだなぁ…


「さぁ、早く行って下さい!すぐに追ってが来ますよ!」

「ありがとう!」


ガルシアは裏の通路を辿って歩いて行った。


「ところで、アレは何ですか?」

「いや…その…」


ローレン王は口が籠ってしまった。


「まぁ、ゆっくり話合って再教育していきましょう」

「いやー!!!」


マクロスはローレン王の首を掴んで引きずりながら部屋に戻っていった…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ