第3章北へ No.2
「ロッドじゃねえか!?」
そう、大型の男は「ロッド・アニス」。
身長190センチ、金髪で顔の頬にバッテンの傷があるガッチリした男だ。
以前、部隊長同士で飲み、勢いあまって殴ってしまって、大乱闘に発展。類を見ない被害が出て俺が追い出された…まぁ、一様、理不尽な格好ではあるが一件落着という運びになった。まぁ、恨んでいるものが多いが。
ちなみに、なぜ峠のキバに行きたくないというのは峠のキバには、ちな臭いという情報が入っていることもあるが、まず第一に歓迎されていないということもある。
「なんだ!ガルシアじゃねえか!」
ロッドは剣を納め、覆面を外し、にこやかな感じて肩をガンガン叩いてくる。なんだ、昔の遺恨は感じていないのか?ガルシアは恐る恐る質問をしてくる。
「ところでさぁ、あの時はごめんな。感情的になってしまって…」
ガルシアは正直に話した。遺恨を残すことは良くないからなぁ。けれど、ロッド自身は何を考えているのか…様子を伺う。
「気にすんな!まぁ、当時はイラッとしたよ。けれど、冷静になってガルシアには申し訳ないことをしたなぁと思ってしまったわ」
ロッドは少し暗い顔をする。よっしゃ!反省したみたいだな!
「いいって、いいって俺も感情的になってしまったし」
「まぁ、お互いだったし、仲直りするためにもハグしようや」
「おう!」
お互いガッチリ抱きしめてあった。なんだか、胸に温かいものが流れる。一瞬、泣きそうになった。
「ところでさぁ、本人同士は良いけど、他の部隊は快く思ってないみたいだわ…札付きが多くてすまん」
「いいって、いいって、この場所もそんなに居ないから」
これは本心だ。峠のキバも長居するわけにはいかない。長く居て他のメンバーに暗殺したらたまったもんじゃないからなぁ。けれど、懐かしい場所だからなぁ…それが名残おしい。
「他のメンバーは?」
「ん?上を見な。懐かしいメンバーがおるぞ」
ガルシアは上を見上げた。うわ… 懐かしいメンバーだ…しかも、敵意剥き出しだぁ…
「うん。早いところ消えるよ」
そう心に誓った。命がいくつあっても堪らないからな。再び上を見上げる。すぐにでも喧嘩しそうだ。うわぁ…すげー居心地悪い。
「そうした方がいい。まぁ、積もる話があるかもしれんが、まずは王に会わなければならない。分かっているな」
ガルシアはうなづく。
「よし!じゃ行こう」
ロッドの後ろにガルシア、ベルと続いていく。なんだか、歓迎されていないみたいだなぁ…門を潜ると小さな街が広がっていた。昔居たよりも発展しているみたいだ。兵はロッドを見ると一瞬、笑顔になるが、ガルシアの姿を見て冷たい目線に変わっていった。うううっ…冷たい目線が辛い。ベルも乱闘には関わっていないが同じもの同士として、冷たい目線を喰らう。本当にごめん!ベルが「チョンチョン」と背中を押しながら小さな声で囁く。
「なぁ…なんだか、歓迎されていないなぁ」
兵士達はベルのことを「ギロリ」と見る。流石に空気を読んだのかお互い黙って歩く。10分は歩いたのだろうか?大きなドアのところに洞穴がついていた。一同は立ち止まる。ロッドはドアを開け薄暗い廊下を歩いていく。昔から通るが、なんとも言えない廊下だ。まるでお化けが出てきそうな雰囲気みたいなんだよなぁ。
ロッドは慣れているのか、気にせず歩いていく。やがて、あるドアの前に立つ。「クルリッ」とガルシアの方に向き合った。
「いいか、王はガルシアと仲が良いが、今の情勢は緊迫でらっしゃる。しかも、イライラしているはずだ。くれぐれも粗相がないように」
ロッドは「要らないことはしてくれるなよな」という雰囲気でガルシアの顔を見た。
「分かったよ」
ガルシアは渋々応える。メチャクチャ緊張してきた〜!
ロッドは「トントン」とドアを叩く。
「どうぞ」と声がするので、黙ってドアを開ける。
ロッドは一呼吸置いて、ガルシアも歩き出した。
部屋の中には暗殺対策なのか、薄暗く何人かはいるが判別がつかない。
「失礼します。朝、パトロールしてたら、珍しい人と出会ったので、ここに連れてきました。おい!」
ロッドは首を捻って「クイッ」と顎を持ち上げた。どんだけ雑なんだよ!
ガルシアは一瞬「イラッ」としたが、王の手前、怒ることも出来ず抑えた。
そして前に進む。ガルシアの姿を現せた。暗闇に紛れた、王一行は一瞬、凍りつきダッシュで駆け出した。そして緩めることなく段々と詰める。
「おいおいおいっ!」