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ガルシア戦記  作者: 千山一
第1巻 バスティアの魔族
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第2章 北へ No.1

「イテテテ…。ここはどこだよ」


ガルシアは上半身を起こした。なんだか節々が痛い。どこが痛いのか、入念なチェックをする。所々、傷はあるが軽症だ…頭のデッカいタンコブを除けば…。


キョロキョロと周辺を見渡す。ここはデッカい洞穴で微かだが光が漏れる。しかし、ここがバスティアから離れているのか、近づいているのか分からない。おまけに、頭がズキズキ痛むし「ここはどこがなのか?」が分からない。


「そもそも、ここはどこなんだろうか?」


独り言を言う。確か、牢屋にいたような…?回想を巡らせる。「あっ!黒竜だ!」断片的しか分からないが微かに覚えている。黒竜足に捕まっていたような…ダメだ!思い出せない。ガルシアは「う〜ん、う〜ん」と唸っていると、人影が現れた。その人影は、ガルシアが座っていることに気がつくと、こちら側の方向に足早に走ってきた。


「ガルシアさん、気が付いたんですね!良かった〜」


なんで「さん」なんだよ。しかも敬語だし…まてよ。今までの推理が正しければ…頭の回転がぐるぐると周る。


「だから、なんで「さん」なんだよ」

「それは、おいおいで…」


「おいおい…?」分かった!言葉を濁すことだなと初めて分かった。「もう少し、突いてみよう」と感じたガルシアは口にした。


「ところで、ここは何処?」

「そう聞くと思っていましたよ、ガルシアさん!食料がてら、周辺を色々探した所、だいたいバスティアと北の国境の砦「峠のキバ」にあるんじゃないですかね?」


「峠のキバ」一瞬、空気が冷たくなるのを感じた。「峠のキバ」とは、なんでもありの無法地帯で、その絶対的な権力者「ローレンス・グリ」いわゆるローレンス王。前の権力者は暴君で知られる王で(聞いたのだが忘れた)粛正や内紛で荒れていた。荒廃した兵は疲れ果て、勢いで戦うもの、諦めて脱走するものがおり、峠のキバ全体に重い雰囲気が漂っていた。そんなある時、光が見てきた。それがローレンス王である。前の権力者から打ち破って、トップに立ち次々と改革を進めた。それが強固である自治体「峠のキバ」である。


まずは、ローレンス王が北の江上国である巨大国家と着手。昔から犬猿の仲であるにも関わらず国交回復した。最初は煙られてばかりであったが、徐々に国交が回復し、仲の良い関係になった。そして嬉しい誤算をもたらしてくれた。それは豊かな作物と貴重な資源、そしてレアな武器。峠のキバはドンドン潤っていたのだ。

そこで目を付けたのがロマーノ王国の上位幹部である。峠のキバは小さな自治体であったとしても強大である。もしかしたら、ロマーノ王国を滅亡かねないと危機を持った上位幹部は目を光らせ、トップの座から落とそうと企んでいた。峠のキバであるローレンス王は「馬鹿げてる!」と訴えても、幹部達から賛同がない。仕方がないから放置しているが、最近何やら嫌な雰囲気が漂っていた。そんなピリピリムードの峠のキバに何が悲しくて行かねばいけないのか…。


「結論から言うと峠のキバに行こうと思う」

「えっ!マジ!?ベル、気は確かか!?」

「気は確かです。想像してみてよ。2、3日は野宿は良いけど長期に住むにはあまりにも不便すぎやしないか?」


ベルは大まじめに応えた。本当にマジだ。けれど、どうしても峠のキバにだけは行きたくない!


「短期なら良くね?ほとぼり冷めれば良いんだから」

「トイレ事情は?もし、誰が病気になった時、誰が駆けつけるのさ。ヒーラーも魔導士もいないよ」


「ぐぬぬ…」とガルシアは口を噤んだ。ダメだ。完全に詰んでいる。常識から考えて留まるのはおかしいし、下手すれば魔物出現になるかもしれない…クソ!いつからベルは、理論的になったんだろうか。


「分かったよ。峠のキバに行けばいいんだろう」


ガルシアは肩を落とした。バスティアの町の情報によると、峠のキバは不穏な雰囲気しかないんだよなぁ。けれど、指名手配された身。峠のキバに行くしかないか…


黙って朝の準備をする。「なんとか峠のキバに行く方法はないのか?」を分かっていたけど、どうしても行きたくないと思って思案する。沈黙の朝食。ベルがポツリと口にした。

「峠のキバしかないんだよ」と…

分かっているよ!分かってる!けれど、どんなに追い込まれたって峠のキバしか行きたくないんだよ!ガルシアは心叫びで悶えていた。


「さぁ、もう行く時間だよ。急いで!」


ベルは急いで支度をする。何か違和感があるぞ?何ががおかしい…そうだ!


「今日はドラゴンで行かないのか?えっと…黒竜だっけ?」

「黒竜?…ああ、ドラコのことか?…えっと、すごく言いにくいことだけど出てこないんだ」

「出てこない?」


ベルはバツ悪そうな顔をした。「なんじゃそら!」とガルシアはツッコミを入れたと同時に、頭の回転を早くする。

「そうだ!ドラゴンを使って峠のキバではなく、違う地域に移り住めばいいんだ!」と


「ドラコだっけ?もう怒ってないよという意思表示はできないの?」

「今はムリだ。そもそも、警戒心が強くて気づいたとしても応じないよ。ドラゴンは大きい割りにもビビりが多いからなぁ。ましてや、ドラコみたいな超がつく程ビビりだから来ないよ」


ベルは諦めた様子で息を肩を落とした。「だからって、峠のキバはないだろう!」と心の中から叫んだ。


「分かる!分かるって!峠のキバは恐ろしいもんな!けれど、現実は峠のキバにしか行くしかない!まぁ、一カ月もすればドラコの方は落ち着いて顔を出すかもしれない。そうすれば、どっかに遠くに行って移住すれば良いよ。まぁ、それまでの辛抱だ!」


ベルはそれを言うと徒歩で歩く準備をする。ガルシアも仕方ないので、しぶしぶ徒歩の準備をする。


徒歩を出てから一日が過ぎて昼頃。昼頃なのに白い暗闇で視界が見えない。まるで「夜じゃないか?」と錯覚する程度だ。


「クソ!白くて見えない!これじゃ、昼と夜、どっちなんだ!」


ベルは鬱陶そうな顔で辺りを見渡す。「みぎなのか?左なのか?が分からん!」少し不安になってきた。なんだか、お化けが出てきそうな…少しビクビクして慎重に歩いていると何やら前方に黒い物体が現れてきた。


「えっ?何あれ?」

「またまた、錯覚じゃないの?」


ベルは「はっはっは」と笑い飛ばした。イラッとしたが一緒で凍りつく。その物体が何やら剣らしきものを振り下ろしたのだ。木が薙落とす。


「えっ!マジ!」


ベルは驚き顔を見せたが慌てて剣を構える。霧が濃ゆくて判別できないが、おそらく構えている男は身長は高くて忍者みたいに覆面をしていた。二人は「カキン!カキン!」と剣と剣がこだまする。どちらが味方なのかが分からない。


「かかってこいや!」


ベルは敵を威嚇するが相手も無視である。いや、余裕がないのだ。二人は間合いを取って静止する。隙がない。睨み合いが続けたところ濃霧が晴れてきて、クッキリと見覚えのある姿になった。


「あっ、おまえ…」


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