第8章 旅立ちへNo.2
第8章 旅立ちへNo.2
「…………」
「…………」
「……コホン」
ガルシアは「ビクッ」と驚いてリナの顔を見る。
「あら〜何ですかぁ?恥ずかしいじゃないですか〜?そんなに見つめると…」
リナは「ブンッ」と長槍を振り回し、ガルシアの顔から数センチの所まで止めた。
「魂まで取っちゃいますよ〜」
リナは「ニコッ」と笑顔になった。
おいおい、勘弁してくれよ!しかも、王に会うからと言って正装になるし、このオバさん(リナ)が良いからと言って無理やり部屋に詰め込まれるし…ん?確か、このオバさんと一緒だよな?
「……あの〜オバ・・・リナさんは一緒でいいですよね?」
ガルシアはビビりながら聞いた。
「こら!副頭領と言え!副頭領と!」
リナはローランドの方を向いて長槍を「ゴンッ」と、どついた。
ローランドは長槍でどついた瞬間、気絶して倒れてしまった。そして、周りにいた部下が回収し、その場にいなかったようにリナはこっちを向いた。
イヤイヤ、おかしいだろう!それとも、俺がおかしいのか?
「リナでいいですよぉ〜ところでその質問は違いますねぇ〜ガルシアが先で私があとですねぇ〜。なんかぁ〜王様の体調が優れないらしくぅ〜短縮して欲しいと言っていたのでぇ〜OK❤︎と言いましたぁ〜」
ーーコンコン、ガシャ。
待機していたガルシア達はドアを叩く音がした。そしてゆっくりドアを開く。中には秘書と思える男性が立っていた。
「失礼します」
ゆっくりと頭を上げる。
「ロマーノ王の準備が整いましたので、王の間へご用意します」
それを聞いてガルシアとマッシュは立ち上がった。リナは、しばらく待機らしく座って見送った。ガルシアは「ぺこりっ」と頭を下げ、リナの顔を見た。
リナの顔は、昨日と比べて艶やかである…今は触れないでおこう…。
秘書の後にガルシアとマッシュは着いて歩いていた。沈黙が廊下の3人に聞こえて響いている。
「なんか、緊張するなぁ…」
ガルシアが独り言のように呟く。それを聞いたマッシュがこちらに向く。
「あまり緊張しないでいいですよ。本来のロマーノ王は寛大で心が広い方なので、ちょっとのことでは失礼にあたりません。まぁ、限度がありますけどね」
マッシュは「ニコッ」と笑った。やがて、大きな扉の前に着く。すると、秘書はこちらに「クルリッ」と向き頭を下げた。
「ガルシア様、マッシュ様、ロマーノ王国を救って頂きありがとうございます。王様の前ですが心よりお礼申し上げます」
秘書は頭を下げる。そして、ガルシアはその言葉を聞くと胸から暖かいものが沁みてきた。秘書は180度切り返してドアを開けようとして立ち止まった。
「さぁ、王様の前です。失礼のないよう宜しくお願いします!」
それを言い終えると秘書はドアを開き、広いホールに向けて一礼をした。
「皆様、お待たせしました。客人であるガルシア様と騎士長のマッシュ様がいらっしゃいました」
そう言い終えると秘書はガルシア達を招き入れ、無言で誘導する。ガルシア達も自然と前に行かなければいけなかった。
そして周りを見渡す、十数人が両端に「ビシッ」と立っており、中心の所に座っていたのが本物のロマーノ王である。
ガルシアも何だか分からず、マッシュのマネをしていた。マッシュは中心を歩き突然しゃがんでいた。ガルシアも慌ててしゃがむ。
「お待たせ致しました。ガルシア、マッシュ、ここに見参しました」
「うむ。よくぞ参られた。魔族の成り変わりでロマーノ王国の危機だったにも関わらず、ロマーノ王国を救ってくれた。謝罪とお礼を言うぞ。本当にありがとう」
ロマーノ王は頭を下げる。そして、その周辺は驚きと、ざわめきで「ざわざわ」していた。
ガルシアは「?」と疑問だった。そして後に判明するのだが元々、王様は神でありお礼などは稀にあるのだが、謝罪は決してないのだ。
「お礼と言ってなんだが、紋章に刻まれた、ミスリルアーマーと金500枚を贈しよう」
「イヤイヤ、いいわ!」
ガルシアは即座にキッパリ断った。
「別に有名人になりたくないし、むしろひっそりと暮らしたいし…まぁ、お金は困らないけど、そんなにはいらないし……どうするかな?あっ!友達になってよ!」
周辺から怒りと怒号が飛び交う。そして、ロマーノ王は大きな声で笑い飛ばす。
「ハハハ!面白い男よ!それで良いのか?」
「あぁ、いいぜ」
「では、そなたを友達とする」
ロマーノ王は再び豪快に笑った。
「ところで、マッシュの方も言わなければならないのう」
「はっ」
マッシュは「褒美は何が出るのだろうか?」と期待していた。
「マッシュ!本日付けで無期限、衛生兵長を休職とする。もちろん、国外退去じゃ」
マッシュは呆然とする。
「ワシはスパイだと薄々気づいておった。もちろん、革命軍と衛生兵の2重も知っておった。けれど、ロマーノ王の危機時、どれだけ国外の脅威と国内の手助けがあったか計り知れない。本当にありがとう。今は自由にして他のスパイの軍に奉公してみてはどうかのう?」
マッシュは号泣して肩を震わせていた。
「これにてお開きじゃ!」
「はっ!」
騎士は一斉に頭を下げた。
そして、業務の為、足をブルブル震えながら騎士の元に駈け寄りおんぶで立ち去って行った。
今は触れないでおこう…。