第7章 バスティア決戦No.17
魔族は一瞬の油断をつく。
ドガッ‼︎ガラガラ‼︎
ガルシアの顔面に拳を殴りつけ、思いっきり吹っ飛んでいた。いや、そうせざるを得ないのだ。それぐらい魔族は焦っていたのだ。
「この男は何かが違う…」
魔族の余裕は微塵もなかったのだ。
「そう焦るなよ」
ガルシアは立ち上がり不敵な笑みを浮かべた。そして顔に血が出てきて、うっとしいと思い右手で拭く。どこか余裕もあった。
そしてガルシアはゆっくりとこちらに向く。
「今すぐに逃げ出したい…」
魔族は直感でそう思った。初めはあまり分かっていなかったかもしれないが改めてこのガルシアという男の実力差が歴然としている。悔しいがそれぐらいの差なのだ。
魔族はチラチラと、こちらの様子を伺っている。
「おいおいおい!まさか逃げ出そうとしてねーだろうな」
ガルシアはゆっくりこちらに向かって歩いていた。まさにその通りである。逃げ出そうにも逃げ出せない。魔族は覚悟を決めた。
「フッ何を言っているんですか?アナタをたっぷり料理してさしてあげますよ」
と言った矢先、魔族はガルシアに向かって飛びかかる。
スカッ………。
魔族は一瞬で冷や汗に変わった。あれほど、確実に顔を目がけて本気で放ったのに空振り…憶測を見誤ったのか?いや、そんなはずがない!
「おいおい、これで終わりか?」
ガルシアはゆっくり魔族に向かい合う。
「今まで、恐れた魔族がまるでオモチャのように見えるぜ」
ガルシアは余裕なのか、少し笑みを浮かべた。
「ぐぬぬぬ…」
魔族は初めてその言葉を発した。それぐらい屈辱、怒りなのだ。しかし、ガルシアは到底及ばない…。しかも今のガルシアはどういう訳か、余裕がある、つまり調子に乗って痛ぶっているのだ。それを返せば油断があると言うことだ。
「イケる!」
どんな圧倒的な勝負でも油断は命取りになる。しかも、全力で逃げ切ればこちらとしては、断然有利である。ここは一旦、退散して何十年後、何百年後に挑もう。人族とってそれぐらい魔族は永遠になのだから。
「ちょっと待って下さいよ。アナタが来た時、私は圧倒的に有利でした。しかし、今は逆転して圧倒的、不利。どうも腑に落ちないんですがね…。何故、そのようになったんですか?」
魔族は疑問を投げかける。この質問はどうでも良かったのだ、少し時間をかせげれば…。
「うーん…なんでかなぁ?…勘?」
ガルシアはその問いに全力で考える。
あとは魔族が唱えられる時間を確保したので、いつでも空間に出られる。そして、その時のタイミングを測る。
「勘じゃないなぁ…センス?なぁ、お前はどう思う?」
ガルシアは「ポリポリ」と頭を掻く。
魔族は「今だ!」と思い、発動する。そして、その瞬間、魔族は跡形も無く消えていた…要は物理界ではなく時空界に転移したのだ。時空界では人族は決して踏み込めない。
「フハハハ‼︎残念でしたね!これでアナタの勝ちが消えましたね…ハハハ‼︎永遠にですよ!永遠に!又、いつかアナタが亡くなる頃にやって行きましよう!…まぁ、アナタにはお会いすることはないでしょう!ハハハ!」
魔族は高笑いをした。
物理界ではそのガルシアが居なくるのが目に浮かぶ。
「まぁいい。今回は命からがらでしたからね。少し休憩して残虐の案を練りましょう」
魔族は「クルリッ」と返して飛び出そうとした矢先「ガシッ」と首を掴まれて、何処かに放り込まれた。魔族は何があったのか分からないまま転げ落ちる。
「いててて…」
魔族は頭を強打したらしく頭がズキズキする。
「よっ!又、あったな!」
そこにはガルシアが立っていた。
魔族は何が起きたのか分からず混乱していた。そして、周りを見渡す。今さっきいた場所だ。
「なんでここに?」
魔族は今自分が発したことはおかしいと思った。それぐらい混乱したのだ。
「おいおいおい!そりゃ、ねーよ!
たくっお前が逃げ出しそうになったから慌てて、首根っこを掴んで来たんだよ」
「お前が…?」
魔族が信じられないという顔をした。
いくら、この世があったとしても……まさか!
魔族は一瞬で全身で汗をかく。
「あ、あ、あ……」
魔族は後退りをした。
「だから、ダメだっつうの!」
ガルシアは魔族の首元に対して剣を振り下ろした。魔族は血飛沫を出し、痙攣をしながら倒れていった。




