第7章 バスティア決戦No.10
「いててて…」
どれぐらい寝ていたのだろうか?いや、正確には気絶に近い…まぁ、そんな事は認めてないけど。確か、ガルシアらしい男とベル様が向かい合って話したのは微かに覚えている。
バスティアの件で、あまりにも腹ただしいものだから皮肉たっぷりの発言を言ってしまった(その時は反省している)。
その発言の途中でその男は立ち上がり、頭に何かを強打して気絶してしまった。
本当に不覚だ…まぁ、知ったこっちゃないが、事が事だが迅速に対応しなければならない。
ロックが立ち上がって帰ろうとすると、背後から黒い影が出てくる。それに気がついたロックは慌ててしゃがみ込み姿勢を「ビシッ」とした。
「どうしましたか?フェラー様」
背後に立っていたの名は【フェラー】。
フェラーは誰にも見分けがつかず、頭には頭皮を覆うように被さっている。しかも170㎝と群衆の中で溶け込みやすく音でさえ魔法の変声期を使っている為、年齢は何歳なのかが分からない。
それぐらい謎多き人物である。
思えば、数年前ポッンと一人で現れ、数年後にはバスティアの裏界No.1の組織を作ってしまった。そして何を隠そうとその組織【ブラック・フロンティア】なのである。
「ガルシアさんはどうでしたか?」
フェラーは穏やかな声で言った。
…まぁ、顔が分からないのだが。
「それが…その…話の途中で怒って帰ってしまったんです…」
ロックは申し訳なさそうに暗い顔をした。それを見たフェラーはため息をついた。
「本当に仕方がないですね…江上軍と合流しましょう」
「あの…ベル様達は…」
あたふたするロックの姿の一方で、フェラーは穏やか且つ冷静に微笑んで見せた。
「まぁ、勝手に帰ったんだったらしょうがないですね。謝ったんだったら笑顔で歓迎しても良し。町の人と喧嘩して捕まったんだったら牢屋にぶち込むのも良し。いずれにせよ死刑になることはないでしょう」
フェラーは穏やかな口調で空を見上げた。そして、ロックは何か嫌な予感をしていた。
ーーーー
ギギギィィィ、ガチャ!
ここは暗い牢屋の中、しかも運が悪いことに捕まってブチ込まれていた。
「痛てーな‼︎もっと優しくしろよ‼︎」
男は「キリッ」と三人の衛生兵を睨む。そこの男こそガルシアなのだ。
衛生兵は持っていた紙を取り出し、ガルシアに見せる。
「本日を持ってガルシアを身柄確保する」
衛生兵は「クルッ」と向いて
「その一味、ベルも同様である。又、ロマーノ王国の法律では対処人物を特許Aとし、裁判無しで明日【死刑】とする」
衛生兵は冷たく言うと、ガルシアの顔を無視して立ち去ってしまった。
う〜ん、どうしよう…ここの牢屋は厳重な作りなっていて脱獄は、ほぼ不可能に近い。かと言って死刑は嫌だ。どうしたものか…。
ガルシアは頭の中で悩んでいると、ベルの姿が目につく。
「ど、どうしたの?オマエ!?」
ガルシアは思わず叫んでしまった。
何に驚いたかと言うとベルは「ガタガタ」震え青ざめているからだ。それもそのはずベルは百戦錬磨の達人で【死刑】と言われたところでは動じないからである。しかし、そのベルは「ガタガタ」震え青ざめている…。俺からすると大事件なのである。
「何があったんだ!?話して見ろよ!!」
ただ事ではないガルシアは真剣に向き合った。
「…それが」
「それが?」
「ババが知られたら殺される…しかも、確実に…」
ガルシアは思わず無言でツッコミを入れた。
バシィィィ!!!
地下牢じゅに大きく響き渡る。
「イッテーーー!!何すんだよ!!」
ベルは思わず叫んでしまった。それぐらい痛かったのだ。
「ワリー。思わず思いっきりツッコミを入れてしまった。まぁ…なんだ、牢屋から脱獄するより帰ってからの心配かよ」
「俺にとっては、その事が心配なの!!」
ベルは頭を摩りながら大きなコブが出来ていないか心配になった。
「…そりゃ、少しは心配よ。けど、外に出て捕まるのがもっと心配なのよ!」
ガルシアは呆れつつも、ベルの母のことを思ったら「それも仕方ないかな?」と思った。
しかし「これぐらいの刑で死刑にする?」と不満に思ったが「何がダメだったんだろう?」と頭の中で振り返ってみる。