第7章 バスティア決戦No.9
「はぁ、はぁ、はぁ…」
ベルとガルシアはイスに「ドガッ」と座り、激しい息をしていた。何だか、呼吸が痛い…。
見知らぬ男は呆れてため息をついてしまった。どうしてこんな事になってしまったのだろうか?頭を巡らせてみる。
ーーーー
確か盗賊風の男と喧嘩しようとした時、見知らぬ男が現れて俺と一緒に逃げて一直線の道を走っていく。
盗賊の男は訳の分からない罵声を叫んでいたがドンドン引き離していった。やがて見えなくなった頃、見知らぬ家のドアを無断で開いて行った。
「お、おい。大丈夫なんか?勝手入ってはダメだろう!」
ガルシアは焦って思わず叫んでしまった。ベルは追いつくことが必死でまだ無言であった。
「シッ!静かに!バレたらマズイから!」
背後から何やら物音がした。盗賊風の男達である。盗賊風の男達はドンドン近づいていた。
「おい!この辺で大きな声がしたぞ!」
盗賊風の男達はドア越しに大きな声で叫んでいた。そして、ガルシアは息を殺してジーッとしていた。ベルはというと盗賊風の男達に近づいているので息を押し殺している。
…ベル明らかに酸素欠乏症みたいな感じだ。
「クッソ!どこだ!確かこの辺なんだけどなぁ」
男達は近くのドアを開けて「キョロキョロ」見渡し、閉じる。
そんな感じで一つ目、二つ目、三つ目…段々とドアの開ける音がドンドン近づいていく。
「もうダメだ!このドアが開いた瞬間、斬りかかろう!」
と覚悟を決めてドアを開ける瞬間、違う男が腕を掴んだ。
「もういいだろう?これぐらい家はいくつあっても日が暮れちまう。それに衛兵のが怖いからさぁ、あまり長い出来なくなっちまうぞ」
「…分かったよ」
男達は諦めてドアを閉める。ガルシアはドア越しで男達の息を聞こえるのがハッキリ分かった。
「クソッ、まだまだ「ドキドキ」してやがる」
普段なら倒してスッキリという感じだが、逃げるとなると勝手が違う。
男達はドンドン声が離れていき、やがて聞こえなくなっていた。けれど油断大敵。離れていても油断せず「ジーッ」としていた。
数分後ー
聞こえていたはずが突然、近くの場所で歩き出した。
「ヤバかった!!!」
本来の自分は離れていると同時に歩き出して、盗賊風の男達に「すぐに発見!殴りかかる!」という場面だったのだが、この時は「ジーッ」とするのが運が良かった。
「ふーッ」
ガルシアとベルは胸を撫で下ろした。と、同時に「見知らぬ男は誰なのか?」という疑問を感じた。
「で、あんたは誰だよ…?」
ガルシアはベルと同じことを思ったらしく、疑心暗鬼になっていた。
「シッ!今は油断しない方がいい。安全を期するため、階段を登るぞ。そこで、話し合いをしよう」
三人は階段の方に向かい登っていく。やがて登りきった後、さらに安全を期するために奥の部屋に歩いていった。そして、奥の部屋のドアを開け、20畳ぐらいの部屋に大きなテーブルが置いてあり、両側の椅子が向き合いながら座っていた。
「どうぞ」
見知らぬ男はガルシアとベルから向き合い、椅子に腰掛けた。
「始めましてかな?俺の名は【ロック・グラディオラ】。アンタの動向はしっかり見ていたよ。しかし、バスティアに来て喧嘩する?」
ロックと名乗る男性は呆れ顔をした。
ピキッ
ガルシアの顔が青筋を立てて引きつる。
「ヤバい!ヤバい!ここで切れてしまったら、情報が引き出せなくなってしまう…」とガルシアはそう呟きなんとか思い止まった。
「そりゃ、どうも。なんせ、田舎なもんで右も左も分からなかったもんで」
ガルシアは皮肉たっぷりを口にする。
「本当にそうですよ!だいたい、ここバスティアの都市で喧嘩するって分かります?もし、喧嘩でもして革命軍ってバレたら全ておじゃんですよ?今まで積み上げてきた人には本当に申し訳ない!…って、その自覚あります?」
ピキッピキッピキッ
我慢だ!我慢!
ガルシアは「グッ」と堪えていた。
「…本当にすいません。で、どこに行けば革命軍と接触することができるんですかね?」
「全くですよ!江上軍の問題児はバカばっかりなんでしょうね!頭領は不在だし、副頭領もこんなばっかり派遣するし、先が思いやられますよ」
ピキッピキッピキッピキッ!
切れた…
ガルシアは無言で席を立ち腰に置いてあった剣を取り出す。
ゴン!!!!
ゴン?
ガルシアは一瞬「?」と思いながら、隣にいたベルがスローモーションで剣を振り下ろす所を見た。
「ベル!?何してんの!?」
ガルシアは一瞬、固まってしまったが我に返るのを思い出しツッコミをいれた。
「副頭領を悪く言うな!これ以上、副頭領を悪く言うだったら契約は破棄とする!いいか!?」
ベルはこの世と思えないぐらい鬼の形相で叫んでいた。
「行こう。ガルシア!ここで話すことはない!」
ベルはそう言って後にする。
ベルは怒り心頭なのか、歩幅が「ドスン!ドスン!」と大股で歩いていた。やがて短くなる。そして立ち止まってベルから一言。
「俺、どうしょう?」
まぁ、なんにせよ。悪いのは、どちらかが先に出るのかの違い。少し同情したのであった。