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ガルシア戦記  作者: 千山一
第1巻 バスティアの魔族
36/199

第7章 バスティア決戦No.8

ギシイ、ギシイ、ギシイ…


長い廊下が鳴り響く。

護衛を付けた女性は真顔で歩いていた。私の名は【リナ・アンダーソン】。就きたくのないNo.2、副頭領なってしまって、しかも夫である【ロイド・アンダーソン】が呑気に動こうとしないから思いっきりどついて説教したのをきっかけで周りの人間が変わったわ。時には羨望の眼差しで、時には恐怖で…もうウンザリ‼︎

しかも、年々権力が強まってしまい出れそうにない…いや、出るのよ!

リナは強い決意を心に灯した。


やがて、目的地の部屋に着く。そしてドアをノックする。


トントン

ガチャ、ギギギ…。


そこには、土下座して冷や汗ダラダラの男二人が立っていた。しかも白装束である。


「ベル様とガルシア様を逃してしまい、本当に申し訳ございませんでした!」


リナは何だか申し訳わけなさそうな感じがした。けれど、これも国のトップ。トップだから厳しくしないといけない!


「ジャックさん、ロザンさん言いたいことは分かったですぅ〜要は逃げられちゃったんですねぇ〜しかも、巧みに騙されているみたいでぇ〜」


ジャックは共感してくれて安堵したがその反面、副頭領の底知れぬ恐怖から「まだ油断したらダメだ」という危機感のセンサーが働いた。


「そ、そうなんですよ…本当に申し訳ないです。けれど油断したのは僕のせいです。なので、僕はもちろんベル様逃亡作戦に参加しますが、なんせドタバタしてまして…段取りを付けた後、すぐに出発する所存でございます」


ジャックは副頭領の顔を見た。相変わらず、何を考えているのか分からない。


「あっ、ベルの方はいいですぅ〜。だってぇ、ちょっと本気出したらいいですもんねぇ〜」


ジャックは周りの人達を見た。

護衛の人達は真顔であるが、よく見ると冷や汗をかいていた。


「なので、予定を変更しようと思いますぅ〜奪還作戦はベルではなくて旦那さんの方でぇ〜。

あっ!それと私はバスティアの方に向かいますぅ〜」

「………え?」


ジャックは一瞬、頭が真っ白になった。


「いやいや、それはちょっと…知っていると思うのですが首都バスティアに入るには通行証がいるんです。もちろん、本物に近い通行証を出しますが副頭領の顔になれば、ほぼ不可能でしょう…ならば、闇に交えてとなればと思ったのですが…ここ最近の情勢では戦争になりかねないという風潮でして首都バスティアも強化体制を敷いてる次第なので…」


ジャックは「冗談だろ?」と思ったが「この副頭領はやりかねない」と内心ビビッてしまった。


「それは大丈夫ですぅ〜軍隊を2万人程、迎えれば大丈夫ですぅ〜」

「………冗談ですよね」


リナは満点の笑みで微笑んだ。ジャックはそれを見て背筋が凍る気がした。

ダメだ、副頭領の満点の笑顔は本気なのか、冗談なのか分からない。


「冗談ですよぉ〜。本気で取らないで下さいねぇ〜(笑)」


ジャックは「セーーーフ‼︎」と思ったが、その発言の後、奈落の底に陥ってしまった。


「うーん、それにしても困ったですねぇ…うん!分かりましたぁ。首都バスティアに入らず、ここで指揮をとりますぅ〜」

「…えっと、ここでは忍者がうろつくと怪しまれますので…」


その通りである。ここバスティアの手前の「ルク」は拠点になりやすく、首都バスティアの強化都市と比べれば、まだまだ未発達のため何かと動きやすい。

なので、ここに集まりやすいのである。しかし、バスティア軍もそれをお見通しで何か不審な動きがあったら、すぐ衛生兵が駆けつけてくれるのである。

何を隠そう、俺もちょっと客とトラブルになっても、すぐにしょっぴいてしまった経験がある。まぁ、上手いこと隠したけど…。


「それも大丈夫ですぅ〜この軍はすぐに他の土地に移しますぅ〜」

「……えっ」


リナは満点の笑顔で応えた。その反面、隣で護衛している忍者は、みるみる真っ青になっていく。


「なので、ここバスティアに近く広い洞穴ってありますぅ〜?」

「えっと…あるにはあるのですが…」


ジャックは言葉に詰まってしまった。何故なら、まだ副頭領がいない頃、最強を誇っていた【黒石の光】の頭領【メークド・ハンマー】という人物が率いる集団で、町を襲っては略奪する悪役非道をしていたのだ。しかも、戦闘においてピカイチらしく、本拠地である洞穴も大量の兵を襲っても返り討ちになってしまったという噂が広まってしまった。


「それは誰ですかぁ〜?」

「……それは【黒石の光】です」

「あ、あ〜それは大変ですねぇ〜けれど、明日には【黒石の光】を壊滅しているはずだから大丈夫ですよぉ〜」


他の忍者はリナの発言を聞き、急いで姿を消した。あいかわらずの副頭領である。

副頭領が「ここに行く」と言ったら、急いで次の道を開いていく。たとえ、いばらのみちであったとしてもである。

この副頭領は、底知れぬ統率力を悠然に物語ったのである。


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