第7章 バスティア決戦No.6
「はぁ〜」
峠のキバの広い廊下を二人で歩いていた。
俺の名は【リック・ランド】。
江上軍に対する交渉の経緯と具体的な説明をしに行っていた。
しかも、直属な王ではなく代表的なグループが集う集まりに説明して欲しいと言われた…言うがいいが、トップ(王)でも刃向うぐらいの猛者だ。
こんな時に限って内容が薄い…薄ければ、盛れば良いと思ったが、あの猛者の集団だ…下手したら戦争になりかねない。
「はぁ〜」
リックは再びため息をつく。
「どうしたんですか?リックさんなら、局面を打開するんじゃないですか?」
その声は右隣を歩いている【マチルダ・ゴーレス】だ。マチルダは普通の平々凡々なのだが、どこか暖かくなる良き理解者なのだ。
いつも助けてくれる。
「そうもいかないのよ。今の現状は窮地に追い込まれさぁ…峠のキバ全体がピリピリムードなのよ。しかも、交渉の内容は薄い…下手したらバカにしているって捉えられないのよ」
「それは災難だね…こんなに命張ってんのにね」
マチルダは同情してしまった。
「でしょう!下手したらこれで戦争が始まる可能性が高い。どうにか、回避しないと…」
リックは再びため息をついた。
そして、リックは立ち止まる。そこにはお目当ての第一会議。第一会議は王も出席する大事な場所だ。
「着いたよ。ほらっ深呼吸して。大丈夫だから、もし戦争になったらリックのせいじゃないよ!」
マチルダは「ニコッ」と笑顔で応えた。
「マチルダ…好き」
「いやいや、そんな気はないから!?女好きだから!?」
マチルダは全力でツッコミを入れた。
そして、お互いが小さい声で笑った。
「ありがとう!なんか、元気でたわ。じゃ、戦争しないよう全力頑張ってくるわ」
「頑張って!」
リックは真剣に顔をする。
そうなのだ。数々の猛者達がそこにいるのだ!ハプニングが起きるかもしれない。予想外の発言が起きるかもしれない。けれど、そこに打ち勝って戦争を回避するのだ。
それが、峠のキバが存続する唯一なのだ。
トントン
マチルダはリックより前に出て真剣な顔をする。
「失礼します。リック・ランド隊長がお見栄になりました」
リックもそれを見て、峠のキバの重大さと「一歩も間違えないなぁ」というプレッシャーに襲われそうになった。しかし、ここにいる人の中では「峠のキバ愛」は誰にでも負けない自信があった。
「失礼します」
その情熱はあったのだが、数々の猛者達がいる人達のプレッシャーで、タジロってしまった。
しかし、我慢して歩るくんだ!
「頑張るんだ!リック!」
そう心の中で叫んでいた。
王の手間から数メール足が絡んで転倒…第一会議室は「シーン」…。
「もう終わった…」
リックは、黙って立ち上がり王に敬礼をしながら所定の位置についた。何事もなかったようにしているが、内心は泣きそうになっていた。
もうおウチに帰りたい…。