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ガルシア戦記  作者: 千山一
第1巻 バスティアの魔族
33/213

第7章 バスティア決戦No.5

ベルドナルドは家を出ると当たりを見渡し、馬車を手配する。そして、手配し終えると家の中から女性が出てくる。

その女性の名は【ソラ・ルーレンス】。

ソラは【リナ・アンダーソン】という偽名を使い交渉していたのだ。

そしてソラは交渉を終えると、無言で馬車に乗り込み暗闇の中へ走り去ったのだ。


「あ〜疲れた…」


ソラの個人テント。もともとはテントは個人なんてないのだが、お偉いさんだけは許されている。ソラは怪しまれないようにベッドの布団を被って嬉しさを爆破させる。

「やった!!!これで何とか交渉に成功したし、もし、帰って来なければお義母さん(リナさん)の指示で、10日間、進軍する手筈になっていたはず。けれど、何も無ければ10日後は首都京に帰るはずだわ」

ソラはやり遂げた安心感と達成感が胸でいっぱいになり、顔が自然とニコニコし始めた。

けれど不安もある。万が一、峠のキバ達が攻めてきたら、どのようにすれば良いのか?

もちろん、手筈はリナの右腕であるベンドナルドさんが指示を出して準備万端のはずだけど、もし相手が攻めてきて、私の指示で大惨事になったら…不安で目が覚めてしまうわ。

そんな感じでソラは考えごとをしていると、突然声かけられた。


「失礼します」


声かけた方を見ると見覚えのある男が立っていた。ベルナルドだ。


「ソラ様、初交渉お疲れさまでした。どうでしたか?緊張したでしょう?」

「うん、緊張して全身が汗でびっしょりになっちゃった(笑)」

「ですよね!僕も今日が初交渉でして、緊張して胃が飛び出てるんじゃないかと思って」


ベルナルドを「ハハハッ」と笑った。


「えっ!初交渉なの!?」


ソラはビックリして目を開いた。ソラは緊張して何も喋らなかったにも関わらず、ベルドナルドは緊張を隠さずベラベラ喋っていた。それなのに緊張していたなんて…。


「はい!緊張していましたよ。けれど、問題はこれからです。副頭領がどういう風に動けるのか、そこも気になりますし、峠のキバも留まるのか?はたまた、攻めるのかも気になります。ここ10日間は正念場ですよ」


ベルナルドは真剣な顔を見せた。

本当にそうだわ。初交渉で安心したけど、ここ10日間は正念場だわ!気を引き締めてなければ…。


「もし、急に動けるのであれば、早く動けるように準備しましょう。まずはトップで話し合い、次に全体を集めて動ける準備をする。これで抜かりはないでしょう。では、早速」


ベルナルドはテーブルとイスを取り出し、打ち合わせをした。これで仕事が終わりだと思ったソラであったが「まだまだ仕事は続くのか?」と落胆した思いと「やってやるわよ!」という感情で入り乱れていた。


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