第7章 バスティア決戦No.2
峠のキバ
人々が慌ただしく声が荒げているのと反対に、薄暗い4畳半の部屋ではテーブルに置いてあった地図と睨めっこをしている男性がいた。
その名は「マクロス」。
マクロスは地図を見て「ぶつぶつ」と独り言のように呟いていたが、やがてマクロスは天を仰ぎため息をついてしまった。
「何百パターンのシュミレーションをしても失敗に終わる…」
そうやって頭を抱えてしまっていたのだ。
コンコン
突然、ドアのノックがした。
「入れ」
「失礼します」
中に入ってきたのが峠のキバの筆頭隊長「リック・ランド」だ。峠のキバは勿論、峠のキバの王「ローレンス王」のカリスマ性で成り立っているが、末端になるとバラバラになり困難になってしまう。そこで末端を一枚岩のリーダーとして挙げられるのが筆頭隊長のリックだ。
リックは以前から王になるべく、帝王学を学んでいたが、カリスマ性のローレンス王の出現によってどうで良くなった。いや、忠誠を誓ったのだ。
「江上国軍は藩上に留まり、機会を伺っています」
「………」
マクロスは少し考えを巡らせて考える。
「藩上はとっくにスパイから撤退し、臨戦体制を取っている。長年経験だが、臨戦体制を取っているにも関わらず戦争する気配も感じない」
マクロスは「ポツン」と呟いた。
「戦争する気ないんじゃないか?」
リックはビックリしていた。果たしてこれは願望なのか?はたまた、油断なのか?マクロスは考えていた。
もちろん「戦争はしない!」ということに越したことはないが、油断して戦争は全滅することは避けねばならない。
「何か手はないのか?」
「戦争をするシグナルみたいものが欲しい。何か手立てはないのか?」そう感じたマクロスは、リックに対して問うてみた。
「おそらく無いでしようね。スパイとかあったら良いでしょうけどね…」
リックは「全然ダメ…」という顔をした。おそらく何もないのだ。いや、今の峠のキバには何か、隠れている部分があって、それを見つければ糸口が見つかるはずだ。その何かが分からなければ意味がないのではあるが…。
「本日、最終の軍事会議です。もし、戦争突入のであれば長い目を見て壊滅するでしょう」
「………」
「それは分かっているのだ!」そう感じたマクロスは頭を抱えてしまった。
もし、戦争が回避できる重要なパーツを投げれば当然戦争しない。そうでなければ戦争続行である。それはある意味、死刑宣告をするようなものである。
「何か、いい案はないのか?」
「…もし、可能であれば私が一人交渉していきましょうか?」
マクロスはそれを聞いて、思わず立ち上がり声を荒げた。
「ふざけるなよ!もし、亡くなったらどうするんだよ!」
「それは次の筆頭隊長に譲ります!もし、戦争が勃発したのであれば全滅になるでしょう。そうなったら筆頭隊長なんて意味がないですよ!」
リックは「バン!」机を叩き、真剣な眼差しで見つめた。「どんなにシュミレーションでも、全滅する…」
ちょっと考え見れば分かるはずだ。それくらい圧倒的な軍の差があるのだ。
「…分かった。許可しよう」
「ありがとうございます。早速ローレンス王に報告してくれますか?軍の中枢に行って交渉していきましょう」
リックは頭を下げ真剣な眼差しの顔をした。
「あとは頼みます」
「あぁ…」
リックは「クルリッ」と180度回転し歩いていった。「全滅する…」マクロスはそう感じてはいたが、リックの真剣な眼差しと行動を見て、初めて気付かされた。
そして、同時にリックが亡くならないようにありとあらゆる手段はないのか?シュミレーションを使って対策していった。