第6章 故郷バスティアへ No.5
「もう、夜明けだなぁ…」
ガルシアは森の茂みから様子を伺った。何故、そんな事をしているのかと言うと、忍者である「ジャックが来るんじゃないか?」ということだ。つまり「カレーのためには念には念を」ということだ。
まぁ、徹夜気味だから眠たいのもあるけど…何にせよ。注意深く様子を見て行かなければならないのだ。
ガルシアは眠たいのを我慢しながら、様子を見ているといきなり男性が飛び出てきた。
「おい!あれはジャックだ!」
その男性はキョロキョロしながら列の顔を見ている。そして不審に思ったのか、中の兵士(バスティア兵)がゆっくり歩き、尋問する。
最初は和やかな話し合いをしているが、段々雲行きが怪しくなり、兵士を突き飛ばして逃げていった…。
まぁ、あれだけすれば二度と表立っては行けないのだろう。
ガルシアは笑いを堪えながら「今行くのは良くない!」と判断し、仮眠を取る。
「おい!もう昼過ぎだぞ!」
ベルはガルシアの方に向けて声をかけた。どうやら、寝過ぎてしまったみたいだ。
よく見ると昼休憩なのか、普段なら長蛇の列が減ったような気がする。
俺は眠たい顔を擦りながら、両手を上げて背伸びをする。そして、身支度をしながらバスティアの検問所に向かうのであった。
ーーー
「あ〜も、お終いだ…」
俺はジャック。何とか、追っ手を振り上がりながらバスティアから目と鼻の先にあるルクの町に本拠地のテーブルで悩んでいた。というよりも絶望していたのだ。
何で、ガルシアという男を信頼してしまったのだろうか…。
ガルシアのことを思うと、腹が立って仕方がないのだ。しかも、面が割れて暫くはバスティアには行けないし…それよりも、副頭領のことを思うと自然とガタガタ震え出すのだ。
「あ〜あ、残念ッス。お先真っ暗ッス」
ピキピキッ!
すんげームカつく発言をしたのがバーニンスだ。バーニンスはガルシアの脱走を知らず、朝一で駆けつけて通行証を取ってきたのだ。
「ジャックさんは面が割れているっしょ?ロザンさんは早急に副頭領の所で報告をするとして俺が行きましょうか?」
本来なら怒鳴り散らすのだが、そんな気分でないので素直に従う。
「あぁ、頼むよ」
ジャックはため息をついた。今はそれどころでない。どうすれば丸く収まるのか?そのことに集中する。冷静に考えて降格するのは避けられない。しかし、どれだけ副頭領が怒っているのか、死か生かそれぐらい大きいのだ。
ジャックは悩んでいた。
素直に謝るのか?それとも言い訳をするのか?その時の判断で人生の岐路に立っていた。
「まぁ、まぁ、落ち込んでも仕方がないッス。誰にでもあることっス!どうすれば良いのか?最善の策を考えるっス」
バーニンスは何だか申し訳ないと思ったのか、笑いながらジャックの肩を「ポンポン」と叩いた。
ムカッ!
「だったら、何か良い案はないのか?」
「ないッス!」
バーニンスは百万の笑みで返してきた。
ジャックは無言で剣を握る。
「待つッス!待つッス!今、◯ったら罪を重ねるだけでしょう?得策じゃないッス!」
慌てるバーニンスはジャックの剣を握り締めたのだが、今の状況の事を考えると諦めがつき、イスを下ろしたのを見て安堵する。
「ふ〜…冗談ッス!少しぐらいユーモアあった方がいいっしょ!」
ジャックはバーニンスを無視して、今の状況を整理する。確か、酔い潰れてしまって寝てたような…それで、バーニンスに叩き起こされて、二人が居ないことを知って、慌てて通行証がないことが発覚した。
そして、俺はパニックになりバスティアの検問所の所まで行き、誰かいないかを探した。
ここでしくじったポイントは、そのままの姿で行ったことだ。もし、しくじらなければ業者か、冒険者になって「そんなことは知らない!」と追い返せていたかもしれない。しかし、俺はパニックになり突き飛ばしてしまった…もう当分はバスティアには行けない。
指名手配犯だ…いや、まてよ。そもそも、指名手配犯に厳しいバスティアに行かせたのは副頭領なのか?もし副頭領だったら、何を考えて寄越したのだろうか…?ジャックは頭の中で考える。
ガチャッ!
ジャックは慌てた様子で男を見た。ロザンだ!
「失礼します!ついに江上国軍が侵攻してきました!」
ジャックは青ざめてしまった。
江上国。勿論、大規模な軍隊はゆっくり侵攻しているのだが、少数精鋭部隊の部隊の忍者軍は別で2、3日にはここバスティアのお膝元、ルクに着くはず。では、何故早急に軍を動かせることができたのだろうか?早くても半月はかかるはずだ。
「…それと言いにくいのですが、ガルシアとベル様は今しがたバスティアの方に入ったみたいです…確保しましょうか?」
「いや、泳がしておけ!すぐに情報は入ってくるはずがない。そう感じているのなら、チャンスがあるはずだ!」
ジャックは闇の中で光明が刺していた。
これを逃せば意味がない!新たな光を類寄せていた。
「絶対、捕まえてやるからな!」
そう!これは生死を分けた勝負なのだから。




