第6章 故郷バスティアへ No.4
夕食時
ガルシアがドアをノックする。
「コンコン」
ガルシアはゆっくりとドアを押した。部屋の中にはジャックとその部下が待機していた。そして、食事には質素だか、食べるには十分の食事を用意してあった。
「どうだ。ゆっくりできたか?まずは食事にしよう。作戦はそれからだ」
ジャックは「ニコッ」と笑ってテーブルに着いた。
食後、応接間に移動し「ロイド奪還作戦」について話を聞く。
話はこうだ。
首都バスティアに行き怪しまれないように牢屋のロイドを奪還し、闇の中、空き家に火を放ち、火に注目している隙にロイド一行はバスティアから逃げて江上国に帰還という訳だ。
当たり前っちゃ当然だが、奪還作戦に自由時間はない。むしろ、一週間は怪しまれないように身を潜めるのが常識だ。
だが「俺の自由な時間を返せ!」と俺は言いたい!そもそもカレーを求めて、はるばるマスティアから旅をしたのに大都市のバスティアまで来てカレーを食えないなんて…行った意味がないじゃないか!?
だいたい、無理やり連れて来られてバスティアの不法入国の罪にいるのに…それはあんまりじゃないか!?
ガルシアは明らかに不満を溜めていた。
「…とここまでが作戦の概要だ。バスティア城にはあまり詳しくないから上手く言えないが、向こうのバスティア城に詳しい人物がいるから、その人に聞いて欲しい。まぁ、俺は日帰りだと怪しまれるから2、3日は一緒に滞在はするけどな」
ジャックは「ガハハハ」と豪快に笑った。
「まぁ、細かい作業は後にして初対面の盃と行こうじゃないか!?」
ジャックはグラス3つを取り出してアルコールの瓶からグラスに注いだ。そして、3つグラスに注ぎ込んで「乾杯!」と同時、口の中に注ぎ込む。
「う、ゲホゲホッ!」
ジャックは「おっ!」という顔をした。
「ガハハハ!こんな酒、珍しいか!いや〜すまん!すまん!アルコールがキツずぎたみたいだな。まぁ、酒は色々あるから楽しいだろ?」
ジャックは豪快に笑った。
キツすぎんだよ!一口飲んだだけで、頭がクラクラする…。
「ん?何だ?そっちの方は平気なのか?」
ベルはドヤ顔でお酒をグラスを飲み干した。
「ガハハハ!けっこう、けっこう、ベルは大酒飲みの資質があるぞ!さぁ、飲み勝負をしよう!」
ジャックは余っているグラスを飲み干し「おかわり!」と右手を挙げた。
ガルシアはジャックの勝負を託し、ジャックの様子を見る。
数時間後ーーー
部下も出払って3人で飲む。ジャックは泥酔している様子だ。ガルシアは「今だ!」と思い、発言を口にする。
「ジャックさん?通行証ってあるじゃないですか?ホンモノかどうか見せてくれません?もし、偽物だったら捕まるだけでなく、拷問をしなくちゃいけないんで…イヤですよ!拷問は!?」
ガルシアは酔っ払っているフリをした。「フリをした」といったが、まさにその通りである!ジャックがベロンベロンになったと同時に、アルコールを水にすり替えておいたのだ。おかげで、ガルシアとベルは酔い潰れる寸前を持ち直して、何とか意識が保てる状態になっていた。
「ガハハハ!それもそうだな…副頭領は直前以外は見せるなと言われたが、自分の手帳が偽物だと分からないもんな!」
ジャックはズボンからカギを取り出し、フラフラしながらテーブルの所まで歩いていった。そして、テーブルの端に置いてあるカギ付きの押し入れを開け、2枚の通行証を取り出しガルシアとベルの方に投げた。
「ほれ、通行証だ。ホンモノと変わらないだろ?」
「本当っすね!」
まさに、偽物屋さんが作った代物だ!ホンモノと偽物の違いが分からない。ガルシアは「これならイケる!」と思った。
ガルシアはニヤニヤしたが、慌てて酔っ払いのフリをした。
「いつまで持ってんだよ。ほれ、かせ!」
ジャックは強引に取り上げると、元のいたテーブルにしまった。
「もしかして、お前…盗むんじゃ…」
ガルシアは一瞬「まさか、バレているんじゃ…」と思ってドキッとした。
「んなわけないか!盗もうとしてもすぐに、忍者は駆けつけるし、頑丈で硬いしな」
と言って「ガハハハ!」と豪快に笑い飛ばした。
それからさらに数時間後、ジャックは酔い潰れて寝てしまった。そして、ガルシアとベルはアイコンタクトをし、ジャックのポケットから、カギを取り出し、2つの通行証をゲットした。
「ふ〜やっと、手に入れた」
ガルシアはゲンナリした顔をしてボソッと口にした。隣にいた、ベルは慌てて手一本を示した。ガルシアも黙る。
用が済んだら、さっさとズラかる。ガルシアの教訓だ。ここにいても意味がない。むしろ、状態を悪化してしまう。
ガルシアは2人でバスティアの方に向かった。