第5章修行開始 No.8
「おじさん?」
「誰がおじさんじゃ!まったく、ベルから『おじさん』なんて聞いたのは数年ぶりじゃ…相変わらずじゃのう」
バッツは白い目で見た。
「…まぁ、ええわ。ソラさん、怪我せんかったか?」
「あ、はい、おかけさまで」
「うん!良かった、良かった」
バッツは父親の目のような顔になって「ホッ」と一息をついた。それから、焚き火の方に近づき「ドカッ」と腰を下ろす。
「今日はもう遅い。明日から計画を立てよう。あとそれから、あんま粗相がないように!見つかったら殺されるぞ」
ガルシアも関係ないが一緒に「はい!」と言ってしまった。
ガルシアは平然と装ってはいるが、内心はパニック状態である。別れてから1日も経ってはいないぞ!なのに、あそこまでいくとは…。
ガルシアは羨ましいという気持ちと「何やってんだよ!」という気持ちの半々で感情を揺さぶりかけていた。
「いや〜わり、わり」
ベルはガルシアに対して軽い気持ちで謝った。
ガルシアは本来なら「イラッ」するんだが、意識が遠くにあるのか、うわの空である。
「ん…あぁ、いいよ。悪い、今日、疲れているから先に寝るわ。ほんじゃ、おやすみ」
ガルシアは横になり、しばらくして寝息を立てた。
「ガルシアさんの様子がヘンだわ。アンタ、何もしてないでしょうね〜」
ソラは疑いの目で見た。
「なんもしてないって!ほれ、ガルシアが着いてから移動してないだろう?」
「確かに…」
ソラは考え込んでいた。
「ほら〜だから何もないって!いつも、俺だと思ったら困るなぁ」
「何よ!」
ソラは「キリッ」と睨む。そして、言いかけた時、バッツが仲裁に入り怒鳴り散らす。
「止めんか!どんなに仲が良くても、言い争ったら元もないぞ!将来は、江上国のトップに立つんじゃから今から言い争ってどないするんじゃ!」
ベルとソラは「ぶつぶつ」と言いながら、言い争いを止める。
「ふ〜老人には堪えるんじゃから言い争いはしてくれるなよ。ほれ、さっさと寝んか」
ベルとソラは「ブスッ」としながら顔を見ずに「ゴロン」と仰向けになる。まだ少し夜には早いが無理やり目をつむる。やがて寝息を立ていた。最終日、果たして辿り着けるのか運命はいかに。
ーーー
チュンチュン
「ふぁ〜」
ガルシアは力いっぱい背伸びをする。昨夜は体的にも精神的にも疲れたせいか、横になってから数秒で寝ていた。
「あ、おはよう」
「おはよう」
支度の準備をしていたのはソラだ。ソラは一人で慌しく朝食の準備をしている。
「そんなことしなくてもいいのに…」
世間では朝食は女が作るものというのが常識だ!ということになっているが、みんなで協力して作れば良いのにと思う。
「なんか、手伝うよ」
ソラはビックリした顔をした。
いやいや、そんなことしなくてもいいのに…。
「いえいえ、そんな結構ですよ」
「全然、気にしなくていいのに…なんか、手伝うよ。スープ混ぜれば良いかな?」
「じゃ…スープを混ぜて下さい。ありがとうございます!」
半ば強引に協力して食事の準備に取り掛かる。強引に行かないと絶対協力しないもんな…。
そして、ゾロゾロとみんなが集まってくる。
そして、食べ終えた後、円陣になって話し合いを始める。
「結論から言おう。走っても、徹夜の中、歩いてもほぼ0に近い…そういう訳じゃ」
何となく分かっていたけど、こうも現実的に告げるとショックがでかい。
「じゃ、私が事情を言えば許してくれないかな?」
バッツは首を振った。
「多分、ダメじゃろう。ソラが落ちたことは情報済みじゃし、これを含めて旅じゃ。おそらく、計画は絶対じゃからのう…」
ガルシア一同は雰囲気が重く、黙りこくってしまった。それから、何分たったのだろうか?
ソラが「あっ」と閃いた声を出した。
「あるじゃない!唯一の打開策が!」
「どこにあるんだよ!一分、一秒も許さないババだよ?あるわけがない!」
ベルは諦めた顔を見せた。
「それがあるのよ!ココに!」
ソラは興奮したかのように、上空を指さした。
「あっ」
ソラ以外のガルシア一同は上空を見上げた。