第5章修行開始 No.4
「あっ、それとって」
「はーい」
ベルとソラは一緒になって作業している。
ガルシアは「おっ」と思わせる場面に遭遇した。それはベルとソラの「二人」が一緒になって作業しているからである。
ガルシアにとって、まさに親みたいな感じがして涙を堪えるのが必死だった。
…まぁ、親ではないけど。
二人の仲を邪魔してはいけないと思い、少し遠ざける。微笑ましい光景だ!
しかし、この微笑ましい光景をぶち壊す人物が現れた。
その人物の名は「バッツ」である。
「おっ!おふたりさん、仲が良いのう!ヒュー!ヒュー!」
バッツは二人の仲を切り裂いていく。その二人はお互い顔を赤く染め、お互いの距離が遠ざかった。
正直、殺意が湧いたが、これ以上、雰囲気が悪くならないようにグッと堪える。
「ん?なんじゃ?つまらんのう」
頼むから喋らんでくれ!心の底から叫んでいたが、初日からすれば少しずつだが、進歩しているようである。
4人のパーティーは食事を終え、今日終える段取りを話し始めた。
「今日で4日目、ちょっと無理して長い距離歩くぞ!」
「えーー!!」
ベルは明らかに不満そうな顔である。
「ほう、あの副頭領に同じことが言えるかのう?」
「う…」
ベルは声を詰まらせた。
お母さんが怖い!怖い!というが本当に怖いかなぁ…?ちょっと、怖い部分があるかもしれないが、昔のイメージのことを思うと想像がつかない。
ちょっと興味があるなぁ…。
「じゃあ、決まりじゃな!早速、出発するぞ!」
ガルシアのグループは準備をして歩き始めた。そして、ソラはベルに対して振り向いた。
「こうなるが分かったんだから、余計なことしなくていいのに…」
「うるせー!」
ガルシアはベルに対して長年の疑問をぶつけてみた。
「昔から、お母さんが怖い!怖い!と言っているが、そんなに怖いの?」
「ああ、怖い!」
ベルは思い出すだけでブルブル震える。
「そりゃ、怖いよ!怖いってもんじゃない!始めは反発もあったけど一瞬で収まったわ…。噂じゃ、反乱する人々を次々に葬り去ったとか…」
ベルは真剣に応えた。
あっ、マジだね…。
ガルシアは江上国のことを振り返る。
もともと、江上国は反乱が起き、ドロ沼の関係であったが、そこに光の矢が刺した。
バッツではある。バッツは次々と敵を倒し、江上国を統一した!
だが、バッツは統一したが、江上国のシステムは不安定で、いつ江上国がバラバラになるか、不透明であった。
ここで、絶大な力を発揮したのが、当時、副頭領であった「リナ・アンダーソン」である。つまり、ベルのお婆さんだ。
リナは、慌てふためくバッツを見て「ここで、やらなかったら、誰がやるの!」という奮い立たせて、バッツがトップとして陰で支えて、システムの構築に全身全霊、捧げた。
そして、江上国のシステムが安定し、息子が育ち、奥さんも満足いく人が現れて「もう満足。そろそろ引退しようかなぁ?」と思っていた矢先、大きなことが起きてしまった。
それは、江上国の陰の番長である「リナ・アンダーソン」が亡くなったのである!
副頭領が突然、居なくなった。
それは、凄く衝撃的で「もうこの江上国はダメになるのでないか?」と国民の不安が殆どであった。
しかし、それを見越して次の世代に託した。それは、初代バッツの引退。そして、2代目就任である。
リナはサラのことを高く評価しており、もしもの時、サラがトップになったら、この江上国は安泰だと感じた。そして、修行時代、ありとあらゆる帝王学を学ばせるのであった。
ここで大きな誤算が生じた。サラのトップ就任ではなく、副頭領就任であった。
つまり、夫がトップに座り、影で支える。この事を知っている人は皆、驚いたのである。
そして国民が悲しみ、不安に苛まれいる所を2代目の就任する。
しかも、絶対的なシステムで絶対的な指導者が現れる。この亡くなったストーリーは見事しか言いようがないのだ。
で、この張本人であるベルがここにいる。
たしか、ベルの弟がいたはずだが、ベルの弟が継ぐべきなのに、どうして江上国のトップ、ベルが継がないといけないのか?
凄く疑問が残る。
…まぁ、本人に会えるんだし、その時に聞こう。
ガルシアは山道を歩いていた。