第5章修行開始 No.2
チュンチュン
「ふぁ〜」
日が明け始めの頃、ガルシアとベルは集合場所を目的として歩いていた。旅立つにしてもまだ早い。目を擦りながら欠伸をしていた。
「ふぁ〜」
これで何度目だろうか。最初は数えていたのだが、途中からアホらしくなって数えていない。こんな、朝早くに旅立つなんて…殺意が湧く。
ブツブツ言いながら、隣を歩いてるベルの様子を見る。
ベルは半分寝ながら歩いていた。
「ムカッ」
ガルシアは反射的に頭を叩く。
「パンッ」
気持ちいい響きだ!ガルシアの手の平はジンシンして心地よかった。
「イッテーな!!なにすんじゃ!コラー!!!」
ベルは怒りを露わにしながら、胸ぐらを掴んだ。ガルシアは無表情で言い放った。
「ゴメン。眠たそうだったから頭を叩いた…けど、なんでこうなったんかなぁ?…こんなに朝早くに準備しなくちゃいけなかったのになぁ…」
ベルは固まってしまった。
そりゃ、そうだよ!せっかく、決まっていたのに、ベルが駄々こねて「朝早い!」だの「もっと遅くしろ!」だのブツブツ言うから、バッツがキレてしまって1時間早く、集合場所になってしまったんだよ!
「昨日は悪かったよ…」
「別にいいよ」
「だって、バッツが、あんな事をいうから、売り言葉に買い言葉になってしまったんだよ…」
「もう、いいって!」
段々、腹が立ってきた!
ベルのせいで不幸になってしまうんだよ!その時、昨日のことがよぎりながら、ロイドから言われてた「ベルのこと嫌いにならないでね」という言葉を思い出す。
まぁ、なんだかんだいっても嫌いになれないよなぁ…。
そんな時、集合場所近くにある女性が立っていた。
女性は、身長は170センチ、茶髪で長い髪なのか、後ろ髪を束ねていた。
その女性は気づいたらのか、歩いてこっちに向かってくる。
「出発する方ですよね?はじめまして【ソラ・ルーレンス】と言います。宜しくお願いします」
「お、お…こちらこそ、はじめまして」
その女性は「ソラ・ルーレンス」。
初対面のソラは美形で笑顔が素敵な方だ。ふいをつかれたのかドキドキしていた。
…もしかして、恋のよ・か・ん?
「チェンジで」
「おい!」
ソラは、ベルに思いきっりツッコミを入れる。…なんだか危険な匂いがするなぁ…。
「私が、ちょっと美形だからと言って、そんなことないんじゃない?」
「だって、独占先行だし、性格悪いし…」
ドカッ、ガラガラ!
門の壁が崩れる。
「えっ、今なんて?」
「何もないです…」
ベルはその一言だけで無言になる。やっぱ、撤回!!危険な匂いがする!
「ところで、ガルシアさんでしたっけ?急に予定が早まる事になって急いできたんですけど、何かありましたの?」
「いや…それが…」
事の顛末を話した。始めはニコニコ聞いていたが、終わる頃には顔面が赤くなり、湯気が飛び出てくるんじゃないか?ぐらい赤くなっていた。
「ベル?」
「この世に居たんだ」と思えるくらい、ソラの表情は鬼の形相になっていた。
「は、はい…」
「そこに正座しなさい!!」
約1時ぐらい、ソラはベルに対して説教していた。1時間だぞ!!離れる訳もいかず、ジッと無言で立つ苦しみ!分かるか!
説教が終盤に差し掛かった頃、バッツが現れた。
「そろそろ、説教は終わったかの?」
「もう、お義爺さんもお義爺さんです!こうなったらお義爺さんも座りなさい!」
バッツはしぶしぶ正座した。ん?今、お義爺さんって言ったよな?
これは文化の違いか?
「あの…バッツのことをお爺さんって、言いましたよね?」
「えっ?言ってませんでしたっけ?正式にベルの婚約者になりましたの」
「え?えーーー!!」
ガルシアは目を開いてビックリした。パッとベルの方を見るとベルは白目を向いている…。
本当に知らなかったんだ…そりゃそうだ、世間では、親が夫婦の縁を決めることは無くなってしまっているが、天下の副統領のサラさんだ!黙って無理やり繋げるに違いない!しかも、一生離婚なしの条件で!
「ソラはいいの?」
ガルシアは恐る恐る聞く。しかし、ソラはあっけらかんとして質問に答える。
「いや、全然。むしろ、光栄ですわ。憧れのサラ様の側に居られるなんて…」
あっ…ダメだ。こちらもサラ教徒の人だ。サラ教徒とはアメと鞭を使い分けながら、人のコントロールしていく。本来なら、その犠牲になっていないが、ごく稀に熱狂的な生徒がいる。それがサラ教なのだ。本人はそのつもりもないのだが…勢力は拡大していた。
「まだまだ、怒りが収まりませんわ!正座しなさい!」
まだ、続くのか…?辛い公開説教は続く。