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炎の都市

おれたちは、ドラゴン族の長老キルと炎の都市に行くことになった。

扉に案内するキルについていきながら、水上の都市の話を聞いた。


「なあ、キル!」

「なんだ?」

「水上の都市にはなぜ来なくなったんだ?」

「……それはだな、あの日水上の都市が水没したせいで扉が開かなくなったからだ」


やっぱりそうか。


「このドラゴン族の都市にこれたのは、水に沈んでいた扉を見つけたからなのです」

「そうだったのか」

「たくさんの扉の中からようやく見つけてきました」

「そうか」

「もしかして、まだあの中に炎の都市につながる扉があるということでしょうか?」

「多分そうだろうな。わたしの都市と水上の都市と炎の都市の3つの都市はお互いに助け合って生活していました」

「そうなんですか」

「その中でも水上の都市は進みが早く、コンピューターとやらでどんどん都市が発展していった」

「なるほど」

「そんなある日、大地震が起きた!」

「地震!?」

「地面が揺れ、建物は崩れ落ちた」

「そんな……」

「そして、この塔から見えていた水上の都市の建物が気がつくと沈没していた……助けようにも手遅れだった……」

「……」

「そして、扉を開けても水の中になってしまっていたんだ」

「そうだったんですね」

「炎の都市との扉は、つながっていたから今でも交流している」

「そうですか」

「あれから、水上の都市がどのように復活したかはまったく知らなかった」

「なるほど」

「でも、今日アオイたちをみたら安心した。水上の都市は復活したんだな」

「まあ、そういうことでしょうかね」


話をしているあいだに扉についたようだ。


「ここだ! ハドリアはこの扉のことは内緒だぞ」

「わかった」


扉のことは内緒のようだ。


「わたしだけが炎の都市にいって情報を持ち帰り、ここでの生活にやくに立つものは取り入れているのだ」

「そうなんだ」


都市のみんなが出入りできた方が発展が早いはずなのに……。

まあ、キルの考えがあるのだろう。


「では、入るぞ」

「はい」


おれたちはキルのあとについて扉に入った。

扉をくぐると、普通の街のようだった。

そして、普通の人族のようだ。

ん?

あれは、エルフ?

あれは、猫耳?

けもの族か~

ここは、人と獣が一緒に住める都市ということなんだな。

でも、炎の都市というけれど炎がまったくないぞ。


「なあ、キル炎はどこにあるんだ?」

「え? あそこにあるぞ」


キルが指をさした方をみた。

すると、山の頂上から炎があがっていた。

まるで噴火しているようだった。


「キル、あの山は大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫だ。あれが通常だ」

「そうなのか」

「あの炎があるからこの都市は夜でも明るく生活できるんだ」

「そうか」

「炎がなかったら、真っ暗で夜はなにもできなくなるぞ」

「そういうことか」


たしかに、各家の扉の横に炎を灯すたいまつがおかれている。

すべて炎で生活ができているのだろう。

電気なんてあるわけがないか。

それにしても水上の都市はどうやってあそこまで発展させたのだろうか。

おれの前に転移してきたというやつなのか。


「ナターシャ! おれの前に転移してきたやつが水上の都市を発展させたのか?」

「はい、そのとおりです」

「すごいやつだったんだな」

「はい、いまもすごいですがもうお年がお年ですから……」

「そうか……ん? いまもすごいって、水上の都市にいるのか?」

「はい、いらっしゃいます」

「え? そうなのか?」

「はい、ご紹介していませんでしたかね」

「ああ、初耳だ」

「アオイさまを転移したのもあのお方のお告げがあったのです」

「そうなのか」


じゃあ、おれがここにきたのもそいつのせいなんだな。

せいなのか、おかげなのかわからないが……。


「もどったら、紹介してくれ」

「はい、かしこまりました」


「炎の都市の長に会いにいくぞ」

「ああ、頼む」


おれたちはキルに案内され長に会いにいった。

ハドリアは興奮していた。

だってしっぽがビュンビュン動いていた。

ハドリア落ち着け。


「ここだ」


トントン!


「キルだ!」

「ああ、キルか」


男の人の声がした。

子供ではなさそうだ。

扉があいた。

すると、みるからに好青年といわんばかりの綺麗な顔つきの青年がでてきた。


「やあ、キルいらっしゃい」

「ハルヒ、お客を連れてきた」

「え? お客?」

「わたしは水上の都市からきたアオイと申します」

「水上の都市?」

「はい」

「あの、水上の都市ですか?」

「はい、そうです」


ハルヒという青年はおれたちをみて驚いていた。

沈没した都市が復活したことに驚いているのだろう。


「ハルヒ、わたしも驚いたが扉をつかってきたそうだ」

「そうなのですか」

「はい、炎の都市へつながる扉はまだ見つかってはいませんがドラゴン都市にはいけました」

「そうですか、復活してよかったです」


その青年はおれに抱きつきながら喜んでいた。

よっぽど、嬉しかったのだろう。

いい人そうでよかった。


「ハルヒ、この間の炎のトラブルのせいで水上の都市の水の量が増えたんじゃないかと思って連れてきたんだ」

「そんなことがあったのですか?」

「はい、最近水の量が増えたのと水の温度が少し上がったと報告を受けています」

「そうでしたか。まさしく、炎のトラブルのせいですね」

「なにがあったんですか?」

「それが、あの山の炎が消えかかっていて大騒ぎになりました」

「あの炎はこの都市の生活にかかわることですもんね」

「よくご存じで……そうなんです。あの炎が消えるということはこの都市が終わるということになります」

「そうですね」

「そこで、キルに相談をしてドラゴン族から大量の炎を放出できる方をお呼びしてなんとか復活したのです」


ドラゴン族は炎を放出できるのか~

山の炎がなくても、ドラゴン族がいれば生活できるのでは?


「アオイ、ならドラゴン族もここで暮らせばいいのでは? と思っただろう」

「いやいや、そんなこと思ってないよ」


キル、意外とするどいな。


「わたしも考えたことがあるが、ドラゴン族は集団で生活するんだ。全員で移住は無理なんだ」

「なるほど……」

「だから、困ったときは助けるということにしたのだ」


「その時の炎が山からこぼれたせいで水の温度が少しあがってしまったんだ」

「そのせいで水の温度が上がったのか」

「水の量もそのせいだ」

「温度があがるともとの温度にしようと水の量も増えるというわけだ」


よくわからないが、水没しないようだな。

安心した。


「ナターシャ、よかったな」

「はい、よかったです」

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