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9話

 あれから1週間、アグラス奴隷商館の冒険者部隊は順調に機能している。チビ達も危なげなくゴブリンやコボルトを倒しているようだ。それでもまだ、討伐隊が足りないのか、朝に行くと防壁に張り付いたゴブリンをたまに見るようになったとランデル達から報告を受けている。うちにも冒険者ギルドからもう少し人員を出せないかとの要請があったが、もうこれ以上は無理である。農奴用の奴隷は春のうちに売り切ってしまったし、館の運営用の奴隷はさすがに動かせない。


 これ以上は無い袖は振れない、冒険者ギルドには諦めてもらって、西区や東区、北区の奴隷商館に頼んでくれと言ったが、もうすでにそちらにも奴隷を回してもらっているそうだ。まあそうだろうなとは思ったが、北区の奴もこんな依頼を受けるだけの要領は持ち合わせているのだなと思う一方、普段も冒険者業を奴隷にやらせればいいのにと思う。冒険者ギルドの話だと、やらせているように聞いてないんだよなぁ。


 チビ達にも冒険者をやってみた感想を聞いている。最初はやはり怖かったようだが、今は皆と冒険者をやるのが楽しいと、いい方向に気持ちが振れていると思う。大きなけがもなく、小さな傷も4人の回復魔法使いがきっちりと治療をしているようだ。囲んで叩くのだと陣形を見せてくれたりもした。しっかりと成長してくれているようである。他の4人の魔法使いも魔法を使って攻撃したり、支援魔法を使ったりして、魔法使いとしてしっかりと活躍しているとのことだ。教えていることをしっかりと実践できているみたいで良い傾向である。


 それに魔法を使う冒険者の噂が広がればいいと思う。今の時期は貴族の私兵も何時もより多く巡回している。主に夜の時間に貴族の私兵は使われているが、昼間にもいることはいる。冒険者が昼間、貴族の私兵は夜間と棲み分けをしているというよりかは、冒険者の多くが昼間しか活動していないというのが一番の理由なのだが、自由業の冒険者の時間を縛ることは難しいし、強制することは領法で禁止されている。でないと、質のいい冒険者が住みやすい、活動しやすい都市に引っ越していしまうからだ。


 この時期は稼ぎ時だから冒険者も集まってくる。それ以外の時は、住みやすい、活動しやすいと思うところで冒険者は活動をしている。魔石の確保が重要なアーノルド辺境伯領都にとって冒険者が住みにくい、活動しにくいと思われることは損失でしかないし、スタンピードの規模も普段の刈り取りが少なければ少ないほど大きなスタンピードになると噂されている。であるから、領法で冒険者をしっかりと守る法律が制定されている。奴隷であったって、冒険者であれば領法で守られる。それは、しっかりと確認している。


 まあ、うちの狙いとしては、貴族の私兵からこういう奴隷の冒険者がいるって噂になればいいと思っている。特に魔法を使っていたなんて噂を流してくれれば、魔法兵として奴隷を高く買ってくれるだろうと思う。うちの奴隷商館が高級奴隷を扱っているというのは、まずは貴族たちに伝わらないと商売にならない。売り先は貴族だけではないが、ターゲットは貴族である。今回のうちの奴隷たちの活躍が貴族の耳に入ることを祈っている。


 貴族への営業も視野に入れないといけないんだろうけど、貴族への繋ぎがまず無いんだよなぁ。いきなり行って、奴隷買ってくださいではどう考えても負けが見えている。だから今回の冒険者ギルドの要請は渡りに船だったりしている。今年いきなりとは言わないが、数年後には貴族への奴隷を売れるようになっていればいいなとは思う。


 因みに貴族の私兵で辺境伯領軍でない者たちは、冬の社交のために集まってきた寄り子貴族たちが道中の護衛のために引き連れている兵士たちだ。晩秋のスタンピードに兵を持ってきましたよと寄り子たちが集まってきている。そのため、この時期だけ貴族の私兵が増えるのだ。何時もは各領地にいるからね。仕方ないね。大所帯だと500の兵を動員する貴族家もあるらしいから凄いよな。ただ、質より量だったりもする訳で、使えるかどうかはその貴族次第だということは言うに難くない。


 うちの奴隷商館は量より質を心がけている。魔法使いなんてその最たるものだ。後は貴族の使用人の教育だったり、難しめの読み書き計算だったりと、質質質で勝負なのだ。北区の奴隷商館とは違うのだよ。…その分教育に時間が掛かるし、売り手先もまだ無い訳だけど、いつか必ず収穫の時が来ると待ち構えてやるのだ。魔法使いなんて金貨100枚からなのだ。数打ちものとは訳が違うのだよ。…売れればだが。


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