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刻印士の奴隷商生活  作者: ルケア


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28/30

28話

 晩秋も終わり、初冬へと移り変わる頃。毎度毎度のスタンピードは終わりを迎え、『英雄』殿の詩が町中に囃し立てられている。因みに今年もオークキングだった模様。


 さて、治療院はというと、何時もの様に行列を為している。あちらこちらから出てきている農民の出稼ぎ組も、出てきた分は稼いで帰ると言わんばかりの勢いで大怪我をしては治療院に通うを繰り返している。冒険者たちも負けてはおらず、クランが機能し始めたのか、新人たちが大怪我をして担ぎ込まれるといったこともなく、実に平穏に狩りができているようだ。毎年のように見た、稼ぎが治療費に代わる絶望とした表情を、今年は殆ど見ていない。恐らく、クランのバックアップ体制がしっかりと機能しているのだろう。俺も口を出した甲斐があるってもんだ。


 毎度、この時期に欠かさない情報収集だが、今年は全体としては、例年ほど荒れることはなさそうな感じだった。東部方面は今年も豊作で開拓村も順調に大きくなっているようだ。今年もこちらからの奴隷の流入はなさそうな感じだ。辺境の開拓も大変だろうに、それを指揮する貴族も大変だろうな。完全に他人事である。


 南部の方は、今年は戦争という名の小競り合いが無かった様だ。麦の収穫も豊作までは行かないまでも、よく実ったそうだ。これでは口減らしも幾らか少なくなるだろう。ただ、相変わらず盗賊の征伐はあるようで、犯罪奴隷には事欠かなさそうだ。…いや、犯罪奴隷は扱う予定はないのでいらんのだが。貴族の私兵からも、今年も盗賊ばかりを相手にしていたとの愚痴を聞いているので、相当な量の盗賊が居たんだろう。


 で、問題の西部だが、麦の高騰は変わらず、税の取り立ても変わらず。そして収穫の方はそこそこ良かったみたいだ。去年ほど、口減らしの数も減るだろう。ただ、やはり南西部の地域では、相変わらずの重税体制の様子。多分、まともな貴族ではなさそうだ。アーノルド辺境伯閥の貴族家の領からの農民の出稼ぎ組からは、重税を敷かれているとの噂は聞かないので、この東部派閥の貴族はまともな貴族様なのだろう。少なくとも税は重く摂ってはいなさそうである。うちの治療院の税も奴隷商館の税も商業ギルドを通じて払っているが、治療院の利益を考えたら微々たるものだ。アーノルド辺境伯領がまともな領で本当に良かったと思う。


 そんな訳で、今年の奴隷の入りは悪そうだ。それでも100は下らないはずだ。何故かそれほど子供の数は多いのだ。口減らしに売るなら作らねば良いだろうに。…恐らくだが、殆どは農閑期の子供だろう。村に娯楽なんてありはしない。やることといえばそのくらいなのだ。男なら働き口に、女なら嫁に。そうで無ければ口減らし。この領都では孤児でも食っていけるがための事なのだろう。人口が増えすぎないのも、スラムが無くならないのも、殆どが冒険者をやって、命を落とすからだ。そんな感じだから、子供を捨てるのをこの町にするのだろう。


 だが、それも今年までだ。もうむやみやたらに冒険者が死にはしまい。クランという組織が動き出したのだ。これまでならば死んでいたはずの子供が、生きて稼げるようになり、人口も増え、スラムを追いやっていくだろう。そこまでするつもりは無かった。でも、そこまでの事をしたいと思った。子供を無暗に死んでもいい環境にしたくなかった。ただ、それだけの事だが、それがこの辺境伯領を少しだけ変えていくだろう。悪い方ではなく良い方に。なるべく多くが生きられるように。俺の力で。


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