表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

俺の青春は


「おはよう」


 篠原さんも通学中に一緒になった。けど、この時間に見かけることは今まで一度もなかった。


「あれ? 篠原さんもこの時間?」

「えっと、少しだけ待ってたかな」

「待ってた?」

「うん。ほんの少しだけね。昨日の事もあるし、少し心配で。朝も一緒に行こうかと。いいかな?」


 綾乃の目が少しだけ獣の目になっている。俺は何か変なことしたのか?


「百合。文也は朝、私と一緒に行くから平気だよ。心配してくれてありがとう」

「でも、もしかしてってことあるでしょ? 一人よりも二人の方が安心だよね? ね、条君」

「俺はどっちでもいいかな……」


 なんとなく綾乃からは赤いオーラ。篠原さんからは青いオーラが出ているように見えてしまった。

 昨日の一件依頼、彼女たちの中で何かが変わったのだろうか……。


 ※ ※ ※


 昼休み。楽しい楽しいお昼の時間。になると思っていた。


「二人よりも三人で食べた方がおいしいわよね?」

「私は一条君と二人でも問題はないのですけど……」

「えっと、俺はどっちでも……」

「「黙って食べてて」」


 せっかく屋上に来て、ゆっくりとお昼の時間が過ごせると思っていたのに……。

 この二人は何を考えているのだろう。


「(一条君の容態に変わりは?)」

「(朝一で観察にしにいったけど、変わりなかったわ。寝顔がちょっとカワイイかった)」

「(なにしてるんでしすか! それで、写真は撮ったのですか?)」

「(もちろん。後で送るわね)」

「(一条君に怪しまれないように、治療をしないと)」

「(本人が自分の意志で青春するって、結構難しいわね)」

「(頑張りましょ。私たちにしか、できないこと)」

「(だね。百合、教室でしっかりと見ててね)」

「(うん、任せて。あ、美衣ちゃんから連絡が)」


『昨夜寝た後に、体をこっそりチェックしたけど変わりはなかったです』


 持参した弁当を食べながら二人を見ている。スマホを見たあたりから、二人の目がきつくなった。

 いたずらメールでも届いたのだろうか。


「(こっそりと)」

「(体をちぇっくですか)」

「(異常がないならいいけど、なんだか)」

「(なんだかですね。それぞれ、できる範囲で頑張りましょう)」

「(文也、治るかな……)」

「(治しましょう。私たちの手で)」


 二人の目が、さっきとは違って優しい目つきになった。解決でもしたのか?


「文也、明日のお弁当は私が作ってあげる」

「え? 別にいいよ」

「私はクッキーでも持ってきますね」


 午後の昼下がり。今までふいていなかった風が、ゆっくりと吹き始める。

 そして、動いていなかった心の風車が少しづつ動き始めた。

 そんな気がした。


「いい風ですね……」

「本当、雲一つない。真っ青な空! 文也もにも何か感じる?」


 雲一つない、空を見上げた。


「青春って、こんな感じなのか?」


 二人の視線が俺に向く。


「かもね。青春って何だろ? 百合は青春って何だと思う?」

「私ですか? 私の思う青春……」


 篠原さんは頬を赤くし、目を閉じて一言つぶやく。


「好きな人との恋、かな」


 青春。俺には好きな人がいない。部活もやってないし、勉強にも打ち込んでいない。

 毎日だらだら過ごしているだけ。こんな過ごし方でいいのか?


「私は何事にも一生懸命取り組む! だから、今は青春している!」

「綾乃のやりたいことってなんだ?」


 部活? 委員会? こいつに好きな奴っていたっけ?


「文也には秘密! そのうち教えてあげるよ」

「ケチだな」

「ケチで結構。私も今、青春真っただ中だからさ」

「私も、いま青春していると思うよ」


「俺も二人みたいに、青春できるのか……」


「「できるよ」」


 二人の笑顔が、俺に向けられる。きっと、俺も青春することができる。


 そんな気がした。



─────


 青春はやろうと思ってやるものではない。

 気が付いたら青春しているものだ。


 恋。

 部活。

 委員会。

 課外活動。

 何かを感じる。

 何かに打ち込む。


 いつ、どこで、どんな時に。


 でも、それは、人それぞれ。


 もしかしたら十代ではなく、二十代、三十代なのかもしれない。


 あとになって思い返す。


 あの時が青春だったんだなと。

 

 だから、今を一生懸命。


 目標に向かって進んでもいい。

 たまに道を間違ってもいい。


 気が付いたとき、それが青春だと思うのだから。



───


 ん? メール?


『お兄ちゃん! 今夜久しぶりに一緒にお風呂に入ろうか!』

『はいるか!』

『恥ずかしいの?』

『いいから、一人で入れ!』

『はーい』


 俺の青春はきっとこれからくる、はず?



お読みいただきありがとうございました。


これを読んでいる読者の皆様、あなたの青春時代はいつですか? これからですか?


もし、よろしかったら下の☆を★にお願いいたします。


他にも短編を書いておりますので、そちらも合わせてどうぞ~



よろしくお願いいたします。




※ほかにも短編作品を投稿しております。


そちらも合わせてどうぞ~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ