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重い症状


『明日の朝迎えに行くから』


 綾乃からのメッセージ。迎えに来るって? 冗談。できればギリギリまで寝ていたいんですが。


『遠慮する。寝かせてくれ』


 すぐに返事が来た。ナニコレ? スマホに張り付いてるの?


『ダメ。起こしに行くから』


 こうなった綾乃は絶対に折れない。昔からの付き合いでなんとなくわかる。綾乃にも譲れない何かがあるのだろう。

 まったく、めんどくさいな……。


『ぎりぎりまで寝かせてくれ』

『わかった。ギリギリね』


 ここが妥協点。しょうがない、しばらくすれば飽きるだろ。

 ん? 珍しい篠原さんからもメッセージが来ている。


『体調に変わりはないですか? 少し心配しています』


 何とも優しいお言葉。美衣や綾乃とは違いますね。


『大丈夫。心配かけました。明日も学校にはちゃんと行きますね』っと。

『よかった。あの、明日一緒にお昼食べませんか?』


 返事が早すぎる。が、内容にも目を疑った。委員長からのお誘い。

 彼女は大体いつも一人でお昼を食べている。だが、ここにきて俺を誘ってきた?


『別にいいけど?』

『よかった。今日の事もあるし、万が一のことを考えて、しばらく一緒に食べましょ』


 毎日篠原さんと一緒にランチ? 俺の事を心配してくれるのか……。なんと心優しい委員長なんだ。

 委員長という、たったそれだけの理由で一クラスメイトの俺の為に。これは、ご厚意に甘えるとしよう。

 だが、クラスの男子を敵に回す可能性もある。


『わかった。じゃ、また明日』

『うん、また明日ね』


 少しニヤニヤしながらベッドで転がる。


「おにーちゃーーん! ごーはーん!」


 でかい声で妹の声が家に響き渡る。狭い家なんだ、そんな大声出すな。近所に聞こえるだろ。

 自分の部屋からでて、食卓に向かう。みそ汁のいい匂いがしてきた。


「お、いい匂いだな」

「でしょ! 頑張りました!」


 美衣のお手製夕飯。サポートは母さん。


「父さんは?」

「今日も残業だって。先に食べよ」

「美衣、ごはんよそって」

「はーい」


 なんだかちょっと嬉しく感じる。美衣が俺に夕飯を作ってくれるなんて。


「じゃじゃーん! どう? おいしそう?」


 出てきたのは普通のご飯。もしかしたら怪しい料理が出てくるのかもしれないと思っておりましたが、普通のご飯でした。

 ま、母さんのサポートがあったし、大丈夫ですよね。


「おう、おいしそう。がんばったね」


 美衣の頭をなで、ちょっとだけ微笑む。


「な、何してるの!」


 美衣は顔を赤くし、照れている。


「ほめてるだけ」

「あ、頭をなでない!」

「昔はよくしてたのになー」

「もう子供じゃない!」

「はいはい、二人とも仲がいいわね。美衣、お箸わけて」

「う、うんっ」


 少し慌てて美衣は母さんのところに走って行ってしまった。

 何照れてるんだろ?


 夕飯も終わり、床に就く。今日は色々とあって疲れた。すんなり寝ることができそうだ……。


──


 あ、朝か……。アラームが鳴る前に覚醒する。深い眠りだったみたいで、まだ頭がボーっとしていた。

 か、体が重く感じる。いつもよりも数倍の重さを感じ、体に違和感を感じた。

 まさか、何かの症状が出たのか? 内心焦りながらうっすらと目を開ける。


「お、はよ? 起きた?」


 俺の体に乗っているのは見たことのある顔。


「何、してるんだ?」

「起こしに来た」

「は?」

「昨日連絡したでしょ? 起こしに来たの」


 じゃぁ、なんで俺に乗っているんだ?


「邪魔。重い」

「ひどい……。これでもいいスタイルだねって言われているのに。重いだなんて。よよよ」

「何一人芝居してるんだよ。はよ降りてくれ」


 綾乃は本当に起こしに来やがった。ギリギリまで寝かせろって言ったのに。まったく、何を考えているのか。


「そこで、なしているのかな?」


 部屋の隅で俺の方を眺めている綾乃に声をかける。


「え? 待ってるの。一緒に行こうかなって」

「……着替えるんですけど?」

「あ、お構いなく。文也の裸なんて見飽きてるし」

「あ、っそ」


 確かにこいつには何度も見られているし、そもそも気にする必要はないのか。

 俺はジャージから制服に着替えようと、パンイチになって、シャツを探す。


「あれ? シャツどこだ? 確か昨日ここら辺に……」


 綾乃は視線を泳がせながら腕を組んでいる。心なしか頬が赤くなっている気がしないでもない。


「こ、ここにあるわよっ」


 放り投げられたシャツが宙を舞い、俺の手元に届く。


「お、さんきゅー。だったらその辺にネクタイもないか?」

「あるわよ。しかし、散らかっている部屋ね……。足の踏み場が少ししかないじゃない」

「いいんだよ。俺の部屋だ。俺が使いやすければいいの」

「よくない。体に悪いわよ。それに散らかった部屋には負のオーラがたまるわ」


 負のオーラ? もしかして、病気もそのせいだったりするのか?


「負のオーラって悪いものなのか?」

「悪いわね。激悪よ。運気が下がったり、病気になったり……」


 やっぱり……。そ、掃除をしなければ!


「文也、今『掃除しなくちゃ!』とか、思ったでしょ」

「おまえエスパーか?」

「病気、これが原因かもね……。いいわ、私も手伝ってあげる」

「い、いいのか」

「幼馴染だもん。部屋が汚くて病気になりましたとか、見過ごせないでしょ」


 少しあきれ顔で俺の方を見ている。いつもつんけんしているけど、結構優しいやつ。

 そんな綾乃とも付き合いが長い。


「なんか悪いな」

「ほら、早く準備してよ遅刻するでしょ」


 綾乃の足元にあったジャケットが宙に舞い、俺の手元に届く。


「サンキュ」

「あと、早くズボンはいた方がいいわよ。その恰好変だから」


 一言いい放ち、綾乃は部屋から出ていった。ズボン、どこにいった?


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