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Phantom Pain 1.5

「…つまりお前も、お前が言うところの「お仲間」ってことか」

 俺が尋ねると、ミロクはまた気恥ずかしそうに頷いた。

「まあ、そういうことになるね。よろしくね?」

「おいちょっと待てや。俺ぁその「お仲間」ってやつに殺されかけたっつー、そういうことかああああ??」

 アシュラが首をゴキゴキと鳴らしながら、ミロクを睨みつけた。

「そういうことになるね。でも、それは仕方がないことだから」

「仕方がないことだとおおお??」

「仕方がないことだよ。あなたが言うこと聞いてくれないから。」

「おいおいおい、ちょっと待てやあ。仲間っつーのは、傷つけ合うものじゃねえだろ。助け合ってこそ仲間ってもんじゃねえのかあああ!?」

「まあ、そういう側面もあるけど、私とあなた達はお仲間だけど、主従関係はしっかりとあるからね。」

「ほう、つまりお主はわしらが従僕者であると」

 ウェディングは口元こそニヤリと口角を挙げているが、こめかみの欠陥が浮き出ている。

「うん、そうだよ。」

 ミロクも全く相変わらず動じる様子もなく、軽々と頷いた。

 そしてその瞬間、ウェディングは自身の大きな翼をいっぱいに広げた。両翼合わせて4、5メートル近い。

 それからウェディングはびゅうと飛び上がり、空中から俺たちを見下した。

「わしは天道の子、ウェディング・ミカ・ハピネス。王の中の王ぞ。その私を、従僕者であると」

 そう言うと自身のギラギラとしたドレスは余計に輝きを放ち、俺たちを威圧した。

 そしてなんと、ウェディングが一振り翼をはばたかせると、たちまち嵐のような風が巻き起こり、そしてそれまで黒煙に包まれていた景色があっという間に晴れていった。

「うん、そうだよ。」

 ミロクはそう言ってにこっと笑った。そして、人差し指を目の前に差し出し、くいっと下に向けた。

 すると空中で輝いていたウェディングは寸分の抵抗も許されることもない勢いで、地面にたたきつけられた。

 地面にはヒビが入り、地面に食い込まんとする勢いでウェディングは落下させられた。

 鈍い音とともに、「ぐふ」と声を上げたウェディングは信じられないものを見るような目でミロクを睨んだ。

「こういうこと。わかった?もう、私だってあんまり痛いことしたいわけじゃないんだから、おとなしくしてほしいな。」

「お、おとなしくだと…このわしに…」

 息も絶え絶えである。

「てめえは一体なんなんだよおおおおお」

 アシュラも驚きの表情でミロクを見ていた。

「説明は難しいけど、輪廻転生から解脱した存在ってところかな。詳しくはまた今度、ね」

 ミロクは言った。

「輪廻転生…」

「うん。ただあなた達が私の命令に逆らえないのは、その痛みの正体は、その頭に着けているソレだよ」

 そうなのだ。先ほど気が付いたのだが、アシュラもウェディングも、ともに頭に金色の輪っかのようなものがはめ込まれている。

「それはキンコジ。あなた達罪人を縛りつけて逃がさないようにする、アイテムみたいなものだね。」

 キンコジ…?

 どこかで聞いたことがあるような気もしたが思い出せなかった。

 そして恐ろしいことに気が付いた俺は恐る恐る自らの頭にも手を伸ばした。

 そして二人と同様に、俺の頭にもそのキンコジがしっかりとはまっており、冷たい鉛のような感触が手に伝わってきた。

「おい、まじかよ…。俺もかよ」

「そうだね。皆、何しでかすかわからないからね。これからの旅路、私の言うことをちゃんと聞いて守ってもらわないといけないのだから、仕方がないこと」

 反論したくなる気持ちは山々だったが、二人の様子とこれ以上立ち止まっていても話が進まないため、諦めることにした。

「それで、残りの仲間はどこにいるんだ?」

 まずは一つ一つの事柄を紐解いていくほかない。

「うーん、実はどこか行っちゃったんだよね。」

「は?見失ったの?」

「お前馬鹿かあああああ?」

 すると俺とアシュラをむっとした表情で見まわしながら言った。

「だって、それはあなた達が悪いんだよ?まず一つ、私達が降り立ったとき、一人一人の着地点には誤差があった。2つ目、状況を理解してもらう間もなく、アシュラとウェディングが喧嘩を始めた。そして3つ目。トシオは特に遠くに着地した挙句、どんどん離れていこうとした。」

「…つまり俺らの世話してる間に、他のやつらはノコノコとどっか行っちまったと…」

「そういうことだね。うん、でも大丈夫。あなた達と同じで他の人達にもキンコジを付けてるから、何かあれば無理やりにでも呼び戻せる。それに、まあ一先ずこの人数がいれば、まずは仕事が始められる。」

「仕事?つまり、俺らにやらせようとしていることのことか」

「その通りだね。」

「ふむ、それでお主はわしらに何をさせようとしておる」

 ミロクはにこっと笑った。


「単刀直入に言うね。あなた達には、この世界の戦争を終わらせてもらうよ。」


 あまりにストレートに、それでいて理解しかねることをミロクは言ってのけた。

「戦争を?終わらせる?どういうことだ?」

 ミロクは遠くの方を指さした。

「トシオがさっき歩いていた場所。あれ何かわかる?」

「…村が焼けて無くなったみたいだったな」

 ミロクは頷いた。

「そう。あそこには小さな村があった。でも、戦争に巻き込まれて焼け落ちた。それもごく最近にね。」

「そうなのか。まあそれはわかった。それで?俺たち全員合わせて7人で?その戦争とやらを終わらせるって?そういうことか?」

「うん、そうだね。そういう人選は集めたつもりだよ」

「納得できるかあああああああ!!!!!」

 叫び声をあげたのは、アシュラだった。

「そう簡単に!!!戦争が!!!終わらせられるか!!!!!!」

「簡単なはずないよ。だからあなた達に協力してもらうの」

 アシュラは声を荒げ、肩で呼吸していた。

「そう簡単に終わらせられれば!!!!俺はああああああ!!!!!」

 叫びだ。

 アシュラはまた叫び声を上げた。

 しかし、やはりミロクは冷静だった。


「そうだよ。それしかないの。The Bookにたどり着くには」


 その名を聞いたところで、3人は静まり返った。

 The Book。

 誰もが知っている存在だ。


「私は、私達はThe Bookにたどりつかなければならないの。そのためにはまずはこの世界の戦争を終わらせる。この世界。アシュラが生きていた、修羅道の世界を」

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