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Phantom Pain 1.3

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 爆煙の最中、男が叫ぶ声が聞こえる。

 そしてまた、大きな爆発音が響いた。

「っいったい何が起こってんだよ…」

 俺がそう呟くと、宙に浮いたままのミロクは爆煙のほうに

目を向けて言った。

「あなたのお仲間、会って早々全く気が合わないらしくて、ずっと喧嘩してるみたいなの。」

「だからお仲間ってなんだよ。んなもんいねーよ。てか、少なくとも今この場にそんなやついるはずがねえ。」

「そうだね、お仲間っていうのは知り合いの意味じゃないよ。なんだろ、同業者??」

「同業者?つーことはニートのぱっぱらぱーってことか?」

「そうだった…あなた、働きもせず働く気もなく、独り孤独を噛み締めるニートさんだったね」

「否定はしねーけど、会って間もない人間に言う言葉じゃなくね?てか何で知ってる口振りなんだよ。お前、俺と会ったことあんのか?」

「初めて会ったのは、あなたが身体中の骨という骨をぐちゃぐちゃに骨折して内臓という内臓をはみ出しながら私の前に現れたときだよ」

「え、俺、やっぱりそんなひでーことになってたのかよ…夢じゃなかったんだ…」

「夢ではないけど、現実現世でもないよ。まさか私もそこまでぐちゃぐちゃになるとは思ってなかったから。他のお仲間達は負傷して倒れてはいたけど、そこまでにはなってなかったね。」

「…っつーことは、あの場に倒れてたやつらが、俺のお仲間ってことか。てか何であの時俺はあんな身体になっちまってたんだよ」

「うーん、ちょっと説明が難しいかな。魂だけだったあなたに現世のときの身体を無理やりくっつけたのだけど、普通にくっつけても魂が身体に入ってくれないから、ちょっと勢い付けて入れたというか…」

「それであの勢いだったの!??慣性やばくねえか?」

「まさか、勢いあまって身体がぐちゃぐちゃになるとは私も思ってなかったの。というか。そこまで弱い身体の人が来るとは思ってなかったから。」

「つまり俺が弱かったからぐっちゃぐちゃの粉々になったと」

 ミロクは決まりが悪そうに微笑んで、頷いた。

「まじかよ…てか、俺はやっぱり死んで魂だけになってたってことか」

「それは、そうだね。君は一度現世で死んだ。そして、私が無理やり身体と魂をくっつけなおした。もちろん、そのあとに身体を修復したのも私だよ?そうじゃないとやってもらいたいこともやってもらいたいし。」

「まじかよ、お前まじで何者なんだよ。ようはお前神様ってことか?」

「人間道においてはそういう呼び方が正しいね。人間が考えている神様の概念と私には少し解離があるけどね」

「それで、神様のあんたが、俺に何させようとしてるんだよ」

 そこまで言ったとき、また爆発音が響いた。

 そして、爆発音がした方角は煙でよく見えないが、バチバチと閃光のようなものが走り、黒煙を照らしていた。

「てめぇ、いい加減にしろやぁぁぁぁぁ!!!!」

 黒煙からまた先ほどと同じ叫び声が聞こえた。

 ミロクはふう、とため息を吐き、

「そのあたりの話は、とりあえずあなたのお仲間を止めてからかな。みんなに一緒に話しちゃいたいし。手間でしょ?一人一人にいちいち説明するの」

 と言って、空高くに舞い上がっていった。

 そして上空30メートルほどのところで停止し、爆煙のほうに身体を向けて静止した。

「あなた達、喧嘩はやめなさい」

 ミロクの透明な声は大きく拡張され、反響しながら周囲に響いた。

 そしてそれから5秒後。


「ぎゃあああああああああああああっ!!!!!!」


「ああああああああああああああああああ!!!!!!」


 2つの叫び声が響き渡った。

 どうやら、先ほど喧嘩していた俺の「お仲間」達らしい。

 2つの叫び声はしばらく続き、やがて煙が風に乗って視界が晴れていった。


 30メートルほど目前、そこには2つの影が転げ回っていた。


「いてええええええええええええ!!!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいい!!!」

 叫び声は引き続き響き渡り続ける。


 ミロクは2つの影のほうに降りていった。

 俺も後を追うように二人に近づいた。


 近づいていくと、どうやら2つの影は人間の形をしているようだった。

 先ほどの爆発からしてどんな化け物がそこにいるのかと思っていたが、意外にも人間の形をした彼らは、俺とさほど大きさも変わらない。


 ただ、「人間の形」をしているだけで、人間でないことは明らかだった。

 先ほどから口の悪い叫び声をあげているほうは、真っ赤に燃える炎のような髪を携えた男だった。筋肉隆々で、上半身は服を着ていない。そして上半身の半分くらいの面積に真っ黒のタトゥーが入っていた。そして何よりも、彼の手に当たる部分には両の手がなく、代わりに黒々と光る刀が付いている。

 まるで、闘うために生まれてきたかのような外見だった。


 そして、もう一人隣で叫び声をあげているのは、見たところほとんど人間に近い、女だった。金色の髪は膝まで届くほどに長く、ギラギラと輝いている。また、彼女のピンクの裾が短い装飾品がゴテゴテと大量についたドレスを纏いこれまたギラギラと輝いている。そして、彼女の大きな一つの特徴すらっとした色白の身体からは、真っ白の翼が伸びていた。


 しばらく叫び声をあげながら両者とも転げ回っていたが、最後は意識を失ったようで、ぴくりとも動かなくなった。


 すると、宙に浮いていたミロクが彼らの近くに降り立ち、またふう、とため息を吐いた。

「喧嘩はやめてください。こんなことではこれからの旅路、身体が持ちませんよ」

 俺もミロクの元に歩いて近づき、言った。

「なあ、多分こいつらお前の声聞こえてねえよ。てか死んだのか?」

「死ぬことはありません。ただ、「筆舌に尽くしがたい痛み」を味わっただけですよ」


 ミロクはそう言って、俺の方に微笑みかけた。

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