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記録  作者: 柳瀬
3/4

5/13 晴

 今日は朝に起きる事が出来た。

 窓から街を見ていると、仕事に行くのであろう人達が続々と歩いていく様子が見えた。

 衣類を抜いたリュックを背負い、外へ出た。

 旧市街は地図で見た通り、それほど遠くなかった。本来、バスなどを使って行くべきだと思ったが、勝手が分からないから歩いて行った。

 最初に宮殿を後ろから見た。大きいなとしか思えずぐるっと周り、正面から見て美しさに気付く。小学校の時に、学校の絵を描く授業があったが、こういう物を描いた方が随分良い。

 それから、わざと狭い路地を歩いた。

 昔、確か中学生の頃に買った写真集で見た風景を現実で見る事が出来た。

 石畳の狭い道に、黄色壁の建物、飾られた花、一直線に伸びる排水パイプ、開かれたドアの上にはBAR & Bistroの文字、店先には丸テーブルに一対の椅子。

 しばらく歩いた先の路地で看板を見ても、何か分からない店の中から男性がテーブルを運び出し、店の前に置いた。飲食店ではあるようだ。

 開けた場所へ出ると、いくつかの集団が一つの建物を写真に収めていた。何の建物か分からないが、名所ではあるらしい。後になって調べると教会だったらしい。

 裏路地にあった雑貨屋でガラスの向こうにある置物やトートバック、マグカップを眺めた。

 おそらくハンドメイドのアクセサリーを売っている店のガラス越しに商品を眺めた。

 セブンイレブンもあって驚いた。外観は旧市街に合っていて、違和感は無かった。

 表に看板を置いているお店のパスタがどうにも美味しそうに見え、ノートを取り出してその料理の名前を書き写し、店内でそれを見せ人差し指を立てた。

 ぼんやりと向かいのブティックのマネキンを眺めていたら、写真と違わないパスタが運ばれてきた。とても美味しかった。この国に来てから、ご飯を食べていなかった事を思い出した。

 そのあと、斜向かいにあったアイスクリームショップでアイスを買って海辺まで歩きながら食べた。

 船の往来を眺めて、観光客の一団の入れ替わりを見ていると、不思議と時間が経っていった。

 帰ろうかと何度もおもったが、ベンチから腰が浮かせなかった。

 街灯の明かりが灯った頃、ようやく立ち上がった。

 あまり足を上げず、引き摺る様に歩く癖があるから、石畳の道は何度も転びそうになる。

 その度に、小さく笑った。

 このホテルも今日で最後だ。

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