ウルフマン(その二)
――藤村は、自らイジメグループに手を下した訳ではない。
いや、厳密に言えば藤村がグループを壊滅させたのだが、『ウルフマン』の存在を知らない人間から見れば、藤村は何もしていないように見えた。
「将吾。帰ってたの?」
「母ちゃん。ああ、今さっきな」
将吾の母親がパートから帰ってきた。将吾は、母親と二人暮らしをしていた。
「…………」
「母ちゃん?」
母親の、少し不自然な反応を見て将吾はとっさに身構えた。
「嘘でしょ。どうせまた学校サボって一日中家でダラダラしてたんでしょ」
母親の意味不明な発言に、将吾は顔を青くした。
「……は? 何ワケわかんねー事言ってやがる。普通に学校行ってたっつの」
「……どうだか」
母親は、冷めた目で将吾を一瞥してから視線を逸らした。
「な、なんだよいきなり……」
将吾は、呆気にとられていた。
「いや、まあ良いや。それより学校の上靴買うから金くれよ。サイズはきちーわ穴は空くわでもうボロボロだぜ」
事実、将吾の上靴はもはや酷い有様である。
しかし、母親は再び不自然な目つきを見せた。
「……いやよ。そんな事言って、どうせゲーセンで遊ぶお金に使うんでしょ」
「は……はああーっ!!?」
将吾は思わず声を張り上げた。
「ふざけんじゃねーっ! 自分の息子をそんなに疑って楽しいか! 上靴はマジでボロボロなんだっつーの!」
「…………。上靴、『は』……? じゃあ、やっぱり今日学校サボったってのは本当なのね」
母親のその目は、本気だった。ふざけて言っている訳では無いらしい。
将吾は歯軋りをし、部屋の壁を蹴り飛ばすと自分の部屋へと戻っていった。
「……あの子……どうしてあんな嘘つきになっちゃったのかしら……」
一人になったリビングで、母親は寂しそうに頭を抱えた。