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期間限定の恋人  作者: 如月そら
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1.休暇

こんにちは。如月そらといいます。

いつもは、ムーンライトノベルにいますが、この作品についてはR18ではないので、こちらで掲載させて頂くことにしました。


普段はお仕事する人達の、恋愛ものを書いていたりします。


ほぼ、現代ものの、恋愛もの、お仕事ものをメインで書いています。


こちらの作品も楽しんで頂けたら、嬉しいです。

ビルの前の道路は、春には、桜並木が綺麗なのだが、その桜もすっかり散ってしまった今の時期は、緑を茂らせている木々が連なって見える。


都心にいても、なかなか季節を感じられない、と言うけれど、こんなことでも、季節は感じられるんだけど…と窓からその緑を見て、葉山すみれは思った。


「夏休みは、各自適宜取って欲しい。人事からも、強く言われているから。」


葉山すみれは、自分の席のメールから、その通達を確認して、プリントアウトし、担当しているグループ内の名簿と、カレンダーを添付した。


『お休みの申告をお願いします。』

先程プリントアウトした、通達も付ける。


働き方改革、などと言われてはいても、現場とはなかなかマッチしない内容だとみんな思っているだろう。


けれど、国の方針であり、今いるここが企業である以上、そこに逆らうことは出来ない。

ぶつくさ言いながらも、対応はするはずだ。


すみれがいるのは、総合商社だ。

すみれはその本社に勤めている、いわゆるOLである。


業務内容は営業事務、と呼ばれているものだ。

資料を用意したり、データを入力したり、外訪で走り回る営業さんを補佐するのが仕事である。


すみれの所属している本社第二営業部は、本社の中でも名前のごとく、2番目の部署だった。


それなりに客先も大きく、営業担当者は皆、忙しい。

20名ほどの営業チームに、事務チームは女子3名だ。


どうしても、業務は忙しくなりがちだし、皆、手伝って欲しい時期は重なったりもする。

その中で、極力、不公平のないように配慮しながら、手伝うのが、すみれ達の仕事でもある。


営業事務、とは言っても、商社のせいか、すみれと同じチームの女子は華やかだ。


その日は朝礼で、夏休みの申告を早めにするように、と課長からの通達があった。

だから、営業さんが出払った頃、事務チームの女子は集まって、休暇についての打ち合わせをすることにしたのだ。


すみれ以外の2人は、お休みをいつにするかで、盛り上がっている。


「あれ?葉山さん、夏休みの希望は?」

すみれはふわりとした髪を耳にかけた。


「ん…私は特に予定はないから、皆さん、先に入れてください。」

華やか、というよりはふんわり、とした笑顔。


至って地味なことは、すみれ本人は百も承知だ。


ふわりとした肩までの柔らかい髪。優しげな顔立ち。

確かに華やかではないかもしれないが、社内では癒し系として、隠れた人気がある。

しかし、その、隠れた人気は、本人は知らない。


「私、7月の頭に海外に行きたいのよね。」

「彼氏が8月休みだから、お盆の時期がいいですー。」


「すみれちゃん、9月頭とかでも、大丈夫?」

事務社員の人数は限られているから、休暇を取る時は、お互いに申告して、被らない配慮も必要だ。

不在の時は、お互いのチームのフォローも必要になる。


そんな中、すみれは海外に行くような予定もないし、彼氏もいない。

何なら、休みなんていらないくらいだ。


「はい。大丈夫です。」

2人にそう返事をして、にっこり笑う。


「すみれちゃん、本当に、希望があったら、言っていいのよ。」

「そうですよ!葉山さんは優し過ぎます!」


2人のチームメイトは、すみれのことをとても大事にしてくれている。

けれど…大人しすぎるせいか、すみれは彼氏も出来ない。


仮に素敵な人がいたとしても、素敵だなあ…と見ているうちにその人には、彼女が出来てしまうし、引っ込み思案で人見知りのすみれは、積極的に自分から声をかけるなんて、出来ない。


大人し過ぎて、合コンで、何度か顔を合わせているはずなのに、初めまして、と言われる始末だ。


すみれ自身は人の顔を覚えることは、不得意ではないので、会ったことあるんだけどなあ…と思いながらも、曖昧な笑顔を浮かべることしかできない。


『おとなし過ぎなんだよ。言いたいことないの?何、考えているのか分からない。』


元彼の言葉だ。

その通りだと思う。


けれど、すみれは、あまり、強く自己主張することを好まないのだ。

そんなだから、どうせ予定なんて、ないのだし。


「はい。いつも、ありがとうございます。でも、本当に大丈夫。えっと…もし、希望があったら、ちゃんとお伝えしますね。」


そんな様子に、「癒し系~!」と2人に頭をなでなでされる。

ありがたいなぁ、と思う。


楽しく、仕事をさせてもらっている。

幸せなことだ。

すみれは、そう思っていた。


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