4 自意識過剰
「なんかあったのか?」
昼休み、私は樹を屋上に呼び出した。
普段からあまり人がいない場所である、朝、心地よいと思った暖かい風は強くなっており木がざわめき立つ音が脳に強く響く
「ねぇ、樹」
私が質問に答えない意図がわかったのかそれ以上は追及してこなかった
「美貴が彼氏出来たらしんだけど...」
イチゴ・オレを飲んでいた樹はストローから口を離す
「マジ?先越されたじゃん」
先程までの緊張感とは180°違う小馬鹿にするような言い草である
「はぁ?あんたも彼女いないじゃん!」
こちらもムキになる
「いや、それはお互い様だろ.....」
ド正論である。
「いや......うん.....」と私は言い返せなかった。
暫く二人の間に緩やかな風がそよぐ。
........しかし、このもどかしさをどうにかわかって欲しいものである。
しばらくして、樹が探るように質問する
「実は俺もな.......」
なんか恋をした乙女のように赤面してる。
ん?いきなり流れ変わった?
「な、何....いきなり」
悪い予感がする。本能が危険を察知している。
ゆっくりと開く樹の口元に目が吸い込まれていく。
やばいこれは拒否しなければ。
「俺の片割れも彼女でき「ごめんそれは流石に無理っ!!!!」
「「えっ!?」」
私が完全にミスった気がする....。
「は?美咲?なんて?「なんでもないっ!!!」
樹の発言に更に被せて勢いでごまかす。
「いや...まぁ...お前と同じく俺は彼女出来ないって話よ.....」
「あぁ!うん!そうだね!そっちの兄弟のはなしだよね!うん!」
やばい。心臓がバクバク鳴っている。
「いやぁ。あいつが女に興味あるなんて心外すぎて言葉も出なかったよ...。」
空を見上げる樹から謎の哀愁が漂ってくる。
「アッ!ワタシヤッテナイカダイアッタンダッター!」
センチメンタルな樹を横目に私は逃げるように屋上から去っていった。
「え?あ?」と樹の腑抜けた声を出しているが美咲は無視して高速で階段を駆け下りていったのであった。