表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前科部!  作者: 蛇猫
進み始める日々と不安
96/108

囁く後輩と受験期先輩

評価にブクマ、感想とレビューもじゃんじゃん下さい!


「あ、先輩!」


昼休み、学食に行くと可愛い声が聞こえてきた。


「よ、後輩」


「もう、結構、待ったんですからね? 早くご飯を食べますよ。ボクはお腹が

 空いているんです」


頬を膨らませながらそう言うと、俺の後輩であり芋天娘の異名を持つ小戸森は

俺の手を掴んで引っ張る。


「悪かった。井上と有馬の魅力を探すので忙しかったんだ」


結果として井上の魅力は義理堅くて優しいところ、有馬の魅力は何だかんだ言いつつも

裏で虐めを消そうと頑張ってくれている正義感の強いところ、という感じで落ち着いた。


「あの人達の魅力なんて探してどうする気なんですか?」


「ま、色々とあるんだよ。色々と」


「ふ~ん。......井上先輩が悪い人ではないのは分かりましたけどボク、やっぱり

 有馬先輩は嫌いです」


小森が顔をしかめながら言う。まあ、頻繁におやつを奪われているからな。


「じゃあ、俺と有馬、どっちが好き?」


「先輩」


即答。


「え? あ、ああそう......」


俺としてはもう少し、動揺しながらの返答を予想していたのでかなり驚いた。


「別に異性としての『好き』なんて言ってませんけどね」


「分かってる、分かってる」


そんな会話をしながら昼食を頼むと、俺達は小戸森が先に確保しておいてくれた

席に座った。今日の俺の昼食は天ぷらうどん。小戸森は唐揚げ定食と芋天だ。


「はい、小戸森。あーん」


俺はうどんに乗っていた芋天を箸でつまみ上げて小戸森の口に運んだ。小戸森の

ことなので嫌がるのは目に見えている。が、だからこそ、からかいたい。


「し、しませんよ? ......でも、美味しそう。い、いやいや、でも恥ずかしいし」


誘惑に必死に抗おうと顔を真っ赤にしながら、葛藤する小戸森の口に俺は

芋天を無理矢理突っ込んだ。


「召し上がれ」


「むぐっ!? むぐっ、もごもご、はむはむおむはむ」


びっくりしながらもハムスターみたいに頬張ってる。可愛い。


「美味しいか?」


「......はい、とても」


恥ずかしさからか顔を紅くしたままの小戸森は俺から視線を逸らしながらそう言う。


「じゃ、俺は小戸森の唐揚げを貰おうかな」


レモンがたっぷり絞られて、胡椒の掛けられた小戸森の唐揚げを俺は箸で

掴んで口にほりこんだ。うん、上手い。


「ちょっ……!?」


すると、小戸森がそれを止めるように慌てた表情で俺の方に手を伸ばした。


「何だよ。一個くらい良いだろ?」


「そ、そうじゃなくて! そ、そのお箸、ボクの口に入ったヤツですよ!?

 だ、だから、その!」


小戸森はまたもや茹でダコの様に顔を紅くしながら言う。ふむ。


「......あ、間接キス」


「こんの鈍感先輩!」


バシッと頭を叩かれた。いや、ちょ、俺は鈍感じゃないんだって。ただちょっとだけ

抜けてるだけで......。ほら、雪加の好意とかにも気付いてたし。


「わ、悪い」


「全く......さっきのあーんと言い、そういう冗談はボクじゃないと通じてませんからね?

 というか、あんまりやると本気にしますよコラ」


「本気にしたらどうなんの?」


単純な疑問をぶつける。すると、小戸森は俺の耳元に顔を近付けて囁いた。


「さあ、どうなっちゃうんでしょう。でも、あまりボクを勘違いさせない方が

 身のためですよ。ふふっ」


小戸森のものとは思えないほど、艶やかで妖しい声だった。


「……え?」


一瞬、何を言われたのか理解できずにそんな声を漏らす。


「さてと、先輩。芋天、もう一枚奢ってくれませんか?」


が、彼女はそう言って笑うだけだった。小戸森の魅力は当然、天使のように優しくて

イジリ甲斐があるところだが......イジリに関しては考えた方が良いかもしれない。



「やっと、見つけた。先輩!」


「お、祐也君。どうしたのかな?」


今日の部活はオフということもあり、三年生である先輩を見つけるのには

かなり苦労したが、無事に見付けれて良かった。


「いや、先輩と何と無く話したい気分で」


そう言うと、先輩は疑わしそうな目で俺を見つめてきた。


「嘘は、ついてないみたいだね」


そうかこの人、人の感情を読み取れるんだよな。今回は先輩の魅力を探す手段が

先輩と話すこと、だったので嘘ではないと判断してくれたようだが危ない危ない。


「何で疑うんですか......」


「いやだって、私なんかと話さなくても祐也君には勘解由小路さんを始めとする

 仲良しの人がいっぱい居るじゃん? キミがこの学校に来たときは私くらいしか

 頼れる人が居なかったのに、成長しちゃって」


先輩は不満そうに言う。確かにあの頃、俺が頼れるのは先輩か小戸森くらいの

ものだった。


「不貞腐れないで下さいよ。今でも先輩のことは俺、滅茶苦茶頼りにしてるんですから」


俺の言ったことは事実だ。確かに俺は始めに比べて幻中が心を開いてくれたり、調月と

結構仲良くなったり、雪加が転校してきたりして、頼れる人は増えたが、それでもやはり

あの部活は先輩が居なくては成り立たないと思う。


「まあ、あんまり頼りにされても困っちゃうんだけどね。私、もうすぐ卒業するし」


「あ、そうか......三年生ですもんね。もう受験勉強してるんですか?」


「うん。出来るだけ、あの部活には居てあげたいと思って部活動には参加してるけど

 裏では滅茶苦茶、勉強してるんだよ? 今年のクリスマスも楽しめるかどうか」


やれやれ、と言った風な様子で先輩言う。やはり、先輩の魅力は死ぬほどお人好しで

皆のことを我がことのように大切にするところだ。しかし、他の部活で三年生が卒業

していくなか、先輩が前科部の活動に毎回来ているのにはそんな理由があったのか。


「なら先輩、今まであの部活のために尽くしてきてくれたんだし受験期くらいは

 自分を大切にしてください。俺達も先輩から自立しないといけないですから」


「で、でも、それは......」


「別に卒業したら良い、って話じゃないんです。週に4回程度ある部活動のうち

 3回は勉強のために休んだり、気になるときは来てみたり、そんな感じで

 部活の皆のことも考えながら、勉強のことを考えて欲しいんです。きっと

 他の奴らもそう言うと思いますよ」


苦い顔をする先輩に俺はそう付け加える。すると、先輩は苦笑した。


「あ、あはは、そう言われたら敵わないなあ。そっか、皆も私が居なくても

 大丈夫になってきてるもんね」


「いや、別に先輩が必要ないって訳じゃ......」


俺が慌てて訂正しようとすると先輩は『分かってる。分かってる』と言い


「それじゃあ、明日皆に説明して勉強の方を少し頑張ってみようかな」


と、人の良さが窺える無邪気な笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ