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前科部!  作者: 蛇猫
進み始める日々と不安
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二回目の自然観察

お く れ た


「よし、全員揃ったな! ......何か、多くないか?」


『第二回、自然観察部秋の郊外学習』のために集まった自然観察部の部員たちを

見渡して宗里先生は戸惑うようにそう言った。


「俺が来てから三人も増えましたからね」


「部員を増やして部活を活気付かせる祐也偉い」


「......俺は無理矢理入部させられただけだけどな」


「まあまあ、井上君。そう言わないで楽しもうじゃないか」


幻中に先輩、めぐめぐ、雪加、井上、有馬、そして俺。確かに最初の頃と

比べるとかなりの人数になっている。


「それじゃあそろそろ、出発しようか」


白嶺先輩がそう言った時だった。突然、何者かが俺の視界を横切り幻中の方へ

飛んでいったのは。俺は驚きながら視線をその者に向ける。


「おはよっ! 玲奈ちゃん!」


すると、其処には満足そうに幻中の胸に顔を(うず)める蜂須賀梓の姿が有った。

自然観察部の部員でもなければ、岬川高校の生徒でもない彼女が何故此処に

居るのだろうか。


「・・・あの、何故此処に?」


幻中は困惑したように蜂須賀に聞く。彼女も俺と同じことを疑問に思っていたらしい。

ということは、この場所に蜂須賀を呼んだのは幻中ではないのか。


「言っとくが、俺はこんなの呼んでないぞ」


幻中が此方に視線を飛ばしてきたので俺はかぶりを振った。貴方の仕業ですか、と

聞かれた気がしたのだ。いや、実際にそう聞いていたのだろう。その証拠に彼女は

俺の言葉に頷いた。『・・・そうですか』と応える彼女の声が脳内で再生される。


「人をこんなの扱いしないで!?」


そして、俺の言葉に蜂須賀は毒蛇に罵倒された時の俺のような反応を示した。


「アズを此処に呼んだのは私」


「唐突な自白止めろ。この人、うちの部員じゃないのに何で呼んだんだよ。

 てか、お前らは一体何処で知り合ったんだ」


疑問は尽きない。


「アズとリアルで知り合ったのはつい最近。この前まではSNSで絡む仲だったんだけど

 察しの良い私は祐也の教えてくれた『蜂須賀梓』の情報を元にアズと『蜂須賀梓』が

 同一人物であることを突き止めた」


コイツやってんな。


「最初はビックリしたよ。突然、青ノさんが『アズの実名、蜂須賀梓でオケ?』

 とかいうDMを送ってくるんだもん。あ、青ノさんっていうのは雪加さんの

 SNS上での愛称ね」


「ええ.......」


いや、これが能天気な蜂須賀だったから『ビックリ』で済んだのだろうが一般人であれば

ネット上の顔も知らない人間に突然、実名を特定されるなんて軽くトラウマものだ。


「後、アズを自然観察に呼んだ理由はただ単に面白そうだったから。アズも玲奈と

 会いたがってたし。丁度、良いと思って」


「あ、はは......先生、どうします?」」


動揺し過ぎて白嶺先輩の『あはは』に変な区切りが入ってしまっている。


「面白そうだからオケ」


雪加の行動理由と同じじゃねえか。


「さっすが、少年と玲奈ちゃんの担任! 話が分かってますね!」


「だろお!? お前こそ私が顧問をしている部の活動に参加するなんて

 中々、分かっているじゃないか。えーと、名前は......」


「蜂須賀梓ですっ! 宗里先生、今日は宜しくお願いします! あ、後、其処にいる

 部長さんとジト目さん、毒蛇さんにチャラ男君と地味すぎて逆に目立っているキミも

 以後、お見知り置きやがれ下さい! 気軽にアズって呼んでね!」


「......おお、おおお、おおおおおおおお! 素晴らしい自己紹介をありがとう蜂須賀!

 お前からは私と同じ臭いがする! よし蜂須賀、お前に自然観察部名誉部員の称号を

 授与しようじゃないか!」


どうやら、宗里先生と蜂須賀は相性が良かったらしく意気投合している。

そして一方、有馬と井上は......


「僕ってそんなにチャラく見える?」


「有馬君は金髪だからね。確かに見た目はチャラ男だね」


「地味すぎて逆に目立ってる奴って、俺のことかよ。ふざけんな」


「憂、元気出して」


なんかしょげていた。可愛そうに。


「んぐっ!?」


俺が有馬達を哀れんでいると、突然調月が俺の胸ぐらをを掴んできた。


「蜂須賀さんに『毒蛇』という渾名を教えたのはお前かしら?」


「いや、ちょ! 調月さん……!?」


「答えなさい。彼女と私は初対面よ。私の性格も知らない彼女が顔を見ただけで

 毒蛇、なんて渾名を思い付く筈がないでしょう」


調月は苛立った様子で俺に顔を近付ける。


「こうやって近くで見ると、調月って結構可愛いな」


「話を逸らすな」


「あ、バレた?」


「残念ながら私にはお前のお粗末な芝居に付き合う余裕はないの。早く答えなさい」


調月は俺の胸ぐらを掴んでいない方の手で俺の胸を叩く。


「ひゃんっ!」


「気持ち悪い声を出すな。早く答えなさい」


「......紫髪で猫背で毒舌な俺が『毒蛇』と呼んでいる生徒が自分の

 部活には居ると彼女に言いました」


俺は正直に自白する。


「そう......」


調月の胸ぐらを掴む力が強くなる。


「痛い痛い痛い! そもそもお前、俺に毒蛇呼ばわりされても嫌がって

 なかっただろ! 何で怒ってんだよ!」


「お前に言われる分にはあまり苛つかないけれど、彼女に言われると少し

 苛ついたからよ。謝りなさい」


「俺が悪かった! ごめん! いや、ごめんなさいいいいい! てか、何時もの

 貴方呼びは何処に行ったんだよ!」


調月ってこんなに力、強かったのか。


「お前にはお前で十分よ」


酷い。


「雹霞」


すると、悶える俺の声に気付いた雪加が此方に来てくれた。調月に俺の胸を

つねるのを止めるように言ってくれるのだろうか。


「何?」


「私も一緒にやる」


そう言うと雪加は突然俺の顔に手を伸ばし、頬を引っ張ってきた。


「ひゃえよおおおおお! へか、にゃんれほまれみょしゃんかしてるんらよ!

 (止めろおおおおおお! てか、何でお前も参加してるんだよ!)」


「なんか、祐也に意地悪したい気分だった」


コイツ......。


「少年、モテモテだね~」


「こうぇのほろが!?」


「これの何処が!? って、言ってる」


雪加、通訳はしなくていいから手を離せ。


「・・・あの」


「ん? どったの玲奈ちゃん」


「今日は、宜しくお願いします」


「おうよ! 宜しく頼むぜ、相棒!」


そんなこんなで前科部二度目の自然観察が始まった。


「……不幸だ」


雪加に『ごめん』と謝られ、頭を撫でられながら俺はそう言った。それにしても

何ヵ月も前に小戸森が企画書として提出したこの公園での自然観察、やっと

出来るのか。


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