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前科部!  作者: 蛇猫
歪み始める日々と狂気
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溶接

帰宅した私は特にしなければいけないこともないので、SNSで時間を潰していた。

しかし、昨日のことが頭から離れてくれない。妙にイライラする。


「あああああああああああっ! 人が病んでる時にクソリプ送ってくんじゃねえよっ!

 こんのクソガキィッ! 潰す潰す潰す潰す潰す!......おっと、いけない。温和で

 優しい蜂須賀さんとしたことがつい、汚い言葉を使ってしまった」


私は溜め息を吐く。精神が参ってるときにSNSなんてやるもんじゃないな。心が荒む。

そう思い、私はクソリパーを通報しブロックすると黙ってスマホをスリープにした。


「......少年に電話しよ」


私はスリープにしたばかりのスマホの電源ボタンを押し、ロックを解除すると

彼に電話を掛けてみた。


『もしもし』


「あ、少年?」


『ご用件を』


「えっとね~暇だから電話掛けてみた。私、プライベートで付き合いのある

 友達は少年くらいしか居ないんだよね。話し相手になってよ」


『さようなら』


スマホの向こうからそんな声が聞こえると、通話が切れてしまった。


「......マジでしばいたろかなアイツ」


全く、悪い人じゃないのは分かるんだけどなあ。玲奈ちゃんのことも

私のことも、きちんと考えてくれていたみたいだし。


「梓、ご飯出来たわよ」


私がそんなことを考えていると、自室の扉の向こうからそんな声がした。

勝手に開けないのは思春期の娘を気遣ってのことだろう。流石、私のママ。


「早くない? まだ6時だよ?」


「パパが何時もより早くお腹空かせて帰ってきたのよ」


「理解。今、行く」


私が部屋を出て、リビングでご飯を食べ始めると突然母からこんなことを聞かれた。


「梓、最近元気ないわね。大丈夫?」


あれ、元気っ娘の皮を被ってた筈なんだけどな。バレちゃったか。


「俺も冬花と同じことを疑問に思ってた。まさか中学生のときみたいに高校で

 虐められてるんじゃないだろうな。梓のことを虐める奴は俺が徹底的に潰して

 やるからちゃんと言えよ」


そして、父もそんなことを言ってきた。つーか、私のパパ過激だな。


「や、虐められてる訳じゃないんだけど......」


別に隠す必要もないので私は両親に玲奈ちゃんとの関係で悩んでいることを伝えた。


「成る程......難しいわね」


「ああ、冬花の可愛さを証明するのと同じくらい難しいな」


「娘が真剣に悩みを打ち明けたと言うのに、貴方って人は......殺すわよ?」


ええ.......。


「残念。俺は冬花に殺されるなら本望だ。」


キモいなこの親父。


「イチャついてないで、ちゃんと私の相談に乗ってよ!」


「と言っても、幻中さんは貴方に関する過去がトラウマになっているのでしょう?

 下手に貴方が幻中さんに近付いたら、彼女はまた辛い思いをするかもしれない。

 そんな状態で梓に出来るのは、幻中さんが過去を乗り越えられたときにどんな

 言葉で仲直りをするのかを考えることくらいじゃない?」


「......確かにそうかも」


昨日、玲奈ちゃんは私と少年の話を陰で聞いていた。彼女はあの話を聞いて何を

思ったのだろう。そして、突然走り出した彼女を追いかけていった少年はあの後

どうなったのだろうか。疑問は尽きないが、ママの言う通り確かに下手に私が

接触したら玲奈ちゃんを傷付けてしまうことになってしまうかもしれない。


「......なんか、親として良い話をしようと思ったんだけど思い浮かばんかったわ。

 まあ、頑張れ」


「いや、適当だなオイ! しばいてやろうか」


「やだこの暴力娘。お父さん怖いわあ」


「シンップル気持ち悪いよ?」


「辛辣っ!?」



それから、かなりの日数が経った。少年は玲奈ちゃんにきちんと私の電話番号を

伝えてくれただろうか。それとも、玲奈ちゃんがまだ私の存在を拒絶していて

教えることが出来ていないだろうか。どちらにせよ、彼女からの電話は一本もない。

私は溜め息を吐くと、SNSを始めた。我ながら見事なSNS廃人だ。


「『はあ......なんか、色々疲れた』、と」


私がそんなことを呟くと直ぐにリプが来た。


『どしたん』


最近、よく絡んでくれるフォロワーの『青ノ胡蝶』さんである。


『いや、リアルの友達関係で色々悩んでまして......や、青ノさんには

 関係のないことなんですが(-_-)』


『ほええ。アズに悩みなんてあったんだ。意外。←失礼』


アズとは私のアカウント名だ。


『ヒデエwww』


『まあ、アレだ。意外に相手もアズと同じことで悩んでるかもしれないから

 ジャブで間合いを測りつつ、コンタクトを取ることをオススメする。いや

 既に実践済みだったら悪いけど……w あ、私で良ければ何時でも相談に

 乗るから、何かあったらDMに来て』


何この人、良い人かよ。


『あ、ありがとうございます。やってみます!』


ふむ。ジャブで間合いを測りつつコンタクトを取る、か。結構難しいこと

言うなあの人。


「おい少年、玲奈ちゃんの電話番号を教えやがれっ! 教えなかったら

 少年の家の住所を特定して、ネット上にバラ撒いてやる!」


悩んだ末に私が取った行動は上里祐也を脅すことだった。


『はあああああああああああああああっ!? 突然、電話を掛けてきたから何事かと

 思って出てみれば開口一番に言うことがそれですか! それ犯罪だかんな!?』


「良いから。電話番号くれ。しばくぞコラ」


『んなもん、渡せる訳ねえだろ。切るぞコラ』


「わーたーせ! はい、わーたーせ!」


『そもそも何に使う気なんですか? 幻中は貴方の電話番号を知りながら貴方に

 電話を掛けていないんですよ? 彼女が決心するまで待ってあげたらどうですか?』


少年は最もなことを言う。しかし、飽き性な私はただ電話を待っているだけの

生活に飽きてしまったのだ。


「大丈夫、ジャブだから」


「ジャブ?」


「うん。えっとね?......」



翌日、私はスマホとにらめっこをしていた。頼むから、電話をしてきてくれ。

そう祈っていると、突然私のスマホが着メロを鳴らした。


「来た......! もしもし私蜂須賀! 今、アムステルダムにいるの!」


......嬉しすぎてテンションが何時も以上にバグった。


『・・・幻中です』


電話越しに聞いた玲奈ちゃんの声は中学生の頃とは少し変わっていたが、確実に

彼女のものだった。この声を聞きたかったのだ。嬉しい筈なのに涙が止まらない。


「......玲奈ちゃああああああああああああん! うええええええええええん!

 寂しかったよおおおおお!」


私は彼女に引かれることも省みず、子供のように泣きじゃくった。


「・・・すみません。私......」


「何も謝らないで。玲奈ちゃんが私のことで自分を追い詰めていたことはこの前

 少年に電話で聞いた。でも私、玲奈ちゃんには何の責任も無いと思う。だって

 全部悪いのは中学生の頃、玲奈ちゃんと私を虐めていたいじめっ子達だもん」


「・・・ですが」


「私は何の責任もない玲奈ちゃんを謝らせるようなことはしたくない。それより

 私は玲奈ちゃんと仲直りしたいな。中学生の時みたいな関係に戻りたい」


私の言葉に玲奈ちゃんは少し黙った。


「・・・私も、同じことを考えていました」


「じゃあ、仲直り成立で良い?」


私は涙を流したまま彼女に問う。


「・・・折角、貴方が電話番号を渡して下さったのに私は電話をしませんでした。

 そんな私でも良いのですか?」


「勿論。それに玲奈ちゃん、現在進行形でその電話番号に掛けてくれてるじゃん」


「・・・貴方が昨日、留守電を私の電話に残して下さってやっとですけどね。

 私の電話番号はどうやって手にいれたのですか?」


「勢いで少年を言いくるめて、無理やり教えさせた」


『あくまでもジャブなので、直接電話を掛けるのではなく留守電を残すつもりだ。

私の声を聞いたら、電話を掛ける気になってくれるかもしれない』と少年に話し

頼み込んだところ特例で教えて貰ったのだ。


「・・・あの人ですか」


「あ、少年の名誉のために言っとくけど彼は個人情報を教えるなんて自分には

 出来ないって最後まで言ってたからね? 失望しないであげて」


「・・・私が彼を失望することはあり得ませんので大丈夫です」


あの玲奈ちゃんにこうまで言わせるとは、少年やりおるな。


「玲奈ちゃんは少年のことが好きなの? あ、因みに私は玲奈ちゃんを愛してる」


「・・・好意は持っていますが......好きとまでは」


あちゃあ。少年、振られちゃったよ。ついでに私の愛の告白も無視された。


「そっか。じゃあ玲奈ちゃん、そろそろ切るね。今度は一緒にどっか行こ」


「・・・はい。さようなら」


今日の蜂須賀さんは、とても気分が良い。

何かさ~、蜂須賀さん視点にすると滅茶苦茶テンポが良くなる気がするんだよね。


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