表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前科部!  作者: 蛇猫
夏の始まり
72/108

脱げ脱げコール


気温は30℃を越え、太陽の光が眩しい真夏日。俺は待ち合わせ場所である駅の前で

スマホを開いた。どうやら予定の時間より30分も早くに来てしまったらしい。まあ

相手を待たせるよりはマシだろう。俺はそう思い、飲み物でも買って暇を潰そうと

コンビニに向かうと、突然コンビニの自動ドアが開いた。俺が開けたのではなく店の

中の客が開けたのだ。


「・・・あ」


「あ」


そして、コンビニの中から出てきた客は信じられないことに見覚えのある銀髪の

少女だった。彼女の右手にはペットボトルの緑茶が握り締められている。


「・・・おはようございます」


「おはよう」


「・・・まだ集合時間の30分前なのですが」


「ごめん。楽しみ過ぎて早く来ちゃった。てへぺろ」


「・・・水族館がですか?」


「幻中と一緒に水族館に行くのが」


実際に今も楽しみでワクワクしている。


「・・・そう......ですか」


幻中は静かに目を逸らす。


「じゃあ、逆に幻中は何でこんな早くに来たんだ?」


「・・・貴方と同じです」


「俺と同じ……」


何故だろう。嬉しいのだが、とてもむず痒い。幻中と一緒に居ると何時もこうだ。

心が不安定になる。それが楽しくもあるのだが。


「・・・それでは予定よりも早くなってしまいましたが、行きましょうか」


「おう」



電車は運良く、快速の二人席に乗ることが出来たのだが此処で問題が発生した。

幻中と二人席、それだけでもかなり恥ずかしいというのに……。


「・・・先程から窓ばかり見ていますが、貴方は景色を見るのが好きなんですか?」


幻中の言葉通り、俺は訳有って窓に張り付いていた。


「いや、えと、うん。ケシキダイスキ」


「・・・本当ですか?」


「ハイ」


「・・・本当は私の方を向きたくないのでは?」


幻中は頭が良いので困る。


「.....そうだよ」


俺は体を小刻みに震わしながら答えた。


「・・・理由を教えて頂けませんか? 改善出来ることなら改善したいので」


「じゃあ、脱げ」


「・・・え?」


「その思春期で非リアの俺には刺激があまりに強すぎる露出度の高い服を今すぐ脱げ。

 ほら、脱げ脱げ脱げ! 脱いで普通のTシャツとかに着替えろおおおっ!」


俺は突然、半狂乱でそう叫んだ。勿論、電車の中なので多少は声のボリュームを

下げたが天下のJ○様の車内で『脱げ脱げ脱げ!』は流石に失言だった。


「・・・すみません。上里君とのお出掛けなので少し高価な夏服を買ったのですが。

 やはり私には不相応でしたね」


「いや、似合ってるとか似合ってないの話じゃないんだよ。似合い過ぎてて死にそう

 なんだよ。なんだよ可愛いかよ。でも、駄目なんだ幻中。さっきも言った通りその

 服は刺激が強すぎる......」


というのも今日、幻中が着ている服は真っ白の肩だし半袖カットソーなのだ。肩だし

というだけで俺には刺激が強すぎるのに更にヤバいのはその露出部分の多さ。乳房より

上は全て露出していると言えばその凄さが分かるだろうか。正直に言うと死ぬほど

似合っていて滅茶苦茶可愛いのだがとても目のやり場に困る。


「・・・その、一応断っておきますが露出が多いのは店の方に似合うから、と半ば

 無理やり買わされたからであって、決して私がそういったファッションが好きな訳

 ではないですから」


店の方グッジョブ。


「まあ、何とか耐えて見せるよ。途中で死ぬかもだけど」


「・・・褒めてくれているのですか?」


「うん。めっちゃ褒めてる。悪いのは俺の精神力」


「・・・なら、良かったです。買った甲斐が有りました」


幻中は何処と無く弾んだ声で言う。その様子を見ていると何とも形容のし難い

苛立ちにも焦りにも似た感情がちらつく。


「わざわざ俺と出掛けるために買ってくれたんだろ? 別に其処までしなくても

 良かったのに」


「・・・私の自己満足なのでお気になさらないで下さい。それに......貴方に褒めて

 貰えたので無駄にはなりませんでしたし」


「幻中がお洒落とかするのって意外だな。服はコスパ重視なのかと思ってた」


この前、夕食を彼女にご馳走になったときに聞いたが幻中の食費は月に2万円らしい。

ということは恐らく、月の衣料代も多くはない筈だ。それでお洒落を楽しむのは

難しいだろう。


「・・・今回は特別です」


「え?」


「・・・その、初めての貴方と二人きりでのお出掛けなので見栄を張りたくて

 奮発してしまいました」


「いやなんか、ごめん。俺、ただのTシャツで」


「・・・いえ、自然体で居てくれるのも嬉しいですよ」


幻中は優しい声で囁くように言った。


「なんか俺めっちゃ幻中に甘やかされてない?」


「・・・はい、甘やかしています」


「まもにゃかお腹空いた」


「・・・お弁当作ってきましたが、食べますか?」


ヤバい。ハマりそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ