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前科部!  作者: 蛇猫
仮面と古傷
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61/108

紫と蛇の嘘

ピンポンパンポーン。後書き絶対に読んで下さい。


「ひょ、う、か~!」


「気持ち悪い。潰れて。消えて。お願いだから失せて」


「ひでえなオイ!?」


俺は朝一番に最愛の嫁からあんまりだという程に拒絶されしょんぼりとした。


「私は今から仕事なの。ずっと、家に引きこもってばかりの貴方には

 分からないでしょうけど、仕事というのは本当にストレスが溜まるのよ。

 其処に貴方が追い討ちを掛けているのだから当たり前でしょう?」


「引きこもりじゃねえっ! 大体、雹霞お前、家に帰ってきて暖かい

 飯が用意されているのは誰のお蔭だと思ってるんだよ」


「それも、洗濯物をしてくれているのも、家計の管理をしているのも私のスーツに

 毎日アイロンが掛かっているのも全て座敷わらしのせいじゃないかしら?」


座敷わらし有能過ぎる。


「分かった。じゃあ、座敷わらしが全部やってくれると言うのなら俺は今日

 1日ダラダラしておくからそのつもりでな」


「良いわよ。パチスロ代二万円と外食代一万円をくれるなら」


清々しい程のクズッぷりだ。


「今月の小遣いはもうやった。パチスロ代ならそっから出せ。後、外食に一万って

 お前は何を食ってくるつもりだ。お前の職場、飲み会とか無いだろ」


「あら、私は毎日のように職場の上司に食事に誘われているのよ? 私が既婚者って

 ことを知らないみたいだから、もしかしたら色々と有るかも知れないわね。この際

 貴方を捨てて別の男に乗り換えを......嘘よ。鬼よりも怖い顔で殺意を剥き出しに

 しないで」


おっとそんな表情になっていたか。ただ、その上司とやらを社会的に抹殺する方法を

考えていただけなのだが。


「......雹霞。何時も、ありがとな」


「しんみりとしたムードに移行させたかったのだろうけれど私はそんな簡単に

 ペースを乱されないわよ。浅はかな自分の脳を恨みなさい。此方こそ何時も

 家を支えてくれてありがとう」


「......好き」


「知ってる。じゃあ、そろそろ行ってくるわね。精々、家事に励みなさい。

 帰ってきたらまた構ってあげるから」


一体、どういう立場での発言なのかは分からないが雹霞に構って貰えるのは

単純に嬉しいので素直に受け取っておくことにした。


「ああ、いってらっしゃい」


俺がそう言って見送ると雹霞は静かに手のひらを此方に向けると扉を開けて

仕事へと出ていった。ガチャンッ、と自棄に重たい扉の閉まる音がする。


「さあて、雹霞のいない間、何するかな」


洗濯物の取り入れはつい先程終わったし、洗濯物カゴにはそれほど洗濯物は

たまっていない。まあ、たまには気合い入れて大掃除でもしてみるか。

そう思ったとき、俺のスマホが着メロを流し始めた。


「はい、上里ですが?」


『お、祐也か! 久し振りだな!』


「失礼ですが、どちら様でしょうか?」


『俺だよ、オレオレ!』


「オレオレ詐欺はご遠慮下さい。では」


『待て! 切るなよ!?』


懐かしい声にクスっと笑いながら俺は返事をする。


「親父。何の用だ?」


『いや、調月さんとは上手くやってんのかなあと思って。

 近況報告でも聞かしてくれよ』


急に電話をしてきたので何か用事があったのかと思ったが

これと言った用事は無かったようだ。


「アイツ、今は上里雹霞だけどな。別にいつも通りだ。そっちこそ

 母さんとはどうなんだ?」


『ああ。こっちも何時も通りイチャイチャ状態だ。相変わらず紡は

 俺のこと『先輩』って呼んでるし』


あの人......まだ、そんなことやってたのか。


「いい加減、徹也って呼ばしたらどうなんだ?」


『......まあ、紡の呼びたいように呼ばせるってことで良いだろ』


「成る程。案外、先輩呼びが気に入ってるんだな。流石、俺の父親だ」


そういえば、俺の入学した大学に雹霞は一年遅れで入学したため大学の間は

一時的に雹霞の先輩になったこともあったか。先輩呼びと敬語を義務付けたら

毒のレベルが桁違いの小戸森みたいになってたけど。まあ、それも可愛かったんだが。


『否定はしない』


「知ってた」


『だろうな』


こんな息のあった親父との会話も懐かしい。最近は色々忙しくて

皆とは中々、会えてなかったからな。


『それにしても、お前が調月さんと結婚するとはな。俺はてっきり

 勘解由小路さんと結婚するか、独身貴族を貫くものだとばかり思ってた。

 勘解由小路さんとは今でも付き合い有るのか?』


「......まあ、ぼちぼち。アイツはアイツで大学教授になったから

 忙しいみたいだし、そんな頻繁には会ってない」


『そうか。でも、彼女とは今でも盟友なんだろ? 大切にしろよ』


「言われなくても分かってる」


雪加が言っていた通り、本当に盟友の契約に期限は無かったらしく彼女とは

半年に一度ほどは二人で会っている。勿論、盟友としてだが。


『そか。じゃあ、またな。今度は紡も一緒に行かせて貰うから』


「了解」


俺が短く返事をすると、親父はそのまま通話を切った。なんだか、懐かしい気持ちに

なる。寂しいような、心細いような。いや、俺には雹霞がついているのだ。孤独感を

感じる必要はない。それに、俺は今までずっとボッチを貫いてきたじゃないか。


「アイツら、元気してるかな」


雪加とは今でも関係が有るとは言ったが、他の奴らとは全然会っていない。

最後に皆と会ったのは先輩の結婚式だったか。小戸森は天ぷら屋に勤めていて

笑ったっけ。幻中は弁護士、イメージ通りだ。そんな風に思い出を懐かしんでいると

家のインターフォンが鳴った。


「こんな時間に誰だ? ......はい」


俺が疑問を浮かべながらも、扉を開けると其処には一人の女性がいた。


「......あ」


女性は俺の顔を見ると、怯えたような目付きで後退りした。


「何でしょうか?」


「その......雹霞は元気?」


「元気です。でも、貴方の姿を見たらそうでは無くなるでしょうね。

 お引き取り下さい。此処に『調月雹霞』は居ません」


俺は女性を睨み付けながら、彼女にそう告げると一方的に扉を

閉めようとした。


「ま、待って! これ......雹霞が好きなお茶」


女性は閉まりかけている扉の僅かな隙間に手を突っ込んで

小洒落た袋を押し付けてきた。


「......何のつもりですか?」


「いや、その......雹霞が喜ぶと思って」


俺はその箱をジッと眺めて受け取った。


「貴方の名前は出しません。良いですか?」


「ええ。勿論」


「分かりました。では、確かに。間違っても此処で雹霞を

 待ち伏せしたりしないでくださいね」


俺はそう言うと直ぐに扉を閉めて、箱を雹霞の部屋の机の上に置いた。

哀れだとは思うが、同情はしない。全てはあの女性の自業自得だ。

俺はそう思うことにして、家の掃除を開始した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ただいま。ケーキを頂いたから紅茶を入れなさい」


ガチャンッと扉の開く大きな音と共に雹霞が帰ってきた。

時刻はすでに9時を回っている。


「お帰り。ダージリンで良いな?」


「ええ、お願い」


俺は雹霞の部屋に入り、朝貰った箱から茶葉を取り出して手早く

紅茶を淹れた。雹霞が帰ってきてからのティータイムは至福の時間だ。

雹霞は機嫌良く、熱い紅茶に口を付けると少しばかり顔をしかめた。


「......不味かったか?」


「いえ、とても美味しいわ。何処の紅茶かしら」


「貰った。知り合いに」


「......そう、知り合いにね。貴方に知り合いなんてものが居たのは

 驚きだわ。マリモは茶葉なんてくれないはずだし、一体誰からかしら」


雹霞は無理に笑顔を作りながら、紅茶をゴクゴクと飲んでいった。

優雅に紅茶を啜る、何時もの雹霞にはあり得ない飲み方だ。


「てか、熱々の紅茶をそんな一気飲みしたら......」


「んっ!? あつっ! あ、あ、あ、あ、あああああ!」


雹霞は辺りをもがき苦しみながらのたうちまわった。


「まあ、そりゃそうなるよな。ほら、落ち着け」


「......舌に火傷した。どうにかしなさい」


「へいへい。ほら、水だ。ゆっくり飲んで舌を冷やせ」


「ん......」


雹霞がしおらしくなりながら、ゴクゴクと水を飲んでいる間に俺は

ぬるま湯に塩を溶かして、簡単な食塩水を作った。


「冷やし終わったら、これも飲め。塩が炎症した部分を殺菌してくれる」


「......不味いわ。よくもこんなものを私に飲ませようと思ったわね」


雹霞の怨めしそうなこの視線にも慣れたものだ。何ならこの視線は

自分の身を予想以上に気遣ってくれた俺への照れ隠しだということまで分かる。


「そりゃ、薬みたいな物だからな。」


「私は薬が苦手なの」


「そうか? 俺は好きだけどな。錠剤とかみたらテンション上がる」


「気持ち悪」


「ストレートに言うの止めなさい」


俺は雹霞にデコピンを喰らわせた。


「わ、私の肌に触ったわね!? 変態! セクハラ! クズ!

 社会不適合者!」


「社会不適合者と結婚してしまったのはお前の業だから前世の自分を恨め。

 ということで、俺は雹霞成分を吸収する」


「抱きつかないで。本当に気持ち悪......ちょっと待って。何故

 離れようとしているの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


幾らか昔より丸くなった物のやはり、まだまだ毒舌な雹霞の目を見て


「雹霞可愛い」


俺は再度雹霞を抱き締めたのだった。


April Fools' Day

はい、お気づきの方が殆どでしょうがエイプリルなフールの企画やってみました。

尚、今回の内容につきましては完全にただの作者のおふざけです。内容は雹霞と祐也が

結婚したというものでしたが、ヒロインは完全ランダムで選びましたので深い意味も有りません。

また、雹霞と祐也が仮に結婚してもこうなるかは不明です。 あくまで作者の嘘企画ですから。


ブクマ、評価、感想、レビュー宜しくお願いします!

くれぐれもコロナに気を付けて。不要不急の外出は控えて下さいね。

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