生徒会長と部長と
「え、今なんて......」
芦原白嶺と名乗る少女の言葉はにわかに信じがたいものだった。生徒会長と部長二つを兼任しているのは確かに珍しいだろう。だが、所詮『珍しい』止まりだ。生徒会長をする程の意欲があれば少々、厳しいかもしれないが、部長になる者が居てもおかしくない。
それが今、俺の中で問題になっている自然観察部の部長で無ければだが。とんでもない偶然に俺は呆然とした。
「あはは、そりゃ生徒会長が部長だったら驚くよね。しかもあの前科部の......それが普通の反応だと思うよ」
芦原白嶺は落ち込んだ風にそう言った。
「え? ぜ、ぜんかぶ? 自然観察部じゃなくて?」
俺は首を傾げながら聞く。宗里先生に貰った部活一覧にもそんな部活は載っていなかった筈だが。
「ふぇ?」
すると、芦原白嶺は間抜けな声を出し、目を丸くした。
「いや、さっきは自然観察部の部長って言ってたのに急に『ぜんかぶ』とか言い出すから気になって......。そんな部活なかったと思いますし」
「え、あ、あっ、ああ、成る程。そう言う事ね」
勝手に納得しないで欲しい。
「そういうこと、というと?」
「君、まだ前科部って名前聞いたことない?」
「無いですね。だから、こうやって聞いてるんですし」
「うーん。前科部って普通、転校生でも初日で知る事が殆どなんだけどなぁ......」
ますます、『ぜんかぶ』とかいう部活が気になってきた。転校初日で知るとかどれだけだよ。
「随分と凄い知名度ですね」
「あはは。まあ......知名度はね。というか君、本当にクラスの人とかから聞いてないの?」
「ええ。生憎、言葉を交わしたクラスの奴は幻中って言う、クールな女子だけなんで」
「も、もしかして、そ、そのクールな女子の幻中さんって。まさか、幻中玲奈さんだったりする!?」
彼女は目を見開き、驚いた様子でそう聞いてきた。
「幻中玲奈さんだったりしますね。というか、幻中なんていう珍しい名字の学生、同学年に二人も居たらヤバいでしょ。双子ならまだしも」
少し俺は苦笑して言葉を続けた。
「んで? 幻中がどうしたんですか?」
「い、いや君と幻中さんが顔見知りだったのに驚いたんだよ。何しろ、彼女はうちの部員だしね」
誇らしげに胸を張る芦原白嶺に俺は
「その部員に俺、『自分には関わるな』って言われましたけどね」
俺は少し、皮肉っぽくそう言った。
「あはは、ごめんね。彼女、悪い子じゃないんだよ?」
「みたいですね。幻中がああ言った理由はさっき分かった気がしますし」
「ふうん? どんな理......由?」
芦原白嶺が言葉を途中で止めたのは後5分で授業が始まる事を
知らせるチャイムが鳴ったからだ。
「あはは、ごめんね。まさか生徒会長が授業に遅れる訳にもいかないからさ。また、帰りに君のクラスに寄るよ。話の続きはその時って事で」
そう言い残すと芦原白嶺は『じゃあね!』と言い残し去って行ってしまった。そして、その後ろ姿を見送りながら、俺はあることに気付いた。
「入部届け出すの、忘れた......」
⭐︎
俺は授業中も芦原白嶺の言っていた『ぜんかぶ』のことで頭がいっぱいだった。ぜんかぶ、前科部だろうか? 前科の部活......意味不明だ。
「・・・どうかしましたか?」
幻中に聞けば分かるかもしれないと思い、横の席に目を向けてみると彼女と目が合った。
「いや、何でも無い」
「・・・そうですか」
いつものように俺と幻中の間に沈黙が続く。
「......か?」
幻中は小さな声で何かを言ってきた。
「ん?」
「・・・その、他の生徒から私の話、聞きましたか?」
「生憎、こっちに来てからの知り合いはお前以外だと先生と生徒会長しか居ないからな」
知り合いが幻中除けば生徒会長と教師だけとか、ある意味凄い。
「全く、転校生なのにこの扱いはないだろ......」
生徒会長という言葉に少し表情を変えた幻中だったが直ぐにいつもの真面目な顔に表情を戻し
「・・・という事は私の話は聞いていないと?」
「悪い子じゃない、って生徒会長が言ってた」
「・・・何故生徒会長と知り合いに?」
「近藤とかいう不良に絡まれた時、助けてもらってそれで」
「・・・そうですか」
「それと俺、知ってると思うけど、自然観察部行くから」
ノートを取りながらの会話だったので彼女の表情を見る事は出来なかったが、恐らく歓迎するような表情はしていなかった筈だ。
「・・・貴方はあの部がどんな部か知っているのですか?」
「宗里先生にたっぷりと素晴らしい所を説明された」
予習なら完璧である。日本に誇る部活なんだろ?
「・・・恐らく貴方が想像している部活とは大きく違うかと。悪い事は言いませんから別の部活に......説明? いつですか?」
しまった。そういえば幻中には俺が自然観察部に行っても不自然じゃない様に宗里先生と一芝居うったんだった。
「いや、ほ、ほら、朝! 宗里先生に部活届けを出す時に聞いたんだよ」
「・・・私が自然観察部の部員だと知ったのは?」
「生徒会長が俺と幻中は一応知り合いだって言ったら、幻中も自然観察の部員だって教えてくれた」
よし! 違和感なく誤魔化せた! 上里さんの理論展開は一流だ。
「・・・そうですか」
その後は俺も幻中も一度も口を開くことなく淡々と授業を受け、そうこうしているうちに昼休みになった。
「学食、行くか......」
GWが終わり作者はリアルが忙しいのでGWの時の様なペースでは投稿出来ませんが
よほどの事がない限り失踪はしませんので続けて見て頂けると嬉しいです
また、コメントや評価を貰うと作者が泣く程喜ぶのでお願いしますw
ただ指摘や評価を超える暴言などのコメントはお控えください。
長文失礼致しました。




